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夜会話

 始業式から岬との同盟(?)を組んでから帰ってきて、すぐに制服から部屋着へと変えたが、元々着ていた服は小さくなってはいないはずだが、やはり胸部の膨らみが服を押し上げてしまうため、お腹が見えるか見えないかの位置に裾が来てしまう。


 下のズボンの方はまだなんとかなっているものの、下着の方が気になってくる。 男子だった頃にあった布部分が消えるだけでこうも安心感が薄れるのかと真面目は思っていた。


 日が高いうちに帰ってきたので、両親のどちらかが帰るまでは割と暇である真面目は、漫画を読んだりゲームをしたりして時間を潰していて、時刻は夕方5時頃。 リビングからキッチンへと向かい、米を炊飯器に入れて炊き始めて、そのままの流れでリビングでテレビをつける。


『本日は各学校で入学式や始業式が行われ、新たな門出を迎えております。 昨今は「異性転換」への対応も日に日に進化しており、服装もある程度は自由に選べる学校も・・・』


 ニュースに流れているのは何処かの都内の高校の風景。 緊張している生徒、友達を見つけてはしゃいでる生徒。 校門前で写真を撮られている生徒。 様々な学校の景色が映し出されていた。


「ほんと、性別が逆転してるなんて思えない。 何処にでもある風景の筈なんだけどねぇ・・・」


 思春期時代に性転換してしまう日本になってから10年近くになる。 日本人はこの世界に慣れ始めているのかと言われると、それでも「大半」という言葉に統合されてしまう。 一部の人間は「非」現実的だと未だに異議を唱えることもあるのだろうが、それでも今更そんな異議は殆ど聞かなくなってきている。 専門家や評論家ですら、今後の日本をより良くするにはどうするかに赴きを向けている程だ。 そんな少数派に耳を傾けている暇は無いのだろう。


 真面目も性転換して早5日目になるが、既に自分は「女」になったことを受け入れているし、騒ぎ立てたりもヒステリックにもなっていない。 もう一つは彼の趣味の1つである漫画やラノベを読んでいる知識も相まって、受け入れが早かったことも要因だろう。


『続いてのニュースは近年増え続ける若者の性被害について、警察も対応に困惑をしている様子です。 例えば電車の中で痴漢をされたとして、相手は高校生、つまり元は男子ということになるのですが、見た目は女子高生となるので、条例としての対応が問われる事態となっています。』


 そんな事件の話も少なからず流れてくる。 それでも性転換の世界になった瞬間に比べれば、まだ優しい方なのではないかと思える。


「これでも良くなった方なのかな?」


 そんな疑問を浮かべていたら玄関の鍵を開ける音がして、その次に父である進が入ってきた。


「ただいま真面目。 随分と早いな。」

「お帰り父さん。 今日は始業式だけだったからね。 今週はレクリエーションだってさ。」

「中学の友人とは会えたかい?」

「全然。 こっちも分からないし向こうも分かってないよ。 というかそもそもクラスメイトとも殆ど話してないから、誰か誰だか分からないって。」

「そうだったか。 夕飯はどうする?」

「なんかキャベツが異様にあったように思えたけど?」

「・・・本当だな。 挽き肉もある。 煮込むのに時間は掛かるがロールキャベツでも作るか。」

「それなら手伝うよ。 キャベツを剥けばいい?」

「ああ。 頼むよ。 こっちは入れやすいように肉を固めておこう。」


 そうして男手(片方は姿が女)2人で夕飯の準備をする。 そしてキャベツを剥き終えて挽き肉がつくね状になっていて、それを1つずつキャベツの中に入れて捲れないように爪楊枝で留める。 その間に進はロールキャベツを入れるスープの味を整えている。 ロールキャベツのスープは普通コンソメで作るのだが、一ノ瀬家の人間はあっさりが好きなので、白だしで味を整えていた。


