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憂鬱の雨と体育祭

 5月も終盤になってきて、天気予報では早めの梅雨前線が日本列島に乗ることを受けていたのか、真面目達の住む街でも、天候が最近不安定になってきたりしている。


 真面目も目が覚めて外を見てみると、厚い雲が上空にあり、予報通りに雨が降るのかも曖昧な空をしていた。


 まだそこまで暑くないだけに、朝のシャワーを浴びる程の寝汗もかいていない。 しかしルーティングとしては浴びて身体をスッキリさせたい。 そんな思いから結局シャワーを浴びることにした。


「おはよう・・・」

「おはよう真面目・・・随分と心が落ち込んでるじゃない。 どうしたのよ。」

「どうしたもこうしたも無いよ。 こんなにも雨に憂鬱になるなんて思っても見なかった。 男だった時代はこんなこと無かったのに・・・」

「女性はそう言った空気に実に敏感らしいからね。 真面目がそう思うのも仕方ないのかもしれないな。」

「そうよ。 それと多分、あんたそろそろじゃないの? 「アレ」が来るのも。」

「・・・あぁ、そっちの準備もしておかないと。」


 指摘された上で思い出してしまった真面目は、更に気分を落としてしまうのだった。


「・・・はぁ・・・」


 真面目は自分が思っている以上に雨に弱いことを痛感しているようで、足取りが重く感じてしまっている。 もちろんそれだけではないのは分かってはいるものの、あまりにも気落ちしすぎている気がする。


「・・・あれ? 今日はまだ来てないのかな?」


 そんな風に歩いていたからなのか、いつの間にか岬と合流できる細道まで着いていたのだが、そこに岬の姿はない。 時計を確認してみてもまだ登校には時間があるとは言え、そこに岬がいる様子も来る様子も見受けられなかった。


 これは真面目が立てた勝手な推測ではあるが岬は単に雨が弱いのではないか? 仮説的ではあるものの、前の雨の時も随分と遅くに教室に入ってきたのを思い出す。 因果関係があるのかは分からないが、とにかく雨になったら調子が出ないのは自分だけではないようだと真面目は思ったのだった。


「とりあえずこれ以上ここにいてもしょうがないから先に行ってようかな。 とりあえず携帯で連絡は付けておくとして。」


 そうしながら真面目は岬に連絡を入れてから、学校に再び歩き始めたのだぅた。


 どしゃ降りではなかったものの、それなりに降られたのは間違いではなく、やはりと言うべきか、足元はとんでもなく濡れていた。 こればかりは仕方の無いことではあるものの、足元が気持ち悪い事には変わり無い。 とはいえ乾かす場所もありはしないので、我慢は強いられる。 こんなところでまで雨用の長靴などは履きたくないからである。


「よぉ真面目。 いやぁ凄い雨だよな。」

「本当にね。 梅雨に入るのは今年からはツラいかもね。」


 隆起が後ろから声をかけてきたので、真面目も同意した。


「つか浅倉はどうした? 一緒に登校してこなかったのか?」

「うーん、あんまり雨は好きじゃないのかもね。 あ、MILEが来てる。 『私の事は気にせず先に行ってて』ってさ。」

「死亡フラグか?」


 そこまでの事を考えてることは思っていなかったが、こう言った雨の日でも、少しでも明るくなるのなら、冗談でも笑えるのならよいのかもしれない。


「雨の窓際は・・・悪くないかも。」


 案外風流なのではないかとここになって思った真面目は、ほんの少しだけ考え方がかわったのだった。


「そうやっている一ノ瀬も随分と様になっているね。」


 隣でそんな様子を見ていた刃真里も、微笑みながらそんなことを言った。 刃真里のその表情は女子はおろか、男子すら惚れそうになる笑みを見せていた。


「鎧塚さんって、昔ちやほやされてた?」

「うん? そう言われるとそうだったかもね。 元々声もそんなに女子っぽくは無かったから、王子なんて呼ばれてた事もあったかな。」

「それが本当になってしまったと。 世の中何があるか分から無いものだね。」

「君はどうなんだい? 生徒会に選ばれるなんて凄いことだと思うけれど。」

「それについては・・・なんでか分からないんだよね。 そんなに正義感が強かったわけでもなければ、誰かのために役に立ちたいとは思ってても、いざ行動に移せなかったっていうか・・・」


 真面目は不思議がっていた。 今の自分がこれが出きるのはなぜか、と。


「君にも君なりに押し込めていたものがあったのかもね。 それがこうなったことによって表に出るようになった。 そう考えた方が、意外と気持ちしないからさ。」


 刃真里の言う通りかもしれないと、真面目は降り続く雨を見ながらそう思ったのだった。


「今日のSSは大型学校行事の1つである体育祭について話していきたいと思っている。」


 担任である古寺から午後の趣旨を伝えられた。


「もちろんこの体育祭は、今までとは訳が違う。 それは競技性にあり、男女を別々で競わせても前の身体ではないので、勝手が前とは違う。 なので州点高校では男女混合の競技が主となる。」


 そう言いながら古寺は黒板に体育祭の競技を黒板に書いていく。


「大玉転がしや玉入れは当然、リレーも男女混合でやるため、最後までどうなるか分からないと言うのが、州点高校の体育祭となっている。」


 そして書かれていた競技をクラスメイトはどうするか既に考え始めていた。


「必ず1人一競技には出て貰うルールになっているから、いない名前のクラスメイトがいれば分かるからな。 それに競技と競技の間にはかなりの時間があるから、複数個競技を選んでも構わないからね。」


 そしたクラスメイトが色んな競技にバラバラに参加することで、名前が黒板を埋めていっていた。 もちろんその後担任である古寺は一つ一つをメモしていく。


「一ノ瀬君は何を選んできた?」

「玉入れと騎馬戦。 背の高いのを利用してね。 鎧塚さんは?」

「大玉と徒競走。 シンプルなのが言いかなって思ってさ。」


 確かに大玉も徒競走も、そこまで戦略的な事を考えなくてすむ。 その代わり実力がかなり反映される競技ではあるので、鎧塚には是非頑張ってほしいと思う真面目であった。


 そしてもう1つの気がかりである岬についてだが、色々と悩んだ末に騎馬戦のところに名前が入っていた。 岬はかなり軽いと思われるので、上になればそれだけ乱闘に巻き込まれるだろうが、それを掻い潜りながら進めば勝利に近付くことは可能になる。 そこはクラスの作戦次第ではあるだろうが。


「よし、これで人数分の競技の確認がとれた。 後は学校側への申請すれば終わりではあるか。 そうだ次からの体育は体育祭の競技メイン授業になると言っていたから、その分しっかりと練習に取り組むように言われていたからな。」


 そうしてSSが終わった流れでHRも終わり、放課後へと差し掛かったのだが、真面目はどうするかと、どちらに行こうかと悩んだ末に、一度生徒会には顔を出そう、そして真面目が思った事について話してみようと思ったのだった。

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