唐突・・・でもない事象
それは、ある教師の一言で教室の空気をガラリと変えた。
「それでは次の授業では今回までの内容の小テストを行います。 小テストだからといって油断しないように。 本日の授業はここまで。」
「起立、礼。」
そして教師が出ていった後に訪れたのはちょっとのざわめきだった。
「うわぁやべぇ。 内容覚えてる?」
「小テストでも影響出るのかなぁ?」
クラスメイトがざわめき始めているが、それもほんの一部であるため、あまり気にならない。 真面目と岬も例に漏れず、気にならないうちに入ってる。
「小テスト位なら授業を受けていれば怖くないんじゃない?」
「油断できない。 現国だから読み込んでもどの辺りを出題してくるか分からない。」
岬の返答に真面目は首を傾げていた。
(そう言うものかなぁ?)
真面目の中での疑問は無くはなかった。
そして授業も終わり、水泳部の方に向かおうとしていた真面目の携帯からMILEの通知が鳴る。 差出人は隆起からだった。
『助けてくれ真面目! 俺小テストで赤点取るかも!』
そんな悲痛にも聞こえる内容だった。 真面目は念のため確認をする。
『落ち着いて。 教科はなに?』
真面目は違う教科だった場合勉強を二重で覚えないといけなくなる。 それだけは正直避けておきたかった。 そして部室につく前に返信が返ってきた。
『現国だよ。 あのすげぇキッとした先生の。』
「あ、先生は同じなんだ。」
高校によってはクラスによって教師が違うとネットで見たことがあったような気がしたので、同じ先生ならば内容も同じかもしれないと真面目は思った。
だがしかし部活の事を考えるとこの後集まって勉強会なんて事は難しいだろう。 ましてやテスト期間ではなく小テストだというのならば尚更だ。
そんなわけで真面目は返信内容をやや考えた後でこう文面を綴った。
『同じ人の教科なら教えられるよ。 だけど部活があるからやるなら夜だからね。』
教えないで補習させるのも後味が悪いと思ったので、1つの貸しとして勉強を教えることにした。 それが友人としての礼儀だろうと思ったからだ。
『サンキュー我が友よ! それじゃあ部活行ってくるから、また夜にな!』
そう言って会話が途切れたので、真面目も部活に行くことにした。
「ただいまぁ・・・」
「お帰り。 遅かったわね?」
「あー。 今日から部活が始まったから参加してきたんだよ。」
「あら、そうなのね。 まずはお風呂に入っちゃいなさい。」
「はいよー。」
そうしてお風呂に入り、夕飯を食べて、バラエティー番組を適当に見ていると、携帯が鳴る。
「あ、隆起君からかな? ・・・ん?」
「どうかしたの?」
「いや、隆起君かと思ったら浅倉さんからだった。」
そしてMILEを開いてみると次のような内容が書かれていた。
『一ノ瀬君。 今現国の勉強してる?』
「なんだろう? 確かにまだやってないけど『これからやろうと思ってたけど、どうしたの急に?』っと、送信。」
そうして返信をする真面目、その後ろで壱与がやり取りを見ていた。
「あんた岬ちゃんに勉強の管理してるの?」
「違うよ。 確かに僕はまだ勉強はしてなかったけど、そんな管理して貰おうとは思ってないから。」
人権侵害されそうだったので、ちゃんと否定をする真面目。 いくら友人だからといって、自分が勉強できないならともかく、他人に管理されるのは違うだろうと思った。
そしてMILEから返ってきた答えは
『勉強を手伝ってほしい。』
とのことだった。
「え? 浅倉さんが?」
「岬ちゃん勉強できないの?」
「ちょっと待って 『今日言っていた小テストの話? でも浅倉さんは教えなくても出来るよね?』こう返してっと・・・」
今の話の流れだと岬が勉強を教えてほしいという形になるのだが、岬が頭が悪いと思っていないので、何故自分に勉強を教えて教えてほしいのかが分からなかった。
そしてMILEが返ってくる。
『ごめん。 教えてほしいのは私じゃないんだ。 実は得流がすがるように私に頼んできたんだけど、私は教えるのが下手だから一ノ瀬君に力を借りたいなって思ってMILEをしたんだ。』
「ああ、そう言うことね。 そう言うことなら・・・」
そう言いながら真面目は立ってリビングから出ようとする。
「あら、部屋に行くの?」
「うん。 ちょっとした勉強会かな。 今日は。」
そして自室に戻った真面目は自分も小テスト対策に教科書とノートを出す。 そしてMILEの「グループ作成」を選んで、その中で「浅倉さん」と「隆起君」の文字をタップして招待を出しておく。 そして岬に再度連絡を入れる。
『今グループの招待が届いたと思うけど、それで近野さんと、良かったら豊富さんも呼んであげて。 僕からじゃそれは招待できないから』
そうした連絡を入れた後に現国の教科書をパラパラと読んでいく。 そうこうしているうちに通知の回数が増えた。 どうやらグループ内で会話が始まったようだ。
『真面目~とりあえず来たぞ~』
『私も得流と叶を招待しました。 そろそろ来るかと。』
『おーい、届いてるー? なんか呼ばれたから入ったけれど。』
『こ、こんばんは、皆さん。』
みんなが集まったのを確認した後に真面目がMILEでメッセージを送る。
『集まってくれてありがとう。 どうやら現国の問題で教えてほしいって言ってた人がいるから、個別で教えるよりもまとめた方がいいなって思ってこの場を設けさせて貰ったんだ。 これから迷惑じゃなければ通話状態にするけれど。』
そう返すとすぐに通話モードが現れる。
『おーっす。 聞こえてるか?』
『ちゃんと届いてるよー。』
『こ、こんばんは、です。』
「ふぅ。 なんとかみんな聞こえるようにはなってるみたいだね。」
『それじゃあ始めようか。 現国の小テスト対策。』
こうして始まった現国の勉強なのだが、危惧していたのは隆起と得流だけで、他の3人は特に大きな問題は無かった。 なので質問をされたら返す方式で勉強が進んでいき、結果として「これで大丈夫だろ」と思うくらいには勉強をしていたらいつの間にか1時間以上の時間を費やしていた。
『おっと、もうこんな時間か。 俺部活終わりで疲れてるからここらで切り上げたいぜ。』
『そうだね。 ここまでやれば十分じゃない?』
「確かにね。 小テストならこれだけでも大丈夫だと思うよ。」
『ありがとうみんな。 それじゃああたいはここで切るよ。』
『私もここで失礼します。』
「それじゃあみんなおやすみ。」
そうして通話を終えて、真面目はまだ少しの間現国の勉強をしていた。
そしてやり終えた真面目はベッドに寝転がったが、その時に携帯が鳴る。 誰だろうと真面目が確認すると岬からだった。 内容は
『今日はありがとう。 お陰で得流にも勉強を教えられたから助かった。 それじゃあまた明日。』
その文面を見た後に真面目は布団に潜り眠りについたのだった。




