第13話:フランソアの為に出来る事~デイズ視点~
その日の夜、フランソアが眠った事を確認した後、義両親と一緒に、お茶を頂く。
「それで義父上、陛下にはしっかり抗議をして下さったのですよね。今日も王太子殿下が我が家を訪ねてきましたよ」
「今日はデイズがいてくれたからよかったけれど、私とフランソアしかいないときに、殿下がいらしたらと考えると、私も不安で…それで陛下は、何とおっしゃっていたのですか?」
義母上も不安そうに訪ねている。
「陛下はかなり驚いていて、何度も謝られたよ。ただ、ずっと監視するのは難しいらしい。もし屋敷に来たら、追い返してもらって構わないと言っていた。本当に陛下は役に立たないな…さすがに私も腹が立ったので、今回の件は次回の貴族会議で報告するとは伝えた!次の貴族会議は来月だ。それにしても、王太子殿下自ら法を犯すだなんて…」
「どうしようもない殿下ですね。王妃殿下に甘やかされて育っただけの事はある。あのお方が次期国王になって、大丈夫なのでしょうか?」
「そうだな…とにかく、しばらくはフランソアは屋敷から出さない方がいい。デイズもしばらくは屋敷にいてやってくれるかい?それから今日、デイズが正式に我がシャレティヌ公爵家の養子になった事、さらにフランソアがお妃候補を辞退したことを発表した。フランソアの心が落ち着き次第、デイズとフランソアを婚約させようと思っている」
さすが義父上、仕事が早い。
「まあ、貴族界では、王族が一夫多妻制を採用した時点で、フランソアはお妃候補を辞退する事はある程度予想していた様だ。私が貴族会議の時、“フランソアは自分だけを愛してくれる人と添い遂げたいと言っている、お妃候補辞退も検討させてもらう”とはっきり言ったからね。このタイミングでデイズと我が家が養子縁組をしたことを発表したことで、いずれデイズとフランソアが結婚すると貴族界では認識されただろう」
「あなた、出来るだけ早くフランソアとデイズの婚約を進めましょう。とにかくこれ以上、王族に…王太子殿下に振り回されるのは御免よ!」
「そうだな」
「待って下さい、義父上、義母上、僕はフランソアの気持ちを大切にしたいのです。5年ものあいだ、虐げられてきたフランソアの心を落ち着かせることを最優先にしましょう。出来ればフランソアには、昔の様に行きたいところに行き、やりたい事をやらせてあげたい」
これ以上フランソアに窮屈な思いをして欲しくないのだ。
「デイズの気持ちもわかる。でも、こうも頻繁に王太子殿下が訪ねてくる様じゃあ、フランソアを自由にすることは出来ない。デイズだってそれくらいわかるだろう?」
「ええ…それで考えたのです。僕とフランソアは、しばらく領地に避難しようかと思っています。領地なら自然豊かですし、フランソアの祖父母もいる。王都から馬車で2日かかりますし。さすがに王太子殿下は来られないでしょう。僕は領地の現状を自らの目で見られるので、より勉強になるでしょうし」
このまま王都にいてはダメだ。とにかくフランソアを安心して休ませてあげられる場所に連れて行かないと。さすがの王太子も、人の領地まで押しかけてくることはしないはず。それに往復4日かかる事を考えると、まずそんな長い期間、外出許可が下りないだろう。
「領地か…確かにあそこなら、フランソアを自由にしてあげられる。それにデイズと一緒に行くのなら、2人の仲も深まるだろう。分かった、明日の朝一番で早馬を飛ばして、領地にいる使用人や父上、母上に連絡しよう。うちの両親も、デイズに会いたがっていたし、ちょうどいいだろう。こちら側も準備があるだろうから、明後日出発という事でいいだろうか?」
「ええ、もちろんです。とにかく皆でフランソアを守りましょう」
これでフランソアを安全な場所で、伸び伸びと過ごしてもらえる。領地には海もあるそうだし、フランソアも楽しく過ごせるだろう。また昔の様に弾けんばかりの笑顔を見せてくれる様になったら嬉しい。
もちろん、そうなる様に僕がしっかりフォローするつもりであるが…
「デイズ、それじゃあフランソアの件、よろしく頼んだよ。期間は3ヶ月程度でいいだろうか?デイズも王都で覚えてもらわないといけない仕事もあるし、3ヶ月半後にはデイズの誕生日もある。我が家の次期当主として、公爵家で大々的なパーティーを行いたいしね」
「その時に、フランソアとデイズの婚約発表も出来るといいわね。やる事が沢山出てきたわ。私もゆっくりはしていられないわね」
3ヶ月後か…
3ヶ月でフランソアの心は、落ち着くだろうか…
でも、それ以上長く領地にいる事は厳しそうだ。とにかくこの3ヶ月、フランソアに寄り添い少しでも元気を取り戻してもらえる様頑張らないと。
次回、フランソア視点です。
よろしくお願いします。