試験突破のご褒美に
前半と後半でパートが分かれています
翌日の2時限目が終わった間休み。 真面目と岬は目の前で頭を下げている人物達を見て困惑していた。
「この通りだ真面目! 俺達に、勉強を教えてくれないか?」
「あたいもお願い。 赤点だけはなんとしても避けたいの。」
頭を下げているのは隆起と得流。 真面目も岬も、この二人が頭を下げる理由はなんとなく見当がついていた。
そう、この二人は勉強が苦手で、しかも小テストの時ですらギリギリだったのだ。 本人達も頭が悪いのは自覚している。 それゆえに今回は猫の手も借りたいといった様子で二人に頭を下げに来たのだ。
「それは別に構わないけど・・・」
「お昼休みでも良かった。 そこまで切羽詰まっていないのならば。」
「んぁー。 それはそうなんだけどな? まあある意味衝動的というか、なんと言うか・・・」
その言葉までは真面目も岬も理解が出来なかった。 そんな時に次の授業の始まりを告げるチャイムが鳴る。
「とにかく詳しくは昼休みに話すよ。 そっちも頑張って。」
そうして隆起と得流を見送った2人はただ立ち尽くすのみだった。
「結局なんだったんだろうね?」
「分からない。 そもそもそれくらいの事なら切羽詰まった状態じゃなくても聞けた。」
2人は良く分からないままに授業を受けに行くのだった。
「それで、結局なんであの時に声をかけたのさ?」
昼休み、外は雨は降らずともどんよりとした空気だったので、例の場所で昼御飯を食べる運びになった。 因みに4人以外にも叶と和奏もいる。
「2時限目の授業の時にな、先生が「自習」の時間をくれたんだよ。」
「先生も流石に完全に自習にするんじゃなくって、プリントを渡されて、終わった人から自習にって感じだったんだよ。」
「それで、問題が最後まで解けなかった?」
「いや、そうじゃないんだ。 問題は教科書を見ながらでもなんとか解けたぜ。 でもその後なんだよ。」
「その後?」
隆起が焦らすように言うので、皆が食事を止めて隆起を見つめる。
「その後俺は、自分の前の小テストの結果を思い出して、少しでも勉強をしようと思った。 だけどな・・・ペンが・・・進まないんだよ! 全くと言っていい程!」
そんな声を聞いて驚きはしたものの、真面目と岬は隆起の言っていることは大体理解した。
「つまり1人での勉強の仕方が分からないから、私達に教えて欲しいって事?」
「そう言うことだ。 で、同じ悩みじゃないだろうが、どうせ勉強を教えて貰うならって、近野を誘ったって訳だ。」
「あたいも勉強は出来ないからさ。 折角なら、一緒にやらせてもらえないかなぁ、なんて。」
隆起と得流は真面目と岬の様子を見る。 そこで2人は溜め息をついて
「そのくらいだったら、そんなに急いで言わなくても良かったのに。」
「教え合うのも勉強の一つ。 赤点回避のために頑張ろう。」
その反応に2人は喜びを得ていた。
「サンキュー2人とも! よし、これで俺達は百人力だぜ!」
「大袈裟だなぁ。 それに勉強が出来るようになったからって、それがちゃんとテストに生かせられるかは2人次第だよ?」
「あの、私も教わってもらってもいいですか?」
「ん。 叶も一緒にやろう。 人数は多い方がいい。 和奏もそう思うよね?」
「え? いや、私は・・・」
「ここで断ってもいいこと無いよ。 折角だから一緒にやろうよ!」
そんな昼には誰も来ない校舎の階段の一角で行われた同盟はすぐに作られたのだった。
「なぁなぁ。 試験が終わったらさ、どっかに遊びに行かねぇか?」
「どうしたの急に?」
「いやよぉ。 もっとやる気が出るようなことが欲しいわけよ。 終わった後の褒美って言うかさ、なんか無いかなって思ってよ。」
「またスイーツバイキング行く?」
「それはなんか違うって言うかなぁ。」
「それなら遊園地は? それならいいんじゃない?」
「いいなぁ。 遊園地かぁ。 この辺りって言うか、なんか遊園地ってあったっけ?」
「確かこの学校からの、最寄り駅から反対側に、遊園地行きの、シャトルバスが、あるそうですよ?」
「それどんな場所?」
そう言いながらみんなでワイワイ会話しているのを遠くから見ている真面目と岬はただ聞いていたのだった。
「まだこれからだって言うのにね。」
「モチベーションは大事な事だと思う。 みんなで行くためにも、私達も頑張ろう。」
教えることは前提な2人は、それぞれの得意分野と苦手分野を分けながら、教える範囲を考えるのだった。
「ところでいつどこで勉強会を開きましょうか?」
「喫茶店だと迷惑になっちゃうよな?」
「でも図書館は流石に遠いよ? それに自習スペースもそこまでだし。」
そう、勉強会をするのは良かったのだが、丁度いい場所がないのだ。 ファミレスなどでは最近は勉強をすることを禁止にしているお店も多いし、隆起がお世話になっている漫画喫茶では6人も入る部屋など無い。 残るは図書館だが、近辺ではないためかなりの遠出にもなる。 流石の真面目も頭を捻った。
「その辺りはまた後日考える。 そろそろ教室に戻ろう。」
時刻を見ればお昼休みも終わり間近になっていたため、それによってみんな解散になった。
午後の授業も終わり、生徒会室に入ると、既に他の役員は作業をしているため、挨拶はあまり大声では言わないようにしようとした。
「すいません。 一ノ瀬庶務、入りました。」
「うむ。 すぐにでも作業に入ってもらえるか?」
「かしこまりました。」
そうして多忙の中に突っ込んだ真面目も、庶務としての仕事を始め、そして終わりまで同じ作業を繰り返すのだった。
「みんな、作業の進捗を伝えて解散しよう。 花井副会長。」
「次回の教師陣に提出する書類と、部活動関連のしおり、そして地域住民への理解を求めるパンフレットの下準備が整いました。」
「金田会計。」
「全体の経費を計算は粗方終わっております。 それ以外も滞りなく進んでいます。」
「水上書記。」
「体育祭のポスター制作と文化祭のイメージ図は完成しています。 なので今の書類の量を減らしていただけると」
「それは別に褒美ではないぞ。 最後に一ノ瀬庶務。」
「概ね仕分けすることは出来ました。明日には終われるかと。」
それを聞いた銘は、締め切っていたカーテンを開ける。 西日が眩しいと言うことで締め切っていたのだが、それを解放したと言うことは。
「ではこれにて本日の生徒会活動は終了とする。 みなよく頑張った。」
その一言で全員の肩の荷が降りて、それでも勉強や課題に取り組まなければいけないので、寄り道せずに帰る運びになる。
「部活動が再開したら、もっと忙しくなるんだろうなぁ。」
身体が持つかどうか分からなくなってきた真面目だったが、先の事を考えてもしょうがないと、家へと帰るのだった。




