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通学路での出会い

この物語のもう一人の主役登場

「今日からクラスが決まるのかぁ。」


 そんなことを呟きながら真面目は制服へと着替える。 ただ昨日までと違うのは、髪がそれなりに艶がでていることだ。


 昨日真面目がお風呂に入る際に壱与から女子の身体の洗い方について丁寧に教わったのと、髪が長くなったということでケアの仕方を教えて貰ったのだ。 「これからは肌や髪にも手入れが必要なのよ」と言われたので、これも女子の事を知る一歩かと思い、真面目は聞いていた。 髪だけは壱与にやって貰ってから説明を受けた。 今まで使っていたシャンプーとリンスが一緒に入っている奴は使えなくなった。 楽だったからというのもあるが、ロングヘアーの女子がワシャワシャと髪を洗うのもみっともないと言われた。 その辺りまで気にしないといけなくなるようだ。


 そんなことを思いながらリビングへと入ると既に朝御飯が用意されていた。 トーストにハムエッグ、ジャム入りのプレーンヨーグルトという洋風な朝御飯だ。 ジャムは母の自家製である。


「おはよう母さん。」

「おはよう。 寝苦しくなかった?」

「寝起きはそんなに。 髪を毎回解かさなきゃいけないのを除けばね。」


 真面目が面倒だと思った部分はそこだった。 いくら髪が艶やかになろうとも寝返りなどを打てば物凄い跳ねる。 今度寝る時に髪が乱れないようなアイテムでも探そうかと思った真面目であった。


「父さんはもう仕事?」

「そうよ。 店長さんは朝は早いのよ。 やること済ませれば早く帰っては来るけどね。 ああ、私ももうそろそろ出るから鍵の締め忘れだけ無いようにね。」

「はーい。」


 そうして真面目も朝食を食べ終えて、適当に洗い物を済ませたら鞄を持って家を出る。 鍵も締め忘れないように確認する。


「・・・よし。 改めて行きますか。」


 時刻は7時半を少し過ぎた辺り。 登校時刻は8時半までとなっているが、真面目はそれでも余裕をもっていきたいと思っていたので、この時間に登校することにした。 両親も似たり寄ったりな時間に仕事に行くので都合がいい、というのもある。


「昨日はあれだけ同じ様な学生がいたのになぁ。」


 入学式の事を思い出して腕を上に挙げて背伸びすると同時に、胸も一緒に上がって、誰かに見られていないか周りを見る。


「女子がこういうことを見る機会が無いのって、こういうことだったのかな?」


 女子の身体についてまた一歩前進(?)した真面目はそのまま通学路を歩いていき、そしてそのまま歩いていたら、「ドン」と右側から衝撃が走った。 何事かと右を向けば


 そこには鼻を打ったのか、顔を手で覆っている背の低い男子生徒がいた。 後ろ髪をヘアゴムで結び、猫目で小顔な所から少年のような風貌を醸し出していた。


「あ、ごめん。 ええっと、大丈夫? 鼻血とか出てない?」


 そう心配して声をかける。 怪我をさせてしまったのならこちらにも非はあると思い、真面目はハンカチを出す。


「大丈夫。 ちょっと痛めたけど、鼻血は出てない。 飛び込んだのはこちらだから、謝る事もない。」


 声は少々高めだが淡々とした口調で事を説明する。 それなら良かったとホッとする真面目を、その少年は「じっ」と見返してた。


「・・・? 何か?」

「貴女も同じ学校なんだ。 なら方向は同じだ。」

「・・・あ、もしかして州点高校の生徒だった? ってことは・・・」

「同じ生徒なら会う機会もある筈。 自己紹介をしよう。 ()浅倉 岬(あさくら みさき)。 今ので察したと思うけど、去年までは女子だった。」


 その事実を聞いて真面目は忘れかけていた。 そう真面目と同年代、強いて言うのならばそれに近い年齢の人間は皆()()()()()()()()()()()のだ。 つまりこの目の前の少年も、元は女子高生ということになる。


「行くなら一緒に行こう。 遅刻はしないだろうけど、教室が何処かだけは早く知りたい。」


 案外何事もなかったかのように歩き出す岬に、「僕が悪いのかな?」と何処か腑に落ちないでいる真面目も登校を再開するのだった。


「むぅ、結構早めに来たと思ったのに。」


 人だかりを見て口を尖らせる岬。 その理由は目の前の人だかり。 その先にあるのは名簿が書かれたホワイトボードに群がっているからだ。 そこにはクラスが貼られていて新しいクラスメイトを知るための場所となっている。


