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時間は意外と早く進む

前半と後半で話が若干変わります

「量自体はそこまで多くないのが、こういったところの強みだよね。」


 机の上に置かれていた小さなメニュー表を開いて真面目は頷いていた。 普通の量をこういった場所で食べようとはあまり思わないので、メニューをざっと見ることにした。


 定番としてはカレーやポテトなど用意されていて、どのメニューを選んでもそこそこいい値段はするものの、利用している以上は文句はないだろう。


「手が汚れるからポテトとかは避けるとして、飲み物とかが充実してるからスープとかは必要ないでしょ・・・となると選ぶべきは・・・」


 しばらく食べていないものでも食べようと考えた真面目は、メニュー表の前に出てるカレーを選ぶことにした。 したのだが・・・


「・・・これもしかして店員さんを呼ぶ方法って、自分で声をかけるタイプ?」


 こういった場所で声をかけて呼ぶのはどうなんだろうと思いつつも、近くにいた店員に番号とメニューを言ってからしばし飲み物を飲みながら待つことにした。


「そういえばお湯もあったし、頼んだのがカレーならこれは合うかも。」


 そう言ってドリンクバーから紙コップを出して、今度はインスタントコーナーに行って、インスタント味噌汁を紙コップに入れてお湯を入れて熱いままの味噌汁にマドラーを指して、自分の机に戻ってくる。


 そして数分後


「お待たせ致しました。 カレーライスでございます。」

「ありがとうございます。 あ、お代は」

「精算時に一緒に料金として提供されますので、そちらでご確認ください。」


 そう言って店員は裏方へと戻っていった。


「そういえばこういった場所の店員さんって、実際には何をするんだろう?」


 そんな疑問を思いつつも、今は気にしない方向で食事を楽しむことにした。


「こういったのって実際はレトルト・・・いや、止めておこう。 そんな事を考えたところで解決にならないし。」


 余計なことを言うと出禁になりかねないと思った真面目は、ただ黙々と食事をすることに専念するのだった。

「ええっと、どうしようかなぁ。」


 お昼も食べ終えて、少し散乱していた机も片付けて真面目は考えていた。 まんが喫茶で休日を過ごす、という目標には大きな壁が存在していた。 それは「休むのはいいものの、読んでみたいまんがが多すぎて1日では終わらない」問題だった。 後は眠たかったりゲームをしたかったりと、あれよあれよと時間が過ぎていくのだ。 やることは多くても体は1つ。 物事に集中するための犠牲は付き物なのだ。


「今だと12時くらい・・・朝についてここに来たから・・・後2時間くらいかな?」


 時間を使うと言っておきながら、結局時間を気にしてしまう。 それが真面目のいいところでもあり、悪いところにもなってしまう。 どうしようかと悩んでいる内にも時間は刻一刻と過ぎていく。 それならばとまずはその2時間を丁寧に使えば良いのだと思った真面目は、まんがを読みながらドリンクやソフトクリームを食べて、時間を過ごしていってあっという間に退室予定時刻前になったので、そのままの流れで外に出た。


「ええっと値段は・・・カレーライスの料金も含めて1800円かぁ。」


 その値段が高いのか安いのかは真面目にとっては定かではないが、6時間いたのはかなり長い方なのではないかと考えて、まんが喫茶を退出するのだった。


「この後このまま家に帰るのは勿体ないよなぁ。」


 まだ日が高いためか、そんな風に感じる真面目は、どうするかを考えていた。 なにかをしようにも思い浮かばず、かといって帰るのは少々物足りなさを感じる。


 あれやこれやと考えていると、近くに見慣れないスーパーが見えた。 普段真面目達が使わないためか、どう言ったお店かが見えてこない。


「折角だからああいった店に入るのも、悪くないかも。」


 そう考えた真面目はその店へと足を運ばせるのだった。

 そのお店は確かにスーパーではあったものの、それほど大きくはない。 なんだったらいつも使っているスーパーよりも狭さを感じたものの、そのスーパーは繁盛をしていた。 何故なら


