表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/230

午後の体育祭・・・の前に

今回真面目君があられもない姿に?

「一ノ瀬君どうしたんだろ?」

「戻ってこねぇな、あいつ。」

「そんなに急ぎの用事だったのかな?」


 真面目が離れてから数分後、3人は時間が過ぎないうちにただ待っていることしか出来なかった。


 そんなことをしていると、不意に雨が降り始める。


「うおっ! やべぇ! 体育館に避難すっぞ!」


 隆起の言葉にならい、岬と下も同じ様に行動を開始する。 それを皮切りに、とまではいかないものの、グラウンドにいた生徒は次々と教室や体育館へと集まっていった。


「ふぃー、危なかったぜ。 雨が降るとは言ってたがここまでとはな。」

「うん。 濡れる前にこれて良かった。」

「折角化粧直ししたのに、濡れちゃったら台無しだからね。 ところで午後の部ってそろそろだよね?」


 下の言葉に隆起達も周りを確認する。 体育館周りには他の生徒もちらほら見えていて、大規模化しているのは間違いない。 そして中を見てみると誰もいないのかと思いきや、何人かは既に入っていて、その人物達の手にはカメラなどの機材が持たれていた。 そして壇上のライトが中央に集まり


『レディースエーンドジェントルメーン! って今のこの時代どっちに言っているのか分からないけれど! 待ちに待った体育祭午後の部を開始させて頂きます! そしてこの放送は校内放送でお送りしており、放送部の協力で学校に備え付けてあるテレビでの校内放映も行っているぞ! この雨を予想して、参加しない生徒も体育館に来なくても楽しめるようにと提案を出してくれたらしいぞ! 生徒会長の粋な計らいに感謝しながら午後の部の体育祭を楽しんでくれよな!』


 その放送で体育館に集まっていた生徒は、「ワッ」と歓声を上げるのだった。


「ほんとすげぇよな、ここまでやっちまうなんてよ。」

「学校側に提案するのも大変だったと思う。 今年の生徒会長は凄い。」


 岬も隆起も今の銘生徒会長の意向に感心を持っていた。 壇上にいた放送部員は別のところから放送を開始した。


『さて午後の部に移行する前に、実は一昨日にある願い受けを依頼されていて、なんと家庭科部が応援団を作ったそうなんだ。 運動が苦手な部員達による、今回限りの全力応援。 なんと最後の最後でスペシャルメンバーも入ったとの事だから楽しみにしててくれよ? それでは家庭科部のみんな、よろしく頼みますぜ!』


 その実況と共に壇上に現れたのは数名の学ランを身に纏った男子で、ハチマキをしている生徒から学帽を付けている生徒、前をしっかりと閉めている生徒や前を開けてサラシを見せている生徒まで様々な姿の応援団が並んで、キレのある応援を見せてくれる


「へぇーあれって手作りか? うちの学ランじゃないだろ?」

「着崩し方も普通のやり方じゃない。 踊りやすくしたんだと思う。」

「ぼくもああやって踊りたかったなぁ。」


 隆起、岬、下はみんな思い思いに目の前で行われている応援団に釘付けになっていた。


 そしてそんな応援が終わりかけたその時、応援団が後ろに集まって、何かを隠すようにしていた。


「なんだ? あれで終わりか?」


 そう隆起が思った時、応援団が振り返りながら隠していた中央を見せるようにポーズを取る。 そしてその中央に立っていた人物に、体育館に集まっていた生徒、そして校内にいる生徒は目を見張った。


「え? 一ノ瀬君?」


 そこに立っていたのは灰色のチェック柄のチアガール衣装に身を包んだ真面目が、ポーズを取っていた。


 真面目の来ている衣装はV字カットのシャツなのだが、衣装のサイズが小さめなのか、お腹は完全に見えており、下はキュロットスカートなので、裾が短めでも真面目の下着は隠されている。 髪は長いことも相まってかポニーテールにされている。 顔には星形のペイントがされていた。


