何に乗るか
真面目達が入った遊園地は、そこそこ大きい場所で、絶叫系が多いのが有名だ。 また夏になれば特別施設のプールも開かれるのだそうだ。
「なあなあ! とりあえずあれを記念に撮らねえか?」
隆起が見つけたのは「入場記念」のパネル。 そこには多くの人が同じように写真を撮っている。
「あれもやっぱり醍醐味だよね。 早速並ぼ。」
「ああ、ちょっ・・・」
「止める理由はないよ一ノ瀬君。 私達だって楽しむために来た。 だったら写真くらいはいい。」
「僕としては乗る時間が無くなるって言いたかったんだけど・・・それもそうだよね。」
真面目も優先することを間違えそうになっていたことを反省して、みんなと共に記念撮影の列へと並んだ。
そして順番になってパネルの前に立った。 とはいえ身長的に考えれば、真面目と隆起は立ちながらになるが。
「それでは皆さん、はい、チーズ!」
得流の携帯で写真を撮って貰い、後で共有する形になって、ようやく本命の遊具に遊ぶ運びとなった。
「それで何から乗る?」
「ジェットコースターは人気だから、行列は必然。 他を回ってからでも十分に時間はある。」
「とりあえず6人全員が乗っても大丈夫なやつにしない? ほら、この「ドーナツスパイラル」とか良いんじゃない?」
「それならこっちだな。 行こうぜ。」
得流と隆起、そして岬はそのまま歩いていってしまったが、真面目、叶、和奏は後ろを歩くだけだった。
「今更だけど2人は絶叫系とか大丈夫な方? あれだったら先にみんなに言わないといけないけど。」
「ご心配ありがとうございます。 でも、それが苦手と言う訳ではありませんから。」
「それに、皆さんと、楽しめるのが、一番です、から。」
心配は杞憂、もといそれよりも楽しんでくれることが何よりだったことに真面目は安堵を覚えたのだった。
「うわぁー!」
「あははははははは!」
「ドーナツスパイラル」。 真ん中の間円を中心として、グルグルと回りながらステージ上を右往左往する乗り物。 遠心力はコーヒーカップの比ではない。 ちなみに叫び声は得流で笑い声は隆起である。
「と、飛ばされそう、ですー!」
「しっかりと掴まってれば、大丈夫だから!」
和奏の発言に隣の真面目がそう言葉にする。 そして乗り終えた後はと言えば
「足元がふらつきます・・・」
「遠心力が凄いから、平衡感覚がまだ戻ってないんだよ。」
バランスを崩しそうになっているのをみて、少し休むことを考えたのだが、
「あー面白かった! 次はあれに行こうよ! みんなはどう?」
そう得流は言っているものの、流石にみんな動けるような気力を持っている人はいなかった。
「それなら俺は行くぜ。 なにに乗るんだ?」
結局行ったのは得流と隆起のみで、他は一度休憩を挟むことにしたのだった。
休憩に入ったのならば、真面目がずっと気になったことを聞いてみることにした。
「そう言えば南須原さんのリュック、かなり大きいけれど、なにが入ってるの? 重たそうに見えたけれど。」
そうなのである。 和奏の身の丈にしては大きいリュックを背負っていたので、気になっていたのだ。
「あ、折角の遊園地なので、皆さんに、食べて貰いたくて、お弁当を、作ってきたんです。」
「へぇ。 私達売店で買おうと思っていたから、お弁当があるのはありがたい。」
「いや、それにしてもリュックにパンパンになるほど?」
確かにそれだけの量を考えると重たくなるのは確かだが、人数分作ってきたのだと考えると、相当な量になると思う。
「というかお弁当を用意してくれるのなら、前もって言ってくれれば僕達も準備したのに。」
「皆さんの、お手間を、掛けるわけには、いかないと、思って・・・」
「むしろそちらが手間になってしまっていたら意味がない。 次は私達も用意できるようにする。 遠慮なんていらない。」
「まあまあお二人とも。 折角作ってきてくれたのですから、そのくらいにしてあげましょうよ。」
叶の言い分に、言い方が強かったように感じた真面目と岬はすぐに謝った。
「ごめん南須原さん。 作ってきてくれたのに、言い方が悪かったよ。」
「私も強く当たったかも。 本当にごめん。」
「いえいえ、私は、気にしてませんから。」
和奏はそう言っているものの、真面目と岬は若干の居心地の悪さを感じたのだった。
「それならあれにみんなで乗らない? 多分隆起達はもう少し戻って来ないだろうかさ。」
真面目が案内したのは「ナイトガンシューティング」というもので、内容としては暗い中で敵を倒していくもので、シューティングということで移動しているトロッコのようなものに乗りながら撃っていくアトラクションなので、箸休めには丁度いいのだろう。
「丁度4人いるから、すぐに乗れるかな?」
「でも、並んでは、いるみたい、ですよ。」
「それでもあそこよりは並ばないから良いんじゃないかな?」
ジェットコースターの並んでいる列を見て、みんなも同じことを思ったのか首を縦に降った。
そして搭乗券を購入して列に並んでいると、子供連れの人達が並んできたが、とてもテンションが上がっていた。
「楽しいのかもね。」
「あれだけ子供が盛り上がっているなら、期待できるかも。」
そうしてようやく「ナイトガンシューティング」へと入っていく。
『さぁこの暗闇の中にいくつもの魔物が存在しているぞ。 君達が生き残る為には、手元にある銃を使って倒すのだ!』
みんなは手元の銃を使って狙いを定めて敵についている的を当てていく・・・のだが、真面目はともかく、他の3人は背があまり高くないのか、上の方は狙いを定めることが出来なかった。 とはいえ他のところでかなり当てているので、点数はそれなりに取れている。
もちろん真面目も手加減はしていないのだが、点数の高い敵を狙ってはいるのだが、その分的も小さいので、後半の方ではなかなか点数が伸びなかった。
最終的に点数としては真面目が一番ではあったものの、ランキング猛者よりはかなり低い点数だった。
「うーん。 狙いすぎたかなぁ?」
「楽しめたのなら問題ない。」
「おーい、そっちも終わったのか?」
丁度真面目達が終わったところに隆起達も合流していた。
「そっちはどうだった?」
「こっちも楽しかったよ。」
「次はなに乗るよ?」
「そっちも終わったばかりなのに、もう次に行くの?」
「当然でしょ! まだまだ遊び足りないよ!」
それは確かにと思いつつも、当然ながらまだ昼前なので、どこも列がかなり長いところばかりではあるものの、お昼前にはもう1つくらいは乗れるといいなと思っていた真面目であった。




