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冬のイベント

 外が寒くなってきているのも相まって、教室の窓は締め切られている。 そのため外と中の温度差が激しくなり、くもりガラスのようになってしまっていた。


「あ、浅倉さん。 そこに落書きしたら駄目だよ。 拭いたはずなのに跡が残ってるって掃除当番が言ってたから。」

「むぅ、指紋が残るのなら仕方ない。」

「指紋とか皮脂とかって、水じゃ落ちにくいんだよね。 落書きが子供っぽいとは思わないけど。」


 そんな間休みに真面目、岬、刃真理がいつものように窓際で集まっている。 いつもの光景になりつつあるものの、3人の衣装は冬の物に早変わりしている。


「今年も残すところあと少しだね。」

「うん。 この身体になってからもう1年が経つ。」

「最初こそ色々と不安だったけど慣れちゃうと馴染んで来てるよね。」


 3人は思い思いに今年のことを振り返る。 まだ月日はあるものの、しみじみと思っているようだった。


「今年は雪降るかな?」

「どうだろ? この辺りはそこそこ温暖だから、流石に降らないかもよ?」

「それに降ったとしても積もることは無いだろうね。」


 岬の疑問に真面目と刃真理が真剣に返す。 そして授業開始の鐘が鳴り、それぞれの席に着いた。


 リリリン、リリリン。


 放課後の帰り道、真面目の携帯が鳴っていることに気が付きそれを手に取る。 差出人は知らない電話番号だった。


「えー? 誰からだろう? 取るの怖いなぁ・・・」


 正直なことを言えば真面目はこう言った分からない類いには触らないようにしている。 トラブルに巻き込まれては話にならないからだ。 しかしずっと鳴り響かれても迷惑なので周りに誰もいないことを確認してから電話に出る。


「もしもし?」

『ようやく繋がった。 元気にしてた?』


 声の主はなんとセルナだった。 真面目は本当に周りに誰もいないことを確認しなおして、小声で電話を続ける。


「言いたいことは山ほどあるけど、なんで電話をかけてきたの?」

『実は私、これから日本にまた来日することになってさ。 また一緒に遊びに行きたいのよ。』

「それで付添人として僕を抜擢したって訳ね。 それって何時の話?」

『それがなんとクリスマスなのよ! 簡単に言えばクリスマスライブね。 今回はちょっと大きめのライブ会場を取れたって言ってたし。』


 それだけ彼女の頑張りが伝わったと言う証明にもなるのだろう。 そこで更に真面目は考える。 ライブがクリスマスならその前日には日本に来なければならないし、準備期間を考えればもっとだろう。


「ちなみに来日自体は何時な訳?」

『1週間前よ。 だからちょっと早めのクリスマスデートってことになるかしら。』

「僕は今女子なんだけど?」

『それならむしろ都合がいいんじゃない? 本当に私がデートしてたらスキャンダルになっちゃうじゃない。』


 それもそうだと思いつつも、結局は男子と行くことには変わりないのではないかと思った。


『そう言うわけだから、また詳しい事は後日説明するわ。 これからまた打ち合わせがあるからこの辺りで。 またね。』


 そう言ってからセルナに一方的に切られる真面目であった。


「あれがセルナの裏の顔って考えたら、どうなんだろうなぁ・・・」

「ドウトハナニガデスカ?」


 電話が終わった後に声がしたので真面目が振り返るとそこにはネビュラが首をかしげて立っていた。


「あれ、先に帰ってるかと思ってたんだけど。」

「ショウテンガイデ、カイモノヲシテイタラ、マジメガアルイテイルノガ、ミエタノデ、ツキテキテイマシタ。」

「買い物?」

「コレデス。」


 そう言ってネビュラが持っていた袋の中身を確認すると、そこには多種多様なカップアイスが入っていた。

「買う季節間違えてない?」

「ノンノン。 ワタシノクニデハ、サムイジキデモ、アイスハタベテイマシタヨ。」

「そう。」


 そこまで興味のない真面目は少し簡素に思いを述べた。 それに対してネビュラは何かを思い付いたかのように手を合わせる。


「ソウデス! モシマジメカヨケレバ、コンシュウマツニワタシノイエニアソビニキマセンカ?」

「ヘ?」

「ミンナニショウカイシタインデス。 コノチニキテデキタアタラシイフレンドニツイテ。」

「それは別に構わないけど・・・」

「OK! ソレデハマタアシタ!」

「あ・・・」


 真面目が何かを言う前にネビュラは去っていってしまう。 袋の中にかなりの量のアイスがあったはずなので、崩れていないことを願うばかりの真面目であった。


「僕一人だけで行っていいのか・・・まあそれはまた明日聞けばいいや。」


 そう言って真面目はそのままの足で帰路へと旅立つのだった。

 そして夜になり真面目は家族3人で夕飯を食べた後に学校の宿題に取りかかっていた。


「今日の宿題は確か理科と歴史だったっけ。 それが終われば後は寝るだけだし、頑張っちゃおう。」


 宿題に取りかかる真面目はとても集中していた。 特に歴史は苦手教科であるがゆえに、簡単に終わらせてしまうのはもったいないと感じているので、時間をかけて丁寧にやっていた。


 そんな甲斐もあってか、1時間かけてようやく宿題を終わらせることが出来たのだった。


「時間掛かりすぎたかな? まあでも予習と復習を兼ねてたから、これくらいになっても当然か。」


 そう思いながら携帯を見てみると、NILEに通知が来ていることに気が付いた。 件数は2件。 それぞれ別の内容だった。


「まずは隆起君のほうからかな。 ええっと」

『おっす真面目。 ビーハンの新しい情報見たか?』


 どうやら何かしらの情報があるらしいのだが、夕飯だったり宿題だったりと、やることが多かったので、情報自体はまだ確認していなかった。


『まだ見てないよ。 宿題とかやってたからね。 これから見に行くよ。』


 そう隆起に返信した後にもう1件の内容を見る。 送り主は岬からだ。


『やぁやぁ真面目君。 念のため確認しておくけど、クリスマスイブに予定はあるかな?』


 なにやら含みのある言い方をしていた。 とりあえず返信文を考える。


『予定があるって言ったらどうする?』


 煽り文に煽り文で返しておくことにしたので、先程隆起が言っていた情報について検索を掛ける。 公式リークらしいので情報は確かだ。


「えーっとなになに。 新たな武器の派生系と種類の追加・・・お、クエストが増えてる。 内容は・・・ははは、今の時期らしいクエストみたいだ。 イベントクエストって事か。 後は・・・ん?」


 情報を確認しているうちに岬からの返信があったようで、開いてみることにする。


『疑問文に対して疑問文で返していて、尚且