「さあみんな! 体育祭も後半戦! 全力で応援してあげるから、最後まで全力を出していこう! せーの!」


『フレー! フレー! 州・点・高・校!』


 そうポージングを取った後に舞台袖へと真面目を含めた応援団は去っていった。


「なぁ、あいつなんであんなことをしたんだ?」

「それを私に聞かれても困る。」

「とにかく真相は本人にしか分からないよ。 行ってみよう。」


 そう言って3人は午後の部が始まる前に真面目に会いに行く事にしたのだった。


「うー・・・なにやってるのさ僕は・・・」


 一方こんなことに参加させられた真面目本人は、誰も見られないであろう体育館の裏の屋根のある場所で蹲りながら、先程の自分の行いに後悔をしていた。


「いくらこれを着せられたからって、あそこまでやる必要なかったじゃんか・・・」


 あの後無理矢理脱がされ着せられら真面目は確かに何も打ち合わせをしていなかったにも関わらず、あそこまでの全力を出してしまったのだ。


 ただ羞恥心で何も出来ないよりも、逆にやけくそ気味に自分を高めることで動けなくなると言う最悪の事態は避けることが出来たわけだが、それが反って今の真面目を苦しめる要因となっていた。


「はぁ・・・でもとにかく気持ちが落ち着くまではここにいよう。 これ以上は誰かに見られたくない・・・というかこの状態の自分はちょっと弱味を出してるみたいで嫌だし・・・」


「ここにいたんだ一ノ瀬君。」


「うわぁぁ!」


 声をかけられたので真面目は驚きながら振り返る。 そこには岬を含めて隆起と下も一緒に来ていた。 その光景に真面目の心臓はバクバクと脈をあげていた。


「な、なんでここに?」

「それはこっちの台詞。 というかその格好は?」

「これ? これはね、家庭科部の人が特注で作った衣装なんだってさ。」

「それにしてもなんでお前が来てるんだ? 確かに家庭科部って、男子が入るイメージは無いけどよ。」

「まあ、おそらく大きな理由はプロポーションなんじゃないかな? チアガールってこういった人多いし。」

「えー? ぼくもそういうの着てみたいなぁ。」

「だったら次は頼んでみるといいよ。 多分乗り気ではやってくれると思うから。」


 そう言っている真面目であったが、何故か岬達の方を見ていなかった。


「どうしたの一ノ瀬君。 こっち向いてよ。」

「いや、さすがにまだ見せるのには心の準備が必要というか、あのときはちょっと自棄が入ってたって言うか、家庭科部の人が案外恐ろしかったと言うか・・・なんだろう・・・女子が男子に寄って集って服を脱がしに来るなんてさ・・・あれほどに恐怖なんだって思ったよ・・・あんなことをされたらお嫁に行けない・・・」

「いや、お前は男だろ。」


 隆起の本気の突っ込みが入ったところで、真面目は一つ深呼吸をして、その場で立ち上がる。


「・・・ふぅ、とりあえずは落ち着いた・・・」

「ホントに大丈夫? というか体操服に着替えなくていいの?」

「うん。 どうやらこのままでも運動できるように調節されてるんだって。 だから着替え直さないでもこのままいけるよ。」

「便利なもんだなぁ。 元々チアガールって動きやすく設計された服着てるから、案外普通なのかもな。」

「やっぱりぼくも家庭科部にお願いしてみようかなぁ?」


 そう言いながら真面目達は体育館での観戦をするために移動を始めたのだった。


「一ノ瀬君その格好で歩いても大丈夫なの。」

「もう慣れた。 いきなりだったから困惑してただけで、受け入れればどうてことはないよ。」

「そう。」


 何気ないやり取りでもこうして話すだけでも真面目の中では安心できた。 現金なのかなと思いつつ真面目は雨に濡れないように屋根を伝っていったのだった。

体育祭の最後まで彼はチアガールの格好でお送り致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