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何者なのですか?

 ついてきてほしいと言われてから真面目は、目黒の後ろにいるだけであったが、周りの雰囲気が、真面目のような一般女子高生が行くような場所ではないのは気が付いていた。


「目黒先輩に・・・僕はこれからどこに連れていかれるんですか?」


 真面目は心の奥底では不安になっていた。 男子高校生に連れられる女子高生という構図にはなっているものの、真面目があまりにも挙動不審なため、余計に目立ってしまっているようにも見えた。


「さぁ、着いたよ。」


 そして目黒が真面目を連れてきたのは


「・・・お寿司屋さん・・・ですよね? でもこの店って・・・」

「凄いものだろう? 周りの雰囲気がそれなりの値段のする住宅街なのにも関わらず、こう言ったチェーン店が存在するなんてさ。」


 そう、連れてこられたのは真面目もたまにお世話になる回転寿司だった。 周りがあまりにも高級な住宅になっているので、てっきり真面目はお高いお店に連れていかれるのかと思ったのだが、見たことのあるお店で少し拍子抜けになっていた。


「というかこう言う場所ならわざわざここまで連れて来なくても・・・」

「まぁ理由としては私の家が近いということと、君がどう驚くかを見てみたかったからなんだよね。」


 意外な2つの事実に戸惑いながらも、店に入る目黒の後についていく。


「いらっしゃいませ。 二名様ですか?」

「ええ。」

「それではこちらの番号札をお持ちになってお待ちください。」


 店員から番号札を渡されて、真面目と目黒は待合室に座る。 よくよく見てみると、服装が一段階ほど高そうな家族連れが多く見えた。


「先輩。 自分凄い浮いてるような感じがするんですけど。」

「堂々としていればバレないさ。」


 何に対してバレないのかはさておいて、確かに挙動不審過ぎたのは良くないと思ったので真面目もひたすらに待つことにした。


「二名でお待ちのお客様。 こちらまで案内致します。」


 順番が来たので呼ばれて座ったのはカウンタータイプの席だった。


「それでは失礼いたします。」


 そう言って店員は次のお客様のために離れていった。


「さて、ここからは遠慮しないで食べてくれたまえ。」

「いや、でも・・・」

「心配しなくてもこれを食べたからと言って君の尊厳を無視したりはしないよ。」


 そう言うことではないと言いたかった真面目ではあるが、恐らくこのまま話を続けても意味はないと感じて、目の前の流れてくるネタを適当に取った。


「あ、あがりいりますか?」

「いや、自分で入れれるよ。 こちらは気にしなくていいよ。」


 そう言われてしまったので仕方なく手に取ったマグロを食べる。 値段の割にこの美味しさは回転寿司の良いところだろう。


「あ、美味しいですね。」

「うん。 この値段でこのクオリティを出せるのは素晴らしいね。」


 そう言っている目黒は既に4皿ほど食べていた。


「目黒先輩って結構食べられる方ですか?」

「意外だったかい?」

「ええ、まあ。」


 目黒の事を知ろうとすればするほど余計に謎が増えてしまうのだった。


「そういえばこんなことを聞くのも失礼かもしれないのだけれど。」

「なんですか?」

「性別が変わる君の姿はどうだったのかな?」


 自分の事を聞かれるのは何気に初めてだったかもしれない。 岬ですらそんなことを聞いてきたことはなかった。


「そんなに変わった姿ではないですよ? 強いて言うなら暗めだと、思うんですよね。」


 真面目は〆さばを食べながらそう説明をした。


「暗め、か。 今の君はそんな風には見えないけれどね。」

「そうですね。 今回の事で変わってみようと思ったのは事実ですから。」

「変わろうと思った、か。 私も今でこそ駿河にあれこれと言っているが、彼がいなければ今の私はいなかったことだろう。」

「そんなにツラい境遇だったのですか?」

「ツラいもなにも、私の事を見てくれるような人がいないのかと言うくらいに無視されまくったものだよ。」


 パクパクと軍艦を食べる目黒の姿を見て、そんないじめのような事があったのだろうかと考える。 性別が変わったくらいでそのようなことが起きるのかと思ったが、無いとも言い切れないと思い返した。


