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久々に・・・

 その日の授業が全て終わって真面目は、すぐに生徒会室へと足を運ぶ。 雨の振っているこの時期は水泳部も室内で静かに筋トレなどを行ってはいるが、あまり長時間はやっていない。


「水泳において筋肉量の増加は重たくなるので、筋トレは必要最低限で行っていく。 その代わりに有酸素運動を多く取り入れる予定だ。 これならば室内でも出来るからな。」


 そんな駿河からの言葉で雨の日は大抵こうだ。 そして生徒会の仕事を終えると、既に水泳部は帰ってしまうため、真面目は参加が出来ない。


 もう1つの日本舞踏クラブも、今日は集まりが悪いためお休みだ。 そんなわけで生徒会の仕事が終わってしまえば、真面目はそのまま帰ることが出来る。 とはいえ外はまだ雨が降っているので、なるべくならば少しでも弱まった時間帯に帰りたいと思っているのだった。


「少し前に話していた学校交流の件だが、向こう側からも生徒会のメンバーを引き連れてきてくれることで同意をしてくれた。 近々交流を行ってくれるそうだ。」

「メンバーってことは、僕達と同じに会長から庶務まで来るってことですか?」

「そうだ一ノ瀬庶務。 我々としてもお互いの事をよりよく知って貰うための方法だ。 それに我々も迎えるのではなく、出向くことも想定している。 学校交流というものはそういうことだ。」


 確かに片方だけ知ったところで、共有できる場面は数多くない。 そう言った意味では、この交流会はより良い学校生活に近付くことが出来るだろう。


「では続いての議題についてだが、今度は今年の体育祭についてなのだが・・・」


 そうして生徒会の仕事が終わって、昇降口へと歩いていく真面目。 窓の外を見れば、既に雨は止みつつあり、そこから週末にかけては天気は回復するらしい。 あくまでも天気予報での事なので、変わりやすい天気なのには変わりやすいのだとか。


「今年の体育祭どうなるんだろうなぁ。」


 降り終わった後の空を見ながら真面目は考える。 先程の議題に上がっていた体育祭の事について役員全員が唸りをあげていた。 体育祭をやる上で、学校の伝統行事である以上は行うことが定義ではあるが、今年の雨は体育祭の日程の前後ですら雨が降るのだ。 そのような状態では流石にやるにやれない。 だが日程を前倒しにしようが延期にしようがどちらにしても伝統を守るための事ではあるが、厳しいものには変わり無い。


