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新たな交流

「ただいま。」


 日も落ちかける夕暮れ時。 真面目は家に帰って部屋に戻り、制服から部屋着へと着替え直してから、リビングへと入る。


「お帰り真面目。 ご飯出来てるわよ。」


 壱与は帰ってきた真面目を見て、テーブルへと促す。 そして全員が席に着いたところで食事が始まり、その間に真面目が話を切り出す。


「母さん。 明日家に友達を呼んでも大丈夫?」


 真面目は明日が壱与の仕事休みだと言う事を知っているので、家にいるであろう壱与に質問を投げた。


「明日? 別に構わないわよ? 困ることもないし。」

「そう。 分かった。」


 そう言って真面目は食事を再開する。 しかし壱与は口角を上げる。


「その友達って、もしかして岬ちゃんのこと?」


 その質問に真面目は食事を止める。 隠し立てするわけではなかったものの、やはり異性をつれてくるということに、思うところがあったからだ。


「おや、もう友達が出来ていたのかい?」

「そうなんですよ進さん。 しかも異性の。」

「ほう。 この時代異性と友好を築くのは難しいと聞くが、案外そうでもないのかもしれないな。」

「・・・別に対した事じゃないよ。 それに多分話があって呼んだだけだと思うし。」


 そう思う他ない。 いや、そう思ったほうが楽なのだ。 真面目にとっては異性を家に入れるというのは初めての事であるゆえに。


「余計なことを聞かれる前に部屋に戻ってこれて良かった。」


 あのまま会話を続けていたらボロを出していたかもしれないと考えると、丁度良かったのかもしれない。 そして予定は聞けたので岬にMINEにて連絡をする。


『こんばんは。 帰りに言ってた件。 とりあえずは大丈夫だってさ。』


 そうメールを送り、待つこと数分。 携帯が鳴ったので確認する。


『連絡ありがとう。 それじゃあ10時にそっちに行くね。』

『家の場所知らないよね? 来るのは構わないから場所を教えるよ。』


 そう言ってメールを送った後に住所を書いたメールを送る。 そしてまた数分後に携帯が鳴る。


『一ノ瀬君なら教えてくれると思ってた。 それじゃあまた明日。』

『また明日。』


「変な信頼を置かないでよね・・・」


 それが嬉しいやら呆れるやらで、そのまま就寝時間になったので眠りについたのだった。


 翌朝。 真面目はすぐに起きて身体を洗う。 今日は岬が来ると言うことで、多少念を入れて手入れをする。 家にいるだけとは言えふしだらな格好でいるわけにもいかないからだ。


 そして服も着替え直してリビングへと入る。


「おはよう真面目。 なんだか随分と気合いが入ってるみたいだけど?」


 朝の挨拶を終えて開口一番でそう言った壱与はニヤニヤと笑っていた。 とはいえそれも仕方のないこと。 自分の息子(娘)が異性を家に連れ込むのだから、気になってしまうのは親としても当然とも言えるだろう。


「別に母さんが思ってるようなことは起きないと思うよ?」

「分かってるわよ。 むしろ本当にそんなことにならないことを祈るばかりよ。」

「じゃあそのにやけ面はなにさ。」


 壱与の事を信用していないわけではないが、やはり気になる真面目であった。


 そして朝御飯を食べ終えて一度部屋に戻り、改めて自分の部屋を見渡す。


「そこまで汚れてはないだろうけど、掃除くらいはやっておこう。」


 そう言って真面目は掃除用の粘着のコロコロを取り出してカーペットを掃除する。 そして自分の服や本棚もある程度整理整頓する。 特に見られて困る物も部屋に置いてあるわけでも無いので、簡素に掃除した後に消臭剤を部屋に撒いて一度落ち着く。


「それにしてもなにか相談することもあるのかな?」


 ふと真面目は落ち着いた所でそんなことを思い始める。 しかもわざわざ家に来訪するほどの理由とは? そんなことが頭をよぎってしょうがない。

 そんなことを考えている内に岬が来る時間に迫っていた。 部屋にいても分からないだろうということで、玄関口で岬を待つことにした。 岬も時間よりも早めに行動をするのは真面目も知っているので、おそらく10分くらいは早めに来ることだろう。 そう思いながら待っていた。