「あ、このえのき茸安い。 ふむふむ。 キャベツも小振りだけど1玉でこの値段なら大きさは気にならないかな。」


 真面目が驚くのも無理はないのだが、なによりも家庭目線で見るなら高騰が続く中でこれだけの安さはまずは見かけない。 そしてそれはもっとも足る理由があった。


「ふむふむ。 この人参も小さいけどいくつも入っているから気にならないし、水菜も少しだけならしんなりしていても、調理すればいいから、問題はなしっと。」


 そこには農家の人が選別した上で売れないと判断した野菜が、包装されていた。 つまりこのスーパーは規格外の品を並べる代わりに安く提供をしている場所なのだ。 農家もお財布にもWin-Winな関係なのだ。

 そしてそんな安さの中で、真面目はあるものを見つける。


「あ、茄子だ。 随分早くから出てるんだなぁ。」


 丸々とした茄子を手にとって、真面目の中である料理が浮かんでくる。


「揚げ浸し・・・」


 そう思った時には茄子を籠にいれて、ついでに厚揚げも買い、それだけでは物足りないと鯵の開きを買ってから、家へと帰る。 そんなにあのスーパーに入り浸っていたわけではないものの、帰る頃には既に夕方になっていた。


「ええっと、確かまだ奥にめんつゆがあったはず・・・ あ、あったあった。 揚げ浸しだとまずは茄子を油で揚げないといけないんだよねぇ。 まあその油は鯵を焼く時にでも活用するとして。」


 そう言いながら真面目はせっせとご飯を炊飯器に入れて炊いていく。 汚れないようにと壱与が買ってくれたエプロンと三角巾を付けて、調理を開始する。


 油を温めつつ、真面目は茄子を一口大にした後に切れ目を入れて、その後に厚揚げも一口大に切っておく。


 そして温まった油に茄子と厚揚げをゆっくり投入して、その間に茄子をつけるためのタレをめんつゆと水のみでボウルに作っていく。 


 真面目達は薄味でも良いのだが、今回は茄子なので、めんつゆの比率を上げてから作り、いい具合に茄子がしんなりしてきたらそれをタレ入りボウルに投入して、ラップをした後に冷蔵庫に入れる。


 次に使いきっていない熱された油に鯵の開きを置いていく。 換気扇を回しながら表と裏の焼き具合を確認しながら焼いていき、開きを置いたらフライパンを洗面台に水を浸けて置き、今度は味噌汁を作る。 買ってきたえのき茸と家に常備してあるワカメを具材にして作っていき、後は帰ってきたタイミングで温め直せばオーケーと言ったところで


「ただいま、真面目。」

「ただいまぁ。 あら、夕飯作っておいてくれたの?」


 リビングに両親が同時に入ってくる。 それ自体は滅多にないことで、どうやら時間が一緒だったようだ。


「お帰り2人とも。 もうほとんど出来上がってるから、座ってても構わないよ。」

「真面目がそういうならそうさせて貰いましょうか進さん。」

「すまないな、昨日は帰ってこれてない上に、夕飯まで作って貰って。」

「別に気にしてないよ。 こっちで用意するから、ゆっくり休んでてよ。」


 そう言いながら真面目はテキパキと夕飯の準備をすませたお陰で、家族揃ってすぐに夕飯を取ることが出来た。 そして真面目は今日見つけたスーパーについて話した。


「へぇ、何時も行くお店とは逆の方にそんなお店がねぇ。 ねぇ進さん。 私達明日は休みだから行ってみない?」

「いいんじゃないかな。 そろそろ買い足す時期だろうし。」

「2人の休みが被るなんて珍しいね。」

「でしょ? そう言うことだから明日は案内してよ、真面目。」

「はいはい。」


 そう笑っている真面目は、朝はあれだけどうしようか悩んでいたのに、気が付けばすぐにでも眠れそうな夜になっていた。


「こういう過ごし方も悪くない、か。」


 そうひとりでに笑いながら、夜を更かしていったのだった。

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