表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/230

忙しい年末 4

 セルナとのお出掛けを終えた次の日。 真面目は珍しく朝に遅く起きていた。


「・・・あれ? 今何時?」


 携帯の時刻を確認してみると、午前の8時を回っていた。 真面目にしては遅くはあるものの、今は冬休み。 予定もない真面目を咎める人間はそもそもいない。


「・・・まあ今日くらいはゆっくりしよう。 ちょっとあっちこっち動きすぎたかも。」


 真面目は今年を振り返るとてんやわんやな1年だったと感じる。 時間の流れは一緒のはずなのに、長くも感じたし、あっという間だったような気もしている。 様々な出会いが真面目に大きな影響を与えているのは間違いなかった。


「・・・さて、ゆっくりするのはいいものの、まずはなにをするべきか。 忙しさのあまり、休み方を忘れてしまっている気がする。」


 真面目が自分でそう思えるくらいに、身体を動かしていたことを思い出す。


 真面目は改めて時間を見る。 両親はこの時間帯は既に仕事だろうと考える。 週末ではあるが今は年末でもある。 土日の休みを返上してでも、

 年末年始に仕事を残したくない一心で働いていることだろうと思っていた。


 父の進は先方との取引に目処を立てるために色々と動いているだろうし、母の壱与はこの時期は最も忙しい。 稼ぎ時故の多忙さで押し潰されそうになっていることだろう。 ある意味で予定調和である。


「とりあえずもう一眠りしようかな?」


 外は寒いので布団からは出にくいが、出てしまえば昨日の水族館で見た鮪のごとく動きそうになるので、今は眠りにつくことにした。 あまり二度寝をしない真面目にとっての、数少ない二度寝の瞬間である。


 再び目を覚ましたのはその1時間半後だった。 朝よりは寒さが和らいだお昼前。 流石に空腹には耐えられなかった真面目は、ゆっくりと布団の中から出て誰もいないリビングへと入る。 窓から入る日の暖かさを感じつつ真面目はキッチンでなにか無いか探る。


「家って買溜めはするけど、こう細かい物は意外と買わないんだよね。 本当になにも・・・あ。」


 冷蔵庫を探っていた真面目が見つけたのはまだ切られる前の大きなパウンドケーキ。 まだ切られる前なので断面が分からない。 そしてここにあると言うことは壱与が何かのために残してあるのだと真面目は思った。


「今年のクリスマスって確か中日なんだよね。 しかもその日は朝倉さんと出掛けるし。」


 クリスマスに一緒にいられるか分からないと言う具合に予定を思い返し、今はパンも無いし、ご飯も炊かなければいけない。 そしてインスタントも見当たらない。 つまり何かを買ってこなければいけない状態になっていた。 実際には材料はあるため作ることは可能だが、1人だけのために他の食材を使うのは勿体無いと思ったのだ。


「仕方ないや。 今日は出る予定無かったけど、自分が食べたいものくらいは買ってこよう。」


 そう言って再び部屋に戻り、正直部屋着から変えるのも面倒だった真面目は部屋着の上にオーバーコートを着て前を閉じることで、部屋着であることを誤魔化した。


 スーパーとコンビニどちらにしようかと悩んだ真面目だったが、食欲に関しては夕飯まで乗りきれる程度で構わないと思ったので、コンビニで適当に済ませようと考えて足を運んだ。


「さてさて、コンビニに来たのは良いけれど、なにを食べるかな。」


 そこまで食欲も無ければ何かを特別食べたい気分でも無い真面目は、とりあえずどうするか悩んでいる。 軽くパンやおにぎりで済ませても、寒いので肉まんなどを食べるのも悪くはない。 だからこそ真面目は悩み始めていた。


「夕飯はご飯を炊くとして、コンビニ弁当は最近高くなってきてるから避けたいけど、カップ麺とかだと多分足りないし・・・」

「あれ。 一ノ瀬君じゃないか。」


 真面目が誰からか声をかけられたので振り替えれば、そこにはガッチリと防寒した刃真理がいた。


「あぁ、鎧塚さん。 鎧塚さんもお昼?」

「そんなところ。 丁度宿題に一段落ついたからね。 それにしても随分と簡素な格好だね。 寒くないの?」

「あー、いや。 今日は外に出る予定じゃなかったんだけど、お昼用になにも無かったからそれを買いに来ただけだから・・・」


 そう言いながら真面目は刃真理に近付いていく。 そしてその後に周りを見て、刃真理に囁くように喋る。


「この下、実は部屋着でさ。 流石にこれを公衆の面前に晒すのはちょっと気が引けたんだよね。」


 真面目はどこか恥ずかしそうに話すことに刃真理は目を見開いていた。


「・・・君にもそんな風に恥ずかしがる表情が出来たんだね。」

「僕をなんだと思ってたの?」

「強いて言えば・・・女子慣れしてる思春期男子?」

「どういう表現? それ。」


 刃真理の言っていることが分からない真面目は話題を元に戻す。


「まあいいや。 とりあえずお昼を買いに来たってことで、ちょっとなやんでてたさ。」

「具体的にはどう?」

「懐事情と自分の食欲のバランスとでも言おうかな? 両立させるのが難しくて。」

「考えてるんだね色々と。 でも食べないと夜まで持たない、と。」

「そう言うこと。 ・・・まあ、無難にこれで行こうかな。」


 そう言って真面目は惣菜パンと菓子パンの2つを手に取った。


「それで足りる? 前お弁当で持ってきた時はそれなりの大きさだった気がするけど。」

「ほとんど動いてないから問題ないよ。 残りは夜で補填するし。」

「言い方はどうかと思うけどね。」


 そう言いつつも刃真理も適当にお昼を用意してレジを通す。 真面目達が出て別れ際に刃真理が真面目を止める。


「この後って時間あったりするかい?」

「今日はこれ以上は出掛けないつもりだから特に予定はないよ。 あ、宿題には取りかかりたいかも。」

「そっか。 それじゃあ大体3時間後位にビーハンをやろうよ。 ちょっと手伝って欲しいクエストがあってね。」

「構わないけど・・・鎧塚さんもうある程度のクエストならソロで行ける実力だと思うけど?」

「人数が増えた方が効率が良いと思わない?」


 そう言われて真面目は、いくら実力が伴っていても、討伐までの時間を考えるのなら、人数が多い方が短縮は出来るのかなと少し思った。


「分かったよ。 それなら隆起君と近野さんも呼んでおく? 多分あの2人なら来てくれるだろうし。」

「それなら木山君は任せて良い? こっちは近野さんを誘ってみるから。」

「分かった。 それじゃあまた後で。」


 そうして真面目と刃真理はコンビニを後にするのだった。


 そして家に帰るなり、真面目は惣菜パンを開けつつ、NILEを開いて隆起へとメッセージを打っていく。


『隆起君。

 今から3時間後位にビーハンを鎧塚さんとやろうと思うんどけど、予定空いてる?』


 そんなメッセージを送り、パンを2つとも食した後に炊飯器に夕飯分のお米を入れて、自室に戻り宿題をする。


 しばらくしてNILEの連絡通知が聞こえてくる。 時刻を確認してみたら、メッセージを送ってから既に1時間は経過していた。


「珍しいな。 隆起君がここまでメッセージを送るのが遅いなんて。」

『やぁ、すまんすまん。 ちょっと出掛けててよ。 夜なら参加できるが、今は無理だな。』


 メッセージを確認すると、真面目も納得してメッセージを入力する。


『了解。 鎧塚さんには伝えておくよ。』


 そう返信した後、刃真理にもNILEを送る。


『隆起君今はお出掛け中だって。 夜なら大丈夫っぽいよ。』


 刃真理にメッセージを送信した後に再び宿題に取りかかり、そして数分後に刃真理から返信が来る。


『こっちも夜ならって断られたよ。 というよりもあの2人今一緒にいるみたいだね。 偶然だとは思えないよね。』


 真面目はその刃真理のメッセージの内容に、脳内がしばらく宇宙を彷徨ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