疲労には糖分を
次の日の月曜日は平日なので授業があるものの、流石にゴールデンウィークの真ん中ということで、授業の時間も午前中で終わりを迎えることになっている。 なのでお昼休みも存在しない。
「うー。 疲れた。 まぁ午前中だけの授業なら内容が凝縮されていても仕方無いよね。」
「本来は授業自体が無い筈だからね。 先生達も考えるの大変だったんじゃないかな?」
先生も自分達の休みを切り上げて来ていると考えたら、同情が出てしまう真面目と岬。 とはいえ今日の授業は終わりなのでこの後は帰るか部活になってくる。 その前の少しの時間だけは余裕がある。
「あ、そうだ。 前に近野さんが言っていた「スイーツバイキング」のお店の件って、どうするのかな?」
「ん、そう言えば聞いていなかった。 みんな忙しいだろうからって話題から逸らしてたけど。」
忘れていたわけではないのねと思いつつも、どうするのかと考えている時に、丁度部活に行く隆起と得流の姿があった。
「あ、2人とも。」
「よう一ノ瀬。 なんかあったんか?」
「丁度良かった。 得流、前に話してたスイーツのお店。 ゴールデンウィーク期間中に行きたいんだけど、何時にする?」
「あ、そう言えば決めてなかったね。 うーん、でもあたいも木山も運動部だから、午前中は部活があるんだよね。」
「僕も水泳部だから同じだよ。」
「あれ意外。 だから行くにしても午前中からは行けないかなぁ。」
「別に午前中から行かなくてもいい。 部活終わりとかなら行けそう?」
「まあそれなら行けるな。 一回帰ってからにはなるが。」
「じゃあそれで明日行こうよ。 あ、叶には私から言っておくね。」
「よろしく。」
そうして2人が行くのを見送った後
「僕も水泳部に行くよ。 また何かあったら連絡して。」
真面目も水泳部へと走っていくのだった。
「別に参加をする必要は無かったんだよ? 明日からの3日間も午前は部活があるんだから。」
「それで気後れするのは、なんだか忍びないと思いましてね。 ちゃんと参加をしておこうと思って。」
ストレッチをしながら目黒と話す真面目。 今部活をしているのは駿河、目黒、真面目を含めた5名のみだ。 他の部員は参加していない。
「今日は軽めに練習をするからな! 明日は近くの市民プールを借りて練習をするからな! 水着は忘れずに持ってくるんだぞ!」
そう言いながら駿河はスクワットをしている。 もちろんそれぞれでやっているのだが駿河のペースが明らかに速い。
そして部活動も終わり、家に帰ってきたタイミングで携帯を確認して、どうなったのかを見てみることにする。
『明日行くスイーツバイキングの店なんだけど、予約を入れておこうと思う。 込み合ってるだろうし。』
『それは確かにな。』
『時間はどうする?』
『部活終わりが3人いるからちょっと長めにしてもらえないかな?』
『なら2時間にでもする?』
それが多いのか少ないのか分からなかったので、真面目もその会話の流れに沿っていくことにした。
「僕はそれでも構わないよ。 部活終わりだから、時間は少し遅めでお願いしていいかな?」
とりあえず送信をしておいてから色々とリビングで過ごして夕飯を食べたあとに寝る前に確認をする。
『時間は2時にしたけど、それで大丈夫?』
『それなら家に帰ってから向かっても間に合うな。 俺はそれでいいぜ。』
『私も、大丈夫、です。』
『あたいも異論無し。』
「僕もそれでいいよ。」
『分かった。 既に予約はしたから明日集まるのを楽しみにしてる。 それじゃあおやすみ。』
その一言でみんながおやすみと送信したのちに真面目も今日を締めくくった。
「よっ、真面目。」
翌日部活へと行くために学校の正門へと来た真面目は、同じ理由で学校に来ていた隆起と遭遇した。
「やあ隆起君。 そっちの方はどう?」
「まだまだ肉体改造中よ。 先輩達に比べたら全然よ。」
「隆起君なにに入ったんだっけ?」
「サッカー部。」
そんなことを2人で話しながらそれぞれの部室へと足を踏み入れて、真面目は思った。
「あ、そう言えば市民プールに行くんだったっけ?」
「心配しなくても、私達が案内しないと行けないから、ここに集合することには代わり無いさ。」
真面目の独り言に返事が来たので振り返ると、目黒が部室の扉の前に立っていた。
「おはようございます目黒先輩。 もう別の場所で集合してますか?」
「いや、ここにいるのは君と私だけだよ。 まあそのうち来るだろうさ。」
そうして目黒の言葉から10分後に水泳部が全員集合した。
「よし! それではこれから市民プールへと出発する!因みに市民プールではあるので、他のお客様もいることも忘れないように練習をしていくぞ!」
正門で集まっていた駿河達は既に準備が整えられているので、すぐに向かうことになった。
そして学校から歩いて15分ほどにある市民プールへと到着する。
更衣室で自分や部員の着替える姿を見ていると、分かってはいてもドキドキが無くなっている。 これは自分が女になったからなのだろうかと思ったりしているのだが、今は水泳部として来ていることを思いながら着替えをした。
「さてまずは軽く準備運動を行い、それから水に慣れてもらうために、水の中を歩いてもらう。 そして慣れてきたものから泳げるものとそうでもないものとを分けて練習を行う。」
他の人の迷惑にならないようにと駿河は声を落として説明している。 一応水泳部には泳げる生徒と泳げない生徒両方いるわけだが、駿河はやる気があればどちらも入れていた。 なので1から教えることも考えていた。
「では泳げるものは私と一緒に隣のコースに行こうか。」
水泳部は2組に分かれてそれぞれで練習を行い、入ってから2時間半程で練習は終わりを向かえて、少しの休憩の後にそのままの流れで解散をしていったのだった。
「ただいま・・・ってどっちも仕事なんだった。」
家に誰もいないことを思い出しながら部屋に行って着替えを持ってきて、シャワーを浴びて、着替えをしてからそのまま家を出る事にした。
まだ時間はあるものの遅れていくよりもいいと考えてお店に向けて歩いていた。
「場所としては家から歩くとそれなりにあるっぽいから、みんな時間までに間に合うか分からないんだよなぁ。」
そんなことを言いながら歩いていると、急にお腹が鳴り始めた。 昼を食べていないのでなおのことお腹が空いてきたのだ。
そしてスイーツバイキングが行われていると言うお店の前に到着する。 まだ誰も来ていないことを確認した後にお店を見てみる。
そこには男女比率が大体1:1といった具合に人が並んではいるものの、その大半が真面目と同じような高校生が多く見られた。
「みんなやっぱり考えることは同じなんだなぁ。」
「・・・あ、一ノ瀬さん。」
最初に着いたのは某配管工のような格好をしている叶だった。
「やあ豊富さん。 急にごめんね、こんなことに呼ばせちゃって。」
「いえ、私も、楽しみにしていたので、大丈夫ですよ。」
「おーい、待たせたなー!」
そして会話をしている内にみんなが集合することになったので、列の中に並ぶことにしたのだった。