「その日だけ晴れる、なんていう奇跡も起きないだろうし、延期が一番しっくりは来るかもね。」

「一ノ瀬君、なんの話をしているの?」


 そんな独り言を呟いていたのをたまたまその場にいた岬が声をかけた来た。


「やあ浅倉さん。 そっちももう終わり?」

「この湿気だと茶葉が駄目になりやすいから。 正確には中断したってところ。」


 なるほどなと真面目は思っていた。 流石に天候に左右されるなんてところは繊細なところになるのだろう。


「それにしてもこうして2人で帰るのも久しぶりな感じ。」


 真面目も言われてみれば、部活やら生徒会やらを入ってからは、こうしてゆっくりと岬と会話自体をするのが久しぶりなのかもしれない。


「ねぇ。 久しぶりに寄り道してから帰らない?」

「寄り道かぁ。 まあ今なら雨も酷くはないから、ちょっとくらいならいいかもね。」

「決まり。 それじゃああの商店街に行こ。」


 そう言いながら岬は真面目よりも先に靴を履いて昇降口の外に出るのだった。


「でも浅倉さん。 久しぶりに寄り道するとはいえ商店街で良かったの? もっと他の場所に行ったりしないの?」


 せっかく二人ともが久しぶりと言っているので、もう少し代わり映えのした場所を選ぶかと思ったのだが、岬はそう言うわけでも無いらしい。


「何気なく歩いているのだって寄り道でしょ? それにこういった場所でも一ノ瀬君は何かと巻き込まれそうだし。」

「人を歩く災害みたいに言わないで欲しいんだけど?」


 そんな他愛ない話をしながら商店街を歩いていく。 岬とはこうして歩いたのもこの商店街だった。


「学校から近い商店街だからか、やっぱり他の生徒もいるようだね。」

「他校もここを利用しているからね。 それなりに若い人達向けに出し物を変えているんだって。」

「浅倉さんは誰目線なの?」


 そう言いながらも真面目は何かを見つけたようで、そちらの方に歩いていく。


「一ノ瀬君、何か見つけた?」

「見てよ。 この店もうソフトクリームのバリエーション増やしてる。」

「本当だ。 まだ梅雨も明けてないのに。」


 そうは言う二人だったが、折角と言わんばかりに新フレーバーを買う。 真面目はソーダ味、岬はクッキーミントを選択した。


「やっぱり清涼感がソフトクリームにも大事だよね。 それにしても早いとは思うけど。」

「まだ雨が降ってるせいで気温がそこまで上がってないもんね。 でもそれを見越して出したのかも。 季節外れではないし。」


 真面目も言われてみればソーダはあってもブルーハワイはまだ見かけていなかったような気がする。 味自体違うのは何となく分かるのだが、見た目だけで見るのならソーダの方が圧倒的ではある気がするのだが。


「一ノ瀬君。 これを食べ終えたらどうする?」

「いくらなんでも気が早すぎない?」


 まだほとんど口にしていないにも関わらず次の食べ物の事を口にするとは思っても見なかったので、真面目は混乱していた。


 そんな時だろうか。 真面目とすれ違いになった女子が少し歩いた辺りで振り返り、歩いていた真面目の右肩を引き寄せたかと思ったら、真面目の右頬に左手で拳をぶつけてきた。 その衝撃で手に持っていたアイスごと地面に投げ出された。


「よぅ、あの時以来だな。」


 真面目がその人物を見ると、確かに見覚えのある顔だった。


「君は気に入らない相手とは拳で対話するのかい?」


 そう頬に手を当てながら真面目は殴ってきた人物、紫藤を見る。 そして紫藤はそんな真面目の態度が気に入らなかったのか、今度は胸ぐらを掴む。


「お前が余計なことを言ったせいでな、あの店に2週間入れなくなったんだよ。 それにどこから見てたのか知らねぇが、俺の学校の奴からも距離を置かれるようになった。 どうしてくれるんだよ。」

「なに自業自得の事柄を僕のせいにしようとしてるのさ? 自分が勝手に蒔いた種でしょ? 勝手にこっちのせいにしないでくれる?」

「てめぇ・・・」


 カシャリ


 どこからかシャッター音がしたのでその方向を見ると、岬がスマホを構えて今の真面目と紫藤の状況を撮影していた。


「な、なにしてやがるガキ!」

「なにって、証拠の現場を撮っただけ。 彼は生徒会メンバーだから、これを見せたら、そっちの学校、ただじゃ済まないでしょ?」

「・・・! そのスマホを・・・」


 そう言って岬に向かおうとした紫藤の胸ぐらを掴んでいない方の腕に真面目は右手で手刀を与えてバランスを崩したところに、左拳で紫藤の腹を殴った。


「げほっ・・・!?」

「やっぱり君は周りが見えてない。 僕の隣にいた浅倉さんが見えなかったみたいだね。 まぁこれに関しては報告だけはさせて貰おうかな。 悪いけど今後の学校交流の話に亀裂が入るかもしれないからね。」

「待て・・・うぐ・・・」


 紫藤は追い掛けようとするも、真面目に殴られた場所が良くなかったのかすぐには立てないようで、追い掛けてくることはなかった。


「はぁ・・・全く、気分が悪いや。」

「大丈夫には見えないね。」

「ごめん浅倉さん。 今日はこのまま帰るよ。 母さん達は心配するかも知れないけど、仕方ないかな。 ああ、さっきの写真は後でちょうだい。」


 そう言って真面目は頬を抑えながら、そして肩についていたソフトクリームの染みを抑えながら帰るのだった。

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