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女のような女子

部活動も終えて、真面目は家へと帰ろうとした時に、真面目の携帯がなる。 宛名は母である壱与からだった。


『今日は帰り遅くなるから、夕飯は適当に食べなさい。』


そんな通知だった。 平日で壱与が帰りが遅くなる場合は作っていると明日に響くため、惣菜を買うか外食をするのが通例である。


そしてしばらくどうしようかも考えていると、また携帯が鳴った。 今度は進からだった。


『すまない真面目。 今日は帰るのが夜分になりそうだから、夕飯は先に食べてくれ。 もし壱与さんが帰っていないなら外食をしてきてくれ。 お金は立て替えるから。』


進からもそんな通知が届いたので、完全に真面目は外食に決定された。


「2人が夜遅くなるなんて、昔はよくあったものだなぁ。 まあその時はまだ立場が安定してなかったって事で納得してるけどね。 15年以上も頑張ってくれてるんだから、そこに文句は無いってね。」


真面目にとってもこの状態については慣れたもので、部活終わりだったこともあって、お腹は空いている。 適当に惣菜を買ったりすることもありではあるが、せっかくなら外食らしいことをするのも悪くはないと思う。


そう思った真面目は、とりあえずは商店街に行くことにした。 この商店街にも飲食店は建ち並んでいて、とにかく飽きさせない。


「帰りに買い物を済ませることを考えて明日は・・・サンドイッチかな。 ご飯は炊かないと無いし、今から炊いてもいいけど今日と明日の自分の分だけ炊くのも気が引けるからね。 食パンも買えるから問題なし。」


商店街の中にあるスーパーを外から見て諸々考えていたら、お腹が鳴った。 明日の事よりまずは今の腹ごしらえをしないといけないと自分を反省させた。


「ある意味では1人での外食は久しぶりだからなぁ。 ええっと昨日はスパゲッティだったから麺は避けても大丈夫かな。 カルボナーラに鮭のほぐした身が入っていたから、魚もよし。 それならお肉がいいかな?」


商店街を右に左に見ていると、あるお店の前で右往左往している、州点高校の女子生徒を見かけた。


だが勘違いしてはいけないのが、高校と言うことは見た目は女子でも心は男子と言うこと。 まだ2ヶ月と経っていない身体の変化にはすぐには対応出来ないことだ。 ああしてうろうろと見ているのも、種類が多すぎて分からないからだろうと思った真面目は、そのままスルーしようとした。 したのだが左腕を捕まれた上に


「ねぇ! そこの君! ちょっと試して貰いたいんだけど!」


そう言われて真面目は困惑した上で、驚いて動けなかったこともあり、その人物に先程のお店、コスメショップへと引っ張られてしまった。


「うぇ!? ちょっ・・・」

「ええっと、これとこれに・・・試したいのはこれと・・・」


なんの説明も無いどころか話の介入すら許さないくらいに選んでいるので、真面目も流石に野暮だと思いつつ、巻き込まれたことに対してため息をついた。


「さてと、動かないでじっとしててね。」


一通り選び終えたであろうその手にはブラシやらファンデーションやらがあった。 真面目は細かいアイテムを知らないので、ほとんどが母に任せて見ているものばかりだ。


「そんなに色々と買ったのに、自分に使わないの?」

「これはお試し用だから大丈夫。 使い心地を見てから買うよ。」


ならば使うのは自分なのでは?と真面目が思った矢先に、口元にクリームを塗られる。 口紅ではないようなので少しホッとしている真面目だった。


「ふんふん。 これで口回りはいいかな。 頬にはこのファンデで、上に薄く塗る感じ。 そこに少しのラメと目元をアイシャドウで書けば・・・ うん。 これですっぴんにほとんど見える化粧の完成。 右と左で分けてみたから、これで見てくれる?」


そう言われて真面目は手鏡を持つ。 確かに鏡から見て左側はなにも変わってはいないが、右側はこれでもかと言うくらいに綺麗に見えていた。 化粧に関しては分からない真面目でも、これだけ綺麗になっているのが分かれば、その素晴らしさは分かる。


「これが・・・僕?」


あまりの違いに本人がビックリするほどだった。


「いいねぇ。 よし、これにしよっと。 あぁ、顔はこれで拭いておいて。 肌に優しい化粧落としだから。」


そう言って渡された洗顔シートで真面目は顔を拭いていく。 そしてそれが終わった頃に、先程の女子が帰ってくる。


「いやぁいい買い物をしたよ。 ありがとう、付き合ってくれて。」


真面目はその人物を改めて見てみる。 髪はこれでもかと言うくらいの濃いピンクのカールのセミロング。 メイクをしているためか目は大きく、泣き黒子があるのが見えた。


「まぁ、それはいいんだけど・・・君、うちの生徒、だよね?」

「・・・ん? んんー? そう言う君はどこかで・・・」


その人物は真面目のことをじっと見ていると、なにかを思い出したかのように、声をあげた。


「そうだ。 生徒会選挙の時に最後に演説した一ノ瀬君じゃないか。」

「あ、良かった。 認識はしてくれていたんだね。」

「それは当然だよ。 何て言ったって、君の事をぼくも支持したからね。 君の演説、ぼくの胸にも響いたよ。」

「それはどうも。」


そう話をした矢先に、真面目の腹の虫がなった。 そう言えば夕飯をどうするかで商店街を歩いているのを真面目は思い出したのだった。


「もしかしてこれから夕飯だった? それならぼくが奢ろうか?」

「え? いや、確かに外食にはする予定だったけど、流石にそこまでは・・・」

「じゃあぼくの買い物に付き合ったってことで。 ちょっとした迷惑料だと思ってさ。」


そう言われてしまうと真面目も気が引ける。 何がかと言えば、そこで断ると後味が悪いからである。


「・・・分かったよ。 それなら奢られようかな。」

「良かった。 それなら着いてきてよ。 ぼくの行きつけがあるからさ。」


そうして真面目はその人物と共に商店街を歩いたのだった。


そして着いたのは「バーガークイン」。 海外からのチェーン店ではあるものの、その人気は着々と上がっている、というのは連れて来た人物の談である。


良く見かけるチェーン店の値段よりは高校生にしては少しお高めではあるが、その分量があるのが特徴だ。


「いらっしゃいませ。 ご注文は?」

「ぼくはチーズパティバーガーのポテトのセット。 後はサラダを単品で。」

「畏まりました。 ドリンクはなにになさいますか?」

「ジンジャーエールで。」

「ジンジャーエールですね。 そちらは?」

「うーん、じゃあダブルパティバーガーのポテトのセット。 ポテトってLサイズに出来ますか?」

「はい、可能でございますよ。」

「じゃあそれで。 飲み物はオレンジジュースで。」

「あ、ぼくたち学生なので学生証です。」

「畏まりました。 それでは料金が1600円になります。」


そうしてお金を出してから待機札をもらって、せっかくならと2人は2階の席へと座ることにしたのだった。

本当は自己紹介までしようと思ったのですが、思った以上に執筆が進んでしまったので、彼女の紹介は次回になります。

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