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第1話:今まで必死に耐えて来たのに…

今日も1人、中庭でお茶を飲みながら、ため息を付く。


私の名前は、フランソア・シャレティヌ。アオリス王国の公爵令嬢で、この国の王太子殿下でもある、ジェーン様のお妃候補の1人だ。私がジェーン様のお妃候補になったのは今から5年前、私が10歳の時。


元々何度かお会いしたことがあったジェーン様、優しくていつも私を気遣ってくれるジェーン様に急激に惹かれていき、自分で志願してお妃候補になった。


ただ、私のほかにお妃候補は5人もいる。最初はもっとたくさんいたのだが、厳しい王妃教育に耐えかねて、大勢の令嬢が候補を辞退していったのだ。


基本的にお妃候補になった者は、王宮で生活をする事になっている。ただ…皆ジェーン様のお妃になりたくて必死で、毎日火花を散らしている。中には嫌がらせをして来る令嬢もいた。


それでもジェーン様が私を支えてくれ、何とか今もお妃候補を続けられている。でも…


最近、無性に空しくなるのだ。


私の見つめる先には、楽しそうにお妃候補の1人、マリン様と話をしているジェーン様の姿が…マリン様は桃色の髪をしたとても可愛らしい女性。爵位も侯爵令嬢とあって、私と同じく、お妃有力候補の1人なのだ。


「本当にあの2人、楽しそうね…」


ついそんな事を呟いてしまう。すると


「お嬢様、こちらにいらしたのですね。また殿下を見つめられて…他の令嬢といる姿をご覧になるのも辛いだけでしょう。さあ、こちらへ」


公爵家から付いて来てくれているメイドのカルアが、私を自室へと連れて行く。


「お嬢様、顔色があまり良くありませんわ。最近また食が細くなられて…とにかく、あと半年の辛抱です。あと半年すれば、殿下の正式な婚約者が決まります」


「そうね…あと半年すれば、やっと婚約者が決まるのね…」


ジェーン様の17歳の誕生日には、正式にジェーン様の婚約者が発表されることになっている。今までは色々な令嬢と平等に接しなければいけなかったジェーン様も、やっと私だけを見てくれるわ…


そう、ジェーン様からは、婚約者は既に私に決めている!だからどうか、令嬢たちの争いに堪えてくれ!と、ずっと言われ続けてきたのだ。正直私は、誰かと争うのも、ジェーン様を他の令嬢たちと共有するのも、苦痛で仕方がなかった。


それでも、最終的にはジェーン様と結ばれることを信じて、今まで必死に耐えてきたのだ。あと少し…あと少しの辛抱よ。


そう自分に言い聞かす。ただ…日々のストレスからか、この5年で随分と痩せてしまった。



「さあ、お嬢様、少しお休みください」


「ありがとう、カルア」


少し休もうとした時だった。別の使用人がやって来たのだ。


「フランソア様、殿下がお呼びです」


「ジェーン様が?わかったわ、すぐに行くわ」


急いで身だしなみを整え、ジェーン様の元に急いだ。


でもそこにはジェーン様だけでなく、陛下と王妃様もいた。一体どういう事なのだろう。不信に思いながら、しばらく待っていると、他のお妃候補たちも続々とやって来た。そして全てのお妃候補が集まったところで、陛下が話し始めたのだ。


「皆の者、急に呼び出してすまない。先日の貴族会議で、重要な事が決まったため報告する。ジェーンの妻の件だが、色々と検討した結果、1人ではなく複数名娶る事に決まった。要は王位を継ぐ者に限り、一夫多妻制を採用するという事だ」


今なんて…


一夫多妻制?複数名娶る?

一体何を言っているの?そんな…


目の前が真っ暗になった。周りを見渡すと、皆既に知っている様で、嬉しそうに微笑んでいる。どうして?何が嬉しいの?この人たち…ジェーン様を他の令嬢と共有するという事なのよ…それなのに…


あまりのショックに、めまいがするのを必死に堪え、何とか平常心を保つ。


「君たちも急に一夫多妻制に決まった事で、混乱しているかもしれないが、これはジェーンの強い希望でもある。どうか受け入れてやって欲しい。もちろん、不服な者はお妃候補を辞退してもらって構わん」


「皆、僕はね、こうやって僕の為に一生懸命頑張ってくれている君たちを見ていたら、1人だけに決めるだなんて、申し訳なくなってしまったんだ。それに、王族の繁栄のためには、沢山子供がいた方が、僕はいいと思っている。もちろん、賛成してくれるよね」


1人に決める事ができない?

もちろん賛成してくれる?


この人は一体何を言っているの?いままで散々“愛しているのはフランソアだけだ。結婚したら全力で君だけを愛するから、どうか今は耐えて欲しい”と言っていたのに…


あれは全部嘘だったのね…

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