ようこそこちらの世界へ
本日は入学式。 その正門に立っているのは1人の女子高生。 見慣れない景色。 着なれない制服を着て周りの様子を伺っているように見える。
彼女も入学式前に性転換を迎えた1人。 とはいえ周りの人間が自分と同じ新入生なのか在校生なのか判断が出来ない。 尚且つ彼女は前の中学校の友人達と離れてこの高校に入学した人物なのだ。 不安が募るばかりなのは明白だ。
「し、知らない人達ばかりだ・・・けれど、自分で選んだ高校だし・・・ま、まずはここまで来れたんだから、後は学校の門をくぐるだけ・・・」
そう自分に言い聞かせながら一歩二歩と進んでいき、三歩目で自分で自分の足を引っ掛けてしまう。
「わっわわっ!」
倒れかけた自分の体を何とかしようと腕を前に差し出し、そして何かに触れたのでそれを掴んで倒れないように力を込めた。
倒れなかったことにホッとすると同時に、掴んでいたものがなんなのかを確認するために見上げる。
そこにあったのは自分と同じ制服の形。 それを掴んでおり更に上を見るとそこにはそんな彼女を振り返る人物の姿があった。 その事実に気が付き青ざめて、掴んでいた手を離して距離を取る。
「ご、ごごごご、ごめんなさい! 勝手に掴んでしまって・・・」
元々内気だった上、他者に迷惑をかけてしまった事への自己嫌悪が交じり、らしくもなく声を荒ぶらせる。 何を言われるか、どんな報復が待ち受けているのか考えたくも無いのだろう。
「ああ、そんなに謝らなくてもいいよ。 そっちこそなんともない?」
だがその掴まれた人物はそんな彼女の事を逆に心配するように声をかけてくる。 一歩間違えれば自分も倒されかけていたのに、だ。
「え・・・えっと・・・はい・・・大丈夫・・・です・・・」
怒られるかなにか小言を言われると思っていた彼女は逆に拍子抜けを食らってしまう。
「一ノ瀬君。 どうかした?」
そんなやり取りをしている間にももう1人現れる。 自分よりも小柄な男子生徒で、無愛想かのような表情をしていた。
「なんでもないよ浅倉さん。 ちょっと転びそうになっていたのを助けただけだから。」
「急に来なくなったからどうしたのかと思った。 なんともないならそれでいい。」
浅倉と呼ばれた男子は一ノ瀬と呼ばれた女子からそんな説明を受けて納得をしていた。
「見たところ新入生の子かな? 身体が変わって色々と大変だったでしょ。 転びそうになっていたのもその影響かな?」
「人によっては歩幅とかも変わるって言うし、最初のうちは仕方ない。」
自分の失態を何事もなかったかのように接する2人を見て、こんな自分にも手を差しのべてくれるのかと感じ、これが先輩なのかと同時に思った。
「そう言えば入学式の準備は大丈夫なの? 生徒会の仕事でしょ?」
「ほとんどは先生方がやってくれていたから僕達の出番はないよ。 とりあえず教室に行こう。」
そう改めて歩きだそうとした時に、再び手を差し伸べられる。
「初めまして。 そしてようこそ。 性転換した思春期時代へ。」
ここまでのご愛読ありがとうございました。
「思春期時代の性転換生活」完結とさせていただきます。
自分の小説は基本的に見たものに影響されやすいのですが、今回は特にそれがモロに出た結果
時が経てば経つ程話の流れを掴みにくくなり、最終的に着地点が不安低になりがちです。
中性的な後輩を作ろうとか最終回は成人になった時にしようとか色々と考えることは出来るのですが、そこに辿り着くまでにリアルの環境が変化しすぎて、結果中途半端も良いところとなってしまうんですね。
最後の最後で愚痴を溢してしまいましたが、こんな人間が作っている小説だと思っていただければと思います。
今まで出してきた既存小説もどうか読んでいただけると幸いです。
それではまた新作を出した時にお会いいたしましょう。 ありがとうございました