 そして味をしっかりと確認した後にキャベツを入れる。 個数は8個だが、壱与は仕事上食べることが多いので、2人よりも1つ少なくてもお腹は膨れるのだ。


 準備が整ったので、後は壱与が帰ってくるのを待つのみになったので、テレビを見ていると、不意に真面目のスマホが鳴り始めた。 MEINの通知音だ。


「ん? 母さんか?」

「かな? ・・・ん?」


 そこにあった名前は母の名前ではなく「浅倉 岬」の名前があった。 内容は『初メッセージ 届いてる?』といった簡素なものだった。


「違ったようだが、友達か?」

「まあ、そんなところ。」


 岬との関係はまだそこまでの関係ではないと思っている真面目。 同盟を組んでる以上は後々はそうなるのだろうが、今は違うと思ったのだ。

 そんなことをしていたら玄関の鍵がまた開けられる。 今度は壱与がリビングに入ってくる。


「ただいま。 遅くなってごめんなさいね。」

「気にしてないさ。 お風呂に入っている間にこちらで夕飯の準備をしておこう。」


 そうして両親がそれぞれの方向へと歩いていったのを確認してから真面目はMEINでの返事を書く。


『メッセージ届いてます。 これから夕飯なので返事はまた後で。』


 そう書いた後に送信ボタンを押してから食事の準備を手伝い、家族全員で食卓を囲んでから、夕食をであるロールキャベツを食べるのだった。

 夕食を食べ終えて真面目は部屋に戻り、先程のMEINを開く。


「メッセージ返ってきたかな?」


 確認してみると先程のメッセージからの返信が来ていたようなのでMEINを開いた。


『届いたようで良かった。 最初のやり取りとしては幸先がいいかな?』


 普通のやり取りの筈なのだが、真面目も今までの友人とのやり取りとは違った感覚に、何処か喜びを感じていた。


『初めてならいいんじゃない? 最初の対話が異性になるとは思わなかったけど。』


 真面目はそう返信した後に待っているだけというのも退屈なので、自分の部屋の机の横にある本棚から適当に漫画を取り出して読み始める。


 数分後にMEINの通知音が鳴る。


『それは私も思っています。 ところで確認したいことがありまして。』

『確認したいこと?』


 そんな疑問が書いてあったので真面目はそのままの文字で返す。 なにか聞きたいことであっただろうかと真面目は思いつつ返事を待ち、MEINからの通知が来て確認をする。 すると、こんな言葉が書かれていた。


『一ノ瀬君。 あなたは今どんな下着を身に付けていますか?』


 その文面に驚愕しながらも真面目は脳がフリーズする前に、文面を書き上げる。


『普通のパンツだよ。 女性用の。 ブラは・・・着けてない。 後いまの僕は見た目は女子高生だけど、中身は男だから。 それは今の浅倉さんも同じだから、普通なら怒られるよ。』


 そう注意喚起も兼ねて返した。 とはいえ自分で書いた筈なのに、「下着はパンツのみ」と答えるのは改めて恥ずかしいと思った。


 いや、部屋着は着ているため完全な半裸ではない。 無いが見えない相手に自分の状況を説明することがこれほどまでに恥ずかしいものだとは流石に思わなかった。


 真面目が複雑な気分になっているとMEINの通知音が鳴る。


『まあまあ。 友人としての軽いジョークとして受け止めてよ。』


 そんなことをジョークにしないでもらいたいと呆れた真面目であったが、文面には続きがあった。


『私も今はパンツだけだけど、穿いていても違和感がある。 なんというか、収まりが悪いというか、ちゃんと入ってない感じがするというか。』


 真面目はその文面に疑問を持った。 なんでパンツでそんなに着心地が悪いのかと。 考えてみてある1つの推測に至った。


『・・・もしかして女性用の下着を穿いてる?』


 そう文面を返す。 間違いであって欲しいと願うばかりだったが、返信文を読んで、真面目は手を顔に当ててしまう。


『良く分かったね。 ほら、男子でも似たような形のヤツがあるから、穿けるかなって思って。』


 真面目は何処からツッコミを入れるべきか迷った挙げ句、そうなってくるとと言った具合に返信をする。


『因みに学校も同じ様に女性用下着で登下校してた?』


 数分後にMEINから通知が来る。


『それはない。 流石に歩く時に違和感があったから、穿かずに登校した。』


 別の意味でヤバいことになっていると真面目は思った。 このままでは夕方にやっていたニュースのような「性犯罪者」になってしまう。 女性用下着を穿いていても大概だが、穿いていないのは限度を越えている。 過ちが起きる前に軌道修正しなければと、真面目の中での使命感が生まれた。


『明日も午前中で学校が終わると思うから、その後に服や下着を買いに行こう。 僕はもう寝るよ。 おやすみ。』


 送信した後に布団に潜り、そして通知音だけ聞いてから眠りにつこうとするも、何故か岬の寝巻きの状況を悶々と考えてしまい、真面目は寝るに寝れなくなっていた

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