「それは部活が入ってからでも最初はそうだったのだがね。 そんな私を見てくれたのが駿河だったって訳さ。」

「そんな裏話があったんですね。」

「だから私は彼の事を尊敬しているし、彼も私が言うことには逆らわないんだ。」

「なんというか、美しい関係図なんですね。」

「彼にとって身分差など関係無いのだろうね。」

「・・・本当に目黒先輩って何者なのですか?」


 隣の先輩の言動や行動が本当に分からなくなってくる真面目であった。


「・・・なんかすみません。 全部お金を出させてしまって。」


 色々と考えないようにしながら食べていたせいか25皿を軽く越えてデザートまで食べてしまった。 さすがに反省しなければと思ったのだが、目黒はそんなのを気にしていない様子だった。


「ははは。 私の方が食べていたから気にしなくても問題はないよ。」


 そう言っている目黒は真面目の倍近く食べていたので割とお腹には入っている筈なのだがピンピンしていた。


「それじゃあ今日はありがとうね。 君の家の方ならあちら側だね。」


 そう言って目黒は完全に住宅街方面へと帰っていった。


「僕はとんでもない人と知り合いになったのかな?」


 そんな事を思いながら真面目は帰ることにしたのだった。



「やっぱりなんか落ち着かない・・・」


 そういって真面目がやってきたのはいつものショッピングモール。 あまりにもかけ離れた感覚のせいか庶民的な何かに触れたかったのだ。 そして同じような回転寿司のお店を見て肩を竦める。


「いや、分かってはいるんだよ。 お店自体はチェーン店の店だって。 でもなんか場所がなぁ・・・というかよくよく考えればスポーツドリンクを箱買い出来るほどの財力があるからああ行った場所でも困らないんだろうなぁ。」


 うーんと頭をひねる真面目。 庶民が行かない場所へ自ら足を突っ込んだことには変わり無いのだが、やはりというか空気感だけは苦手意識があったのだ。


「本当に余計な事をしないように頑張らないとなぁ。」


 そうして店の前を後にして、本屋でなにか新しい出会いがないか探しに行くと不意に見慣れた男子の姿を見つけることが出来た。


「豊富さんじゃないか。 ここで買い物?」

「ふぇ!? あ、い、一ノ瀬さん、でしたか。」

「そんなに怯えられるとちょっとショックなんだけどなぁ。」


 いきなり声をかけたことには反省はしているものの、露骨にビクビクされると少しだけ傷つく真面目である。 しかし叶も見た目が高校生に見えない程背が低いので大人に近い真面目を見て驚いてしまうのも無理はないというものだ。


 そんな中で真面目は叶の持っている本に目が止まった。


「豊富さん、編み物するの?」

「あ、はい。 実は私の家はクリーニング屋さんなので、こう言った仕立てなどもやっているんです。」

「へぇ。 豊富さんって兄弟はいるの?」

「弟と妹が1人ずつ。」

「そりゃこれからが大変だ。」


 苦笑はしているものの恐らく真面目位の歳になった時に、かなり苦労しそうだと思った。


「でもレトロ好きらしい趣味なんじゃないかな?」

「そ、そうでしょうか?」

「僕のさっきまでの状態を考えたら尚更ね。 豊富さんはいいお母さんになりそうだね。」

「お、お母さん・・・! ・・・ふしゅぅ・・・」

「え? あれ!? 豊富さん!?」


 そんな言葉を投げ掛けたら何故か気絶しかけたのでそっと背中を支えて倒れること無く立たせることが出来た。


「だ、大丈夫?」

「す、すみません。 ちょっと、余計な事を考えてしまって・・・」


 体調が悪くなってはいけないのでそのまま叶とは別れて、真面目も今度こそ家に帰ることにしたのだった。

目黒の本当の姿を目の当たりにする日は果たして来るのでしょうか?

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