「どうする? もう少し後にする?」

「いや、ここまで来て待ってるなんて出来ない。 一緒に行く?」

「僕はいいや。 多分これが邪魔になるし。」


 そう言って真面目は自分の胸を持ち上げる。 男子だろうが女子だろうが、今回の場合は色んな意味で邪魔になるだろうと考えての言葉だ。 悪気はない。 岬はその様子を見ていたが気にはしていない様子だった。


「分かった。 待ってて。」


 そう言ってその小柄な身体と素早い動きで人混みを華麗に避けてホワイトボードに近付いていった。 そして確認した後に戻ってくると、困った表情の岬が帰ってきた。


「どうかした?」

「名前。」

「え?」

「貴女の名前を聞いていなかった事を忘れてた。 私のクラスが分かっても貴女が分からないんじゃ意味がない。」


 それを聞いて真面目も「そう言えば」という表情になる。 確かに会話もしたし名前も聞いたがそれは「岬」側の話だ。 真面目からの情報はほとんど話していなかった。 向こうから名前を言われたのでこっちも言った気になっていたのだ。


「僕は一ノ瀬。 一ノ瀬 真面目。」

「一ノ瀬、真面目 ・・・それなら私と同じクラスだ。 名前が私の次にあったから。」


 そう聞いて真面目もホッとした。 同じことを二度させるのは流石に気が引けたからだ。


 教室も分かったということで真面目と岬は昇降口へと向かい、靴から上履きに履き替えて、階段を登り真面目と岬は教室「1-B」へと入っていった。 まだそんなに集まっていないようで、教室にいる生徒はまばらだ。


「ふぅ。 なんとか混まれる前に入れた。」

「そうだね。 席は・・・あそこの前2つだね。」


 そうして2人は席に座る。 身長としても普通な感じだ。 男女が逆だという事を除けば。


「これから一年間よろしく。」

「うん。 よろしく。」

「最初に挨拶するのがまさか異性だとは思わなかった。」

「僕もそうさ。 中学の友人とかがいればいいけど。」

「初見じゃ気が付かれない。 名前で判断するしかない。」

「そっちも同じ学校の人とかいるの?」

「分からない。 そうだったとしても、別のクラスか、知らない人。」


 互いに淡々とした話口調ではあるものの、高校生になり初めての、しかも異性のともなれば多少たりとも気分は高揚する。 これもまた経験だろう。

 そしてゾロゾロと他のクラスメイトも入ってくる。 みんながみんな知らない顔なので、新鮮味は感じられる。 先生以外の全員が性別が入れ替わっているというところも含めて面白い所でもあるが。


「全員揃ったかな? ・・・よし。 この後始業式があるけれど、先に自己紹介をしよう。 1-B担任の古寺 俊一です。 一年間君達のクラスを見ることになりました。生徒達と一緒に仲良くしていきたいと思っております。」


 その自己紹介に拍手が沸き上がった。


「では始業式が始まるので、昨日行った体育館に集合すること。 それと昨日とは違い在校生も入るから、極力邪魔にならないように通路を使うこと。」


 そうしてみんな思い思いに動いて、体育館に到着する。 そこには確かにと言っていいほどに在校生がいた。 真面目はその中でも結構視線を感じるように思えた。


(うーん。 胸が大きいからなのか、悪目立ちしてるような・・・ それ以上の事で余計なちょっかいかけられないようにしないと。)


 学校内での面倒事は避けたい真面目なので、それ以上に目を付けられる様なことはしないことを誓ったのだった。


 そして新入生を一番前にして、その後ろから在校生が見ている形になるので新入生は気が気でならないだろう。 勿論真面目も例外ではない。


「新入生の方は昨日ぶり、在校生は終業式以来かな。 校長の永島 満です。 さて、在校生諸君に新たな後輩が出来るわけだけど、忘れてはいけないのが新入生はまだ性転換したてということ。 なので後輩に教えることがある時はその事も忘れないようにしていきましょう。 センシティブな内容は昨今より厳しい部分もあるので、そこで間違えたことをしないように、個人個人でやっていくことを意識して、新たな一年に取り組んでいきましょう。」


 そうして後はちょっとした諸注意をした所で始業式は終わり、皆が教室へと戻った。 すると入り口側の壁に、行く時には無かった時間割がそこに貼られていた。


「授業が本格的に始まるのは来週からになる。 そこで今週は新入生のみんなが学校生活を送りやすくするために、先生達でレクリエーションを考えておいた。 全員参加型のレクリエーションなので、気兼ね無くやってもらえるといい。新入生は始業式を終えれば後は帰宅となる。 それではみんな、また明日。」


 担任の古寺先生が立ち去ると、各々行動していった。 真面目も帰るために席を立つ。


「一ノ瀬君、って呼び方でいいのかな。 ちょっと、相談に乗ってもらえるかな。」


 まさか学校生活2日目で相談相手になるなんて、思ってもみなかった真面目だった。

二人での会話はまだまだ続きます

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