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これもまた定番・・・だけど

 和奏が持ってきたお弁当は6人の手によって処理された。 とはいえ完食に一番貢献したのは真面目で、他のメンバーは運動部である隆起と得流はそこそこ食べたものの、残り3人の食べる量があまり多くなかったため、そのほとんどを真面目が処理したことになったのだった。


「ちょっと食べ過ぎたかもしれない・・・お腹が重いや。」

「その割には余裕そう。」


 言われてみればレミにお弁当を少しだけ(レミの祖母の量も合わせて)渡したはずなのだが、それでもそこそこの量を食べていた。 具体的にはほぼ3人分は食べている筈なのだが。


「まあ真面目は胃袋が大きい方だったからな。 多少量が多くなったくらいじゃビクともしないって。」

「そんなに食べ盛りだったの?」

「それもあるが、中学の給食って固定だろ? で、嫌いな食べ物は食えるやつに渡すのがある意味定番と化していてな。 真面目もそれに加担してた1人だったから、そうなったってだけだろ。」

「よく覚えてるね、そんなこと。」

「それでほとんど太らなかったんだからなおさらすげぇよ。」


 真面目の食事情を聞きながら次の場所へと移動しようと先程の地図の場所に戻ってくる。


「次はどうしようか? そろそろジェットコースターに乗りたいところだけど。」

「まだお昼時だから少し空いてるかも。 乗るなら今じゃないかな?」

「お昼食べ終わってすぐにジェットコースターは危なくない? ほら、浮遊感とか。」

「一気に乗るのは、危ないかも、しれないです、ね。」


 お昼を食べ終わった後なので、なおのこと気分が悪くなるかもしれないと心配はしているものの、それでも乗ってみたい気持ちが勝ったので、列が少ない内に乗ることにきたのだった。


 真面目達が乗ろうとしているのは「アングラビティジェット」と呼ばれるもので、上へ下へと動いているコースターは、まるで無重力の中にいるのではないかと思わせられる、というのが売りのジェットコースターである。


「さてと、そろそろ順番だけど・・・」


 真面目は岬の事をチラリとみる。


「? なに?」


 その後にジェットコースターの前に掲げてあるポスターを見る。 その行動を岬は理解したようで、少しだけムッとした表情をした。


「一ノ瀬君。 言いたいことは大体理解出来た。 でも心配する程でもない。」

「それならいいんだけど・・・」


 真面目が見ていたポスターとは身長制限についての案内だった。 高校生であれば年齢制限は引っ掛からないものの、今いるメンバーの中でも岬と叶は男子中学生と言われてもおかしくない程の身長の持ち主なので、最悪命に関わるかもしれないと真面目は思ったのである。


 そしていよいよ真面目達の番になった時、

「何名様でのご入場ですか?」

「6人です。」

「それではそちらのお二方は一度身長を測りますので、こちらにお並びください。」


 そう言われて岬と叶はポスターの横に並ぶことになった。 二人ともギリギリではあったものの、身長は越えていたので、そのまま乗ることが出来たのだった。 だが岬としてはあまり気分は良くないようで


「そんなに小さいのかな。 私って。」

「まあまあ、乗れるんだからそれ以上は怒らないでよ。」


 何故か真面目が機嫌を取る羽目になっていたのだった。


 そうして乗る順番となり、真面目達は4列目のコースターに乗ることとなった。 順番としては前から岬と叶。 隆起と和奏と並び、真面目と得流という座りになった。 因みに後ろにももう1組座っている。 並び順がこうなった理由は、単純に背丈順である。 真面目と得流が前にいると、背中が邪魔になってしまうということからだ。


 そうしてコースターはレールを進んでいき、ドンドンと上へと上がっていく。 ガタンガタンと上がっていくなかで、得流が真面目に話しかけてきた。


「そう言えばよくこういったコースターの時って、手を上げたりしてるのも多いよね。」

「ああ、でもあれって結構危険な行為だと思うんだよね。 だって体を支えてるレバーから手を離すんだ」


 得流と真面目の会話を遮るように、コースターは急降下を開始した。


「しぃぃぃぃ!!!??」


 あまりに唐突だったため、流石の真面目も謎の悲鳴をあげざるを得なかった。


 それから大体3分程ちょっとした無重力体験をしてから、出口へと向かうのだった。


「なかなか良かったな。 ジェットコースターはやっぱりこうじゃないとな。」


 隆起は満足そうではあるものの、前列に乗っていた2人は上下の激しさで酔いが回っていて、得流は足元がフラフラしていたが、楽しそうにしていた。 そして真面目は口を押さえていたので、岬が声をかける。


「どうしたの? 一ノ瀬君。」

「・・・舌噛んだ・・・」


 会話の途中で下り始めたので、運悪く舌を噛んでしまったようだった。


「それなら今度は別のものでスリルを感じない?」


 得流が指を指したのは「日本百鬼夜行」とかかれた、いかにもお化け屋敷な雰囲気のアトラクションだった。


「別のスリルって・・・」

「嘘でしょ?」


 みんなはあまり乗り気ではない、というよりもあまり行きたそうにはしていなかった。


「まあでも、ああ言うのも趣だよな。 みんなで行けば怖くないだろ。」

「みんなでは行けないと思うんだけど・・・?」


 とはいえこれ以上反対意見も無かったので、その場所まで歩いていくことにした。


「日本百鬼夜行」。 入り口に掲げられているのは提灯お化け。 周りには様々な日本妖怪が描かれていた。


「あ、これなら僕は大丈夫かもしれない。」

「本当に? 入り口だけで判断してはいけないと思う。」

「んー、まあ、そうだよね。」


 真面目は少しでも気を紛らわせようとしていたのだが、岬の冷静な突っ込みにため息をついた。


「・・・一ノ瀬君もしかして怖いのが苦手?」

「苦手というか・・・んー・・・あんまり触れてこなかったからなぁ・・・」


 そうこうしているうちに入り口についてしまっていた。


「そう言えば組分けはどうするの?」

「うーん、そもそも何人までなら一緒に入れるのか分からないからなぁ。」

「ここは3人1組で入ってもらいます。 それから出てこられるまでは別の方は入れないようにこちらで調整いたしますので。」


 そんなわけでみんなでどうしようかと思っていたが、結局真面目と隆起は分かれて、後のメンバーはグーとパーで分かれた結果、真面目側に岬と叶、隆起側に得流と和奏のチームに分かれた。


「じゃあ僕達から行ってくるよ。」

「おう。 楽しんでこいよ。」


 皮肉ではないのだろうが、完全に他人事のように隆起は真面目達を見送った。


「さてと、鬼が出るか蛇が出るか。」

「蛇が出るとするなら、ヤマタノオロチ?」

「ヤマタノオロチって妖怪だったっけ?」


 そんな軽口を言える内が真面目の中でも、かなり余裕があったのだとこの時は思いもしなかったのだった。

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