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1:3という現状

 歩くこと20分程。 大きなショッピングモールへとたどり着いた4人は、どこから回るかで色々と話し合っていた。


「とりあえずどこから行ってみる?」

「僕買い物を任されてるんだけど。」

「それは最後の方がいい。 アクセサリーグッズとかはどう?」

「わ、私は、CDショップに、行きたい、です。」


 行く場所は決まったようなので、エスカレーターへと向かう。 3階建ての構造でそこまで広いというものではないものの最低限のお店は揃っている。 なので1日いても飽きないというのがこのショッピングモールのコンセプトである。


 まずは2階にあるCDショップへと足を運んだ。 店内には最新のJ-POPが流れていて、スマホで音楽が聴ける時代にも関わらず多くのCDが存在していた。


 CDショップにつくと早速と言わんばかりに叶は奥へと進んでいき、80、90年代の曲のCDを眺めていた。


「なんだか意外だね。 豊富さんがCDで聴くなんて。」

「叶はああ見えてレトロ好き。 部屋には時計とかもレトロな感じの物が置かれてる。」


 そう見ていると叶がいくつかのCDを手にとってレジで購入をしていた。 その表情は暗めだった彼女の性格とは思えない程に喜んでいた。 そんな彼女を眺めていた3人の視線を感じて叶は「はっ」として、顔を隠した。


「恥ずかしがる必要はない。 趣味の一つや二つあってもおかしくない。」

「そうそう。 今時珍しく無いだろ? レトロ好きな若者なんて。」


 そんなやり取りをしながら次はアクセサリーグッズのお店に寄った。 ネックレスにイヤリング、ミサンガも売られていた。


「やっぱり女子だとアクセサリーも考えたりするものなの?」

「着飾るなら確かにそうだね。 見た目も良くなるし。」

「まあでもイヤリングとかはあんまりやりたいとは思わないがな。 綺麗でいいんだろうけど、耳に穴空けるのはなぁ。」

「最近は挟むのもあるから、開ける心配はない。」


 こう見ていてもあまりピンと来ない真面目。 というのも真面目自体がそこまでお洒落に興味がないのでやはり考えられないのだ。 これがお洒落に気を遣う理由が出来れば少しは変わるのだろうかと思ったりもしている。


「でもそこに資金はなかなか出来ないよね。」

「そうなんだよなぁ。 学生のあたい達が手を伸ばしにくい値段だもんなぁ。」


 値札を見てみると確かに普通では手が出しにくい値段であったため、そのままその場を後にした。


「次はどうする?」

「本屋に行きませんか? なにか新しいものが売られているかも知れないですし。」


 岬の意見に賛同して本屋に立ち寄る。 まず入り口で目に入ったのは「男尊女卑の過去」や「性別の意識の変え方」等を書いた本ばかりだった。 時代は変わっても性別問題はあまり変化が無いのは、未だ理解の薄い政治家がいることが原因だろうか。


「なにか見るものあった?」

「そうですね。 こちらは特にと言った具合です。」

「こっちもだぁ。 なんかおんなじ話の本ばっかで面白く無いぜ。」

「一ノ瀬君はどうでしたか?」

「僕もそこまでは。 最近買ったから特に無いとも言えるけどね。」


 そして本屋を後にして、残るは真面目が頼まれた買い物を済ませれば今回はお仕舞いだ。 その場所に向かうために歩いているとふと何処からか視線を感じる真面目。 キョロキョロと辺りを見回した。


「一ノ瀬君、どうかした?」

「んー。 誰かに見られたような気がして・・・」

「気のせいじゃないか? 人もこれだけ多くなってきたし。」


 かなぁと首を傾げた真面目であったが、それが気のせいでないことはすぐに分かることになった。


 しばらく前を歩いていた真面目だったが、不意に後ろから声が聞こえなくなったので振り返るとそこには二人組の女子に通せんぼをされている岬達の姿があった。


「へいへい。 これから俺達と遊ばない?」

「君たち高校何処?」


 高校と言うことは彼女ら、もとい彼らも高校生。 だからこそ声をかけたのだろう。 そんなことが分かっていたからこそ、真面目は岬達の前に立った。


「すみません。 彼らが困っているではないですか。 声をかけるにももう少し考えては貰えないでしょうか?」

「あん?」


 当然真面目が割って入ってきた為不機嫌になる二人。 立場としては逆にはなるのだが、性別も逆転しているので、やり取りとしては間違ってはいない。


「なんだよお前。」

「彼らの友達ですけど?」

「・・・けっ。 乳がでかいからって調子にのってんのか? 端から見たらビッチだぜ? お前。」

「知らないねそんなこと。 それよりもそっちはそっちで言葉遣いに気を付けたらどう? お淑やかさが足りないんじゃない?」

「・・・あんだとこの(アマ)ぁ!」


 道を塞いでいる女子の1人が真面目の胸倉を掴む。 背丈的には真面目の方が大きいので、胸倉を掴んだところでほとんど上がらなかった。


「こんなところで喧嘩でもする? 明らかに君らの方が悪者になるけど?」

「はっ。 別に殴り合いをしようだなんて思っちゃいないさ。 けどよ、別に殴り合いだけじゃ無いんだぜ? お前がこれからなにをされようが後ろを守り抜く余裕があればいいなぁ?」


 胸倉を掴んでいた女子はその手を離すと、真面目の服の裾を掴もうとした。 だがそれは得流が真面目を自分側に寄せたことにより難を逃れた。


「ちょっと、あたい達の友人を脱がそうとするなんて信じらんない! それが女子に対してする事?」

「は? そいつは元々は男・・・」

「今は身体は女子です。 それとも何ですか? 私達が訴えれば完全に悪者になる。 まあこれだけ公衆の面前でやってしまえば、どう思われるか分からない程間抜けじゃないでしょ?」


 ここはショッピングモールであり、時間を考えれば人が増えてくる時間だ。 そんな状態で真面目になにかをすれば、言い訳できなくなるのは明らかだった。


「・・・ちっ。 行こうぜ。」


 そう言って二人は居心地が悪そうに去っていった。 そうして去ったのを確認した後に改めて食品売場に歩いていく。


「・・・はぁ。 これで良かったのかな。」

「トラブルは避けるべき。 あれでいい。」

「でも、助けてくださって、ありがとうございました。 私なにも出来なかったです。」

「それは普通だと思うよ。 叶が悪いんじゃないって。」


 そんな話をしつつ食品売場に着いてそのままの流れで真面目はメモ用紙を取り出して買うものを確認しつつ買い物を始めた。


「それにしても性別が入れ換わってもああいうのはいるのね。」

「そもそも僕1人に女子3人って絵面があんまり良くなかったのかもね。」

「それは関係無いんじゃないかな?」


 そうして真面目はテキパキとメモ用紙に書かれている物を籠の中に入れてレジへと通した。 そしてレジで会計を済ませた後に、近くの屋台に足を運んだ。


「みんな味はなににする?」

「え?」

「いや、みんなには迷惑かけたからさ。 それのお詫び。」

「そんなこと気にしないでよ。 あっちが悪いんだから。」

「まぁ僕の気持ち次第だから、受け取ってよ。」


 そう言われたので岬達は仕方なく各々が好きな味のアイスを選んだ。


「それじゃあ僕はこれで帰るよ。 買い物も済んだしね。」

「1人で大丈夫ですか?」

「うん。 それじゃあまた学校で。」


 そう言って真面目は3人を置いて、ショッピングモールを後にした。


「ただいま。」

「お帰り真面目。 買ってきてくれた?」

「うん。 はい。」


 そう言って真面目は買ってきた物を机に置くと、そのままリビングを後にしようとする。


「あら? これから夕飯にするけれど?」

「ごめん。 ちょっと部屋にいる。 時間になったらリビングに来るから。」


 そう言って真面目は身体が重たくなったと感じつつも部屋に戻る事にしたのだった。

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