「なに一人でソワソワしてるのよ。 来るのが分かってるなら待ってなさいよ。」


 リビングからその様子が見えたのか壱与が真面目に声をかける。 確かにこんなことをしてもしょうがないことは真面目も分かっていること。 分かってはいても何故か落ち着かないのだ。


「ピンポーン」


 インターホンが鳴り、扉の小窓から覗くとそこには私服姿の岬がいた。 真面目はすぐに扉を開ける。


「やあ一ノ瀬君。」


 扉を開けた先にいた岬はキャラクターがプリントされたTシャツにパーカー、茶色の短パンという少年のような格好をしていた。


「いらっしゃい浅倉さん。 ここまで来るまで結構歩いた・・・」

「へぇ岬の友達って言うからどんな人かと思ったけど、君だったのかぁ。」


 家に入れようとした真面目の耳に岬とはまた別の声が後ろから聞こえた。 すると岬の後ろから左側に現れたのは赤髪の芝生頭の少年。 服もかなりスポーティーな格好をしていた。


「よっ、オリエンテーションで会って以来だな。」


 そう、真面目は彼の姿を知っていた。 オリエンテーションで隆起と共に一緒に話の主導をしてくれた生徒だったからだ。


「得流、知っていたの?」

「岬こそ彼と友達になってるなんて知らなかったよ。 あ、あたいは近野 得流(こんの える)。 実は岬とは中学からの知り合いなんだ。 これからよろしくね。」

「あ、うん。 一ノ瀬 真面目。 こちらこそよろしく。」

「ふふん。 なんだか一ノ瀬とはすぐに仲良くなれそう。 ほら、叶。 一ノ瀬は怖くないよ。 顔出して出して。」


 そう言って岬の背中の右側から現れたのは、藍色の髪で片目が隠れる前髪、背は岬と同じくらいで困り顔が特徴こ男子だった。 人見知りなのか緊張しているのか、真面目とはまだ顔合わせが出来ていない。


「叶。 そんなに私の後ろに隠れられては、話しづらいですよ。 挨拶をするのであれば自分からいかないと。」

「無理して自己紹介してもらわなくても・・・」

「え・・・っと・・・ と、豊富 叶(とよとみ かなえ)、です。 初めまして・・・一ノ瀬君。」


 ぎこちない挨拶ではあるものの、向こうも自分の事を伝えたい想いは伝わってきたので、真面目はなにも言わないことにした。


「初めまして豊富さん。 一ノ瀬 真面目です。 異性と会話するのは、どうしても緊張しちゃうよね。」


 そう優しく声をかける真面目に、叶もほんの少しだけ安堵したように見えた。


「というか教えてくれなかったのってこれが理由? 人が増えるなんて思わなかったんだけど?」

「サプライズってものだよ。 お互いに分からない方が気を遣わないかなって思って。」

「それだとむしろ不謹慎さしか伝わらないと思うんだけど?」


 知り合った仲ならばともかく、まだ2週間程しか経っていないのに、そんなことをされても困ってしまうだろう。


「真面目? お客さん来たの? ・・・あら、いらっしゃい岬ちゃん。」

「こんにちは壱与さん。 本日はお邪魔いたします。」

「どうぞ上がって上がって。 後ろの2人も一緒かしら?」

「初めましてです!」

「は、初めまして・・・」

「あらあら。 何にもないけどゆっくりしていってね。」


 そう言って壱与はリビングへと引っ込んでいった。


「ごめんね、母さんが騒がしくて。」

「いいじゃない。 元気なのは良いことじゃん。」


 真面目が自虐気味に話すと、得流が良いことと言ってくれたことに、肩を竦めるしか無かった。


「とりあえず上がって。 僕の部屋に行こうか。」


 そう言って4人は家に上がり、真面目の部屋に行くために、階段を登っていったのだった。

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