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体育祭の練習競技

 真面目達のクラスの体育は、この時期としては珍しい晴天であり、その日では体育祭に向けての練習と言うことで、競技練習を行うことになった。 とはいえ実際にに競技が出来るのはほんの僅かなため、出来る競技は限られている。


 そう言うことなので、今回は男女混合の体育は、決められた競技を同時に進行する形となった。


 真面目と岬は騎馬戦にエントリーしているため、真面目は騎馬役、岬は騎手役で練習を行うことになった。


「浅倉さん。 上大丈夫?」

「ん・・・ちょっと左が下がってるかも。」

「了解。 ・・・と、こんな感じか?」

「うん。 ありがとう。」


 騎馬戦は騎手役のバランスが大事になってくる。 それを支える騎馬役も体勢が崩れないように考えなければならず、微調整も欠かせないのだ。


「それじゃあまずは歩いてみるよ。 準備はいい? 葉桜さん。 結月君。」

「こっちは大丈夫だぜ。」

「私の方も大丈夫。 一ノ瀬君に合わせるよ。」


 そうして始まった騎馬の練習。 体の重心に気を付けながら真面目は歩き始める。 それに合わせて騎馬の後ろの2人も歩みを進める。


「浅倉さん、揺れたりフラついたりしてない?」


 足元が不安定だと気が付いた真面目は岬に声をかける。


「うん、問題ない。 それにしても高いというのも悪くはないね。 いつもよりも風を感じられる。」

「涼んでるところ申し訳ないけど、浅倉さんは相手の騎手からはちまきを取らないといけないんだから、前のめりになるときは気を付けてよ?」

「そのための高い騎馬。 一ノ瀬君こそ相手に押し負けないようにしてくれないと。」

「手厳しすぎるでしょ・・・ ちょっと走ってみるから、違和感があったら言ってよ?」


 そうして騎馬はグラウンド中央であっちこっちに移動を繰り返していた。

「はぁ・・・少し休憩。」

「お疲れ一ノ瀬君。 葉桜さんと結月君も。」

「一ノ瀬が前張ってくれるから、こっちは見えてなくても心配にならないな。」

「浅倉さんも重心をしっかり保ってくれるから持ちやすかったよ。 浅倉さん自身が軽いのもあるのかも知れないけど。」

「見た目は性別が逆だからなんだか複雑。」


 今の環境では岬は小柄な男子。 中学生はおろか、下手をすれば小学6年生と言われてもおかしくない背丈をしている。 それだけに不満も募るのかもしれない。


「・・・ふぅ・・・」

「一ノ瀬、大丈夫か?」

「大丈夫。 あんまりアクティブに動いたことが無かったから、ちょっと体力が衰えてるだけ・・・ふぅ。 もう少し休んだらいけるよ。」

「背が高いっていうのも、有利に働かないものね。」

「そればっかりはなんとも言えないよ。 僕だって好きでこの体になった訳じゃないし。」

「確かになぁ。 朝起きたら唐突にこれだもんな。 びっくりしたぜ。」


 思いは違えど、やはり感じるものはあるようだ。


「それにしても浅倉と一ノ瀬はすぐに会話してたよな。 最初なんて緊張するものだと思ってたんだが。」

「緊張しなかったと言えば嘘にはなるけど、話す相手の最初が一ノ瀬君で良かったのは確か。」


 真面目もその話を聞いて、そう言うものかと認識をしていた。 だがいきなり話しかけられるよりは大分話しやすかったのは覚えている。 それは相手が岬だったからかは分からないが、それでもスムーズに喋れたのには間違いなかった。


「OK そろそろ再開させようか。 今度は前だけじゃなくて、後ろにも行けるようにしないと。」

「どうして後ろ方向?」

「逃げるためと相手から距離を取るため。 前に行くだけが騎馬戦じゃないから。」


 それは岬にも言えることで、それだけ動くと言うことは、少しでも重心がずれれば、騎馬もバランス崩壊する。 それをなくすためにも前だけでなく他の方向からの奇襲や動きにも注意をした上で、横移動や後ろ方向への移動も視野にいれなければならない。


「よいしょっと。 それじゃあまずは後ろに歩いてみよう。 僕は後ろは見にくいから、2人の援護でお願いするよ。」

「分かったぜ。 合わせるのはどうする?」

「私が後方を確認する。 それから動いてみて。」


 騎手が声をかけることになった作戦でまずは声かけから始めることにした。


「結月君、右斜め後方へ移動。」

「っとと。 こうか?」

「足を踏まないようにね。」


 指示自体は軽いものだが、実際に動くとなるとそれはかなり大変な作業になる。 特に後ろ方向への移動は、素早くは動けないのと神経を使う移動になるため、あまり無茶な動きも出来ないと言うことになる。


「一ノ瀬君。 やっぱり後ろに動くのは無理がありそう。」

「それならやっぱり僕が前を向くようにするしかない?」

「それもあるけど、それだと一ノ瀬君に負担が大きくなる。 なにより旋回している時に狙われる。」

「じゃあどうするの?」

「ここは私が動けるようにすればいい。」


 そう言うと岬は3人の手を足場にして、その場で立ち上がる。

「うわっ! っとと! 浅倉さん! 立つならなにか合図をしてよ!」

「あ、ごめん。 一ノ瀬君は前を見てるからこっちの行動は見えないんだった。」

「もう。 本当にお願いだよ。」

「掛け声だとバレるだろうから、何かしらのアクションにすればいいんじゃない? 肩を叩くとか。」

「それ採用。」

「分からないよりは全然いいよ。」


 そうして彼らの中で着実に作戦は決まっていく。 それでも戦いの中ではどうなるかはまだ把握できない。 どれだけ作戦はあってもいいものだろう。


「そう言えば攻めについてはどうするのさ? いくら僕達以外にもチームがいるとはいえ、そこに任せっきりってのは流石に良くないよ。」


 戦いで勝つことに意味はあるものの、逃げてばかりの戦いは面白味がないし、なによりも相手からより狙われやすくもなるだろう。


「攻めの緩急は付けた方がいい。 そのためにも攻めと守りを同時に出来るようにならないと。」

「味方とも連携してよ? あんまり突っ走ると孤立するからさ。」

「その辺りは一ノ瀬に任せりゃいいだろ。 後ろは支えるだけさ。」

「そうね。 攻めるのは2人に任せるわ。」

「なんでそんなに僕達の事を信頼してくれるの?」

「なんでって言われても・・・」


 何故か葉桜も結月も顔を見合わせてからこう言った。


「そこまで2人の呼吸が合うのなら、大丈夫かなって思って。」

「そんな阿吽の呼吸じゃないんだから。」


 なにを言い出すのだろうと真面目は思ったものの、息が合うという点ではこう言ったチーム戦においてはかなり重要だったりするので、もっと磨き上げようと思った矢先に、授業終了のチャイムが鳴った。


「ん。 授業も終わりだね。」

「そうだね。 次は他の人と騎馬戦の動きを知りたいかな。」

「他のところもまずは動きを確かめ合ってたからな。 次は本格的な戦いのための動きを取りたいよな。」

「相手もどんな風に来るか分からないからね。 ある程度は連携を取れるようにした方がいいと思う。」


 そう話し合っているが未だに岬を乗せたままだということを思い出した。


「あ、浅倉さん。 そろそろ降ろすよ。」

「ん。 ありがと。」


 そうしておろしてからみんな次の準備のために移動をする。 先程まで晴れていた空には、厚めの雲が見えていた。

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