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今回の異文化交流について

今回で200話を迎えるのですが、こんな形で本当に良いのかと一抹の不安を感じております

 ネビュラと岬の喧嘩が一段落つき、改めてエントランスホールから食卓へと案内される。 先程とは別のSPの人に案内されながら真面目や他面々もその後についていく。


 そして食卓についたところで用意された席に着く。 椅子は4つしか用意されていなかったが、急遽人数が増えたのですぐに人数分用意された。 円卓上になっているので準備もそんなに時間がかからなかった。


『紹介が遅れて申し訳ない。 っと、こちらの言葉で話しても分からないのだったな。』


 そう言って一度仕切り直すように深呼吸をした後に、改めて声を出した。


「ワタシ、ネビュラノダディ。 アストロード・アトラスト。 ソシテツマノルプシオン・アトラスト。 ヨロシク。」


 片言ながらも向こうなりにこちらの言語に合わせて自己紹介をしてくれた。 そして真面目は先程から思っていたことを口にする。


「なんだかすみません。 急に人数を増やしてしまって。」

『・・・? 何故彼は謝っているんだい?』


 真面目が頭を下げたのだが、どうやら意図を汲み取れていない様子だった。


「キニスルコトナイワマジメ。 トモダチガフエルコトハ、ワタシ二トッテモオオイニカンゲイダモノ。」

「そうなの?」

「ええ。 『ダディ。 彼は急に人が増えてしまったことを謝りたいんだって。』。」

『なんだそんなことか。 ネビュラの友達ならむしろ喜ばしい事だと伝えておくれ。』

「『分かったわ。』 ソウイウコトダカラ、ワタシノユウジントシテキテクレルコトハカマワナイッテ。」

「ネビュラの通訳がないと分からないから助かるよ。」


 ホッとする真面目を余所に、皆が気になっていたことを思い思いに話しかける。


「そう言えば、ずっと寒く、感じていたのですが、暖房などは、つけてないのですか?」

「ヘヤヲアタタカクスルト、アイスガトケチャウデショ? ア、モシカシテサムイノハニガテダッタカシラ?」

「あ、ごめんね。 そう言うことじゃ、無いから。 ちょっと気になった、だけ。」

「ねぇネビュラ。 君のお母さんとても綺麗だけど、なにか特別な事をしているのか聞いてみたいんだ。」

「イイワヨハマリ。 『マミー。 どうやって綺麗になってるか知りたいんだって。』」

『あら、ふふふ。 大したことはしてないわ。 いつもどおりの日常をいつもどおりに過ごしているだけですもの。』

「イツモドオリニスゴシテルダケダッテ。」

「あらら。 秘訣は教えてくれないか。」


 そうして会話に花を咲かせていると、トレンチを持った2人のSPが円卓に近寄ってくる。


「オマタセイタシマシタ。 「アイスパフェ」ニナリマス。 オスキナノヲオエラビクダサイ。」


 そう言ってSP達は下がっていった。


「乗ってるアイスの種類が違うだけで、パフェの内容は一緒だね。」


 上に乗っているアイスを基準に、フルーツゼリーにクリーム、コーンフレークが入っている。


「ん? なんで白いアイスが2つあるんだ?」

「片方はヨーグルトじゃない? 私それにしよっと。」

「なるほどな。 じゃあ俺はブルーハワイにしよ。」

「私は、バニラに、します。」

「それならこれにしよっと。 オレンジなんてイメージに合わないかな。」


 皆が思い思いに取っていくなか、ネビュラ悩み込んでいた。


「ん? ネビュラはまだ決めてないの?」

「ニホンノアジガタップリハイッテイル「マッチャ」モイイノデスガ、「ブルーベリー」ヤ「キャラメル」モステガタイノデス。」

「ああ、確かにこれだけフレーバーがあると選べなくなっちゃうやつね。」


 真面目はネビュラが悩んでいる理由が分かり、苦笑している。


「マジメハエラバナイノデスカ?」

「僕は余り物でいいから。」

「じゃあ私はこれを選ぶ。」


 そう言って抹茶アイスの乗っていたパフェを取ったのは岬だった。 岬の場合も迷っていたのではなく、単純に皆がなんのアイスを選ぶかを見ていたのだ。


「ネビュラはどうする?」

「デハ「キャラメル」ヲイタダキマス。」

「じゃあブルーベリー貰うね。」


 真冬に近い状態で食べるアイスであったが、ブルーベリーの酸味をクリームが優しく包んでくれるので、しっかりと味わえる。 また室内ということもあってか、外の空気を浴びながらよりは断然食べやすい。 パフェであるため色々な味や食感があるのも楽しませてくれる1つだ。


 そして真面目が順調に食べ進めていると、不意にネビュラからの視線がとんできているのが分かった。 ネビュラが手に持っているパフェは手が冷たいとは言えずっと持っていたせいか若干溶け始めている。


「ムゥ。 ヤハリ「ブルーベリー」二スレバヨカッタカモデス。」

「先にキャラメルを選んだのはそっちなんだから諦めて。 キャラメルを選んだのはそっちなんだから。」

「ソレハソウナノデスガ・・・ソウデス!」


 そう言ってネビュラはキャラメルアイスを1匙分掬う。 真面目はそのまま食べ始めるのだと自分も食べるのを再開しようとした時に


「マジメ!」

「え? ・・・んむ!?」


 唐突に名前を呼ばれてポカンとした真面目の無防備な口の中にキャラメルアイスの乗ったスプーンが加えられる。 真面目の口の中にはキャラメルの甘味と苦味がアイスの冷たさと共に広がっていくのだが、それよりも驚きの方が勝っていた。


「ドウデスカ? オイシイデスヨネ?」

「・・・美味しいけどなんでこんなことを・・・」

「コンドハマジメガワタシ二ヤッテクダサイ。」


 そう言ってネビュラは口を開ける。 やられた以上はやるのが筋なのだろうかと真面目は思いつつ、真面目も1匙分のアイスを掬い、そしてネビュラの口に入れる・・・前に逆隣にいたはずの岬が横から入ってきて、ブルーベリーアイスを口にした。


「ミサキ。 ワタシガタベタカッタノデスガ?」

「自分のスプーンを使って食べればいい。 交流を深めるにしてもやりすぎだと思うんだけど?」


 再びネビュラと岬の間で火花が飛び散る。 そんな様子を見て真面目はため息をつくばかり。


 そしてそれを見ているネビュラの両親は逆に微笑ましく見ていたりもしている。


「止めなくても良いんですか? あの喧嘩。」

「ネビュラノケンカトモダチ。 ワレワレハウレシイ。」

「・・・そうですか。」


 ネビュラの両親が止める様子がないと諦めがついたので、真面目は2人の喧嘩を聞きながらしながらパフェを食べ続けるのだった。


「ミナサン、マタガッコウデアイマショウ!」


 そうしてネビュラを含めた異文化交流は終わりを迎えて、ネビュラとその両親、家で見張りをしているSP達に見送りをされながら真面目達は屋敷を後にした。


「それにしてもネビュラ達がこの国に来た理由がなんとなく分かって良かったかもしれないね。」

「ああ。 こっちからしてみたらなんてことのない話だったが、向こうも向こうなりに考えてるって訳だな。」


 刃真理と隆起がそんな感想を言い合っていた。 ネビュラ達から聞いたのは「留学の理由」。 そこにあったのはただ日本を知りたいだけではなかったのだ。


『アナタタチノイマノゲンジョウヲ、ワタシタチノヨウニチキュウノウラガワノヒトタチニモシッテモライタイノ。 テレビヤラジオダケノジョウホウジャァ、ワカラナイコトモアルデショ?』


 ネビュラはただ交流を深めたかったのではない。 もっと、今の日本の若者達を、そしてこれから受け継がれていくであろう若い世代に、自らが見て感じたことを情報発信しようという信念があったのだ。


「それにしたって、ネビュラは一ノ瀬君と距離が近い。 私が同じ立場なら勘違いする。」


 一方で理由が分かったとしても、なんとなく納得のいっていない岬は、機嫌は良くなかった。


「他にも交流する人がいたんだからって想いは確かにあったかな。」

「そう言うことを言ってるんじゃない。 そもそも一ノ瀬君ももう少しネビュラとの距離を考えるべき。」

「そこで僕に振るのはおかしくない? 距離感の問題は外人だからとかで話はつくし。」

「違う。 あれは間違いなく一ノ瀬君を狙ってる。」

「僕今は女子だよ?」

「その辺りは関係無い。」

「あー、ちょっといいか?」


 そのやり取りを後ろから見ていたみんなの代表として、隆起が2人に割って入る。 その声に2人とも隆起の方を向く。


「隆起君助けてよ。 ネビュラはそんなことしてるつもりは無いだろうって。」

「そんなことない。 あれは好意的何かを感じる。 私も元女子だから分かる。」

「あー、2人ともな。 前々から言いたかったがずーっと言えなかったことがあったんだがな。 この場でハッキリ言うわ。」


 隆起の言葉に2人は「?」を頭に浮かべる。 そして隆起はこう言った。


「お前ら2人の距離も大分おかしいからな?」


 その隆起の言葉に、残りのメンバーも頷いていた。 真面目と岬は分からずじまいだったが、結局誰も教えること無く交流会が終了したのだった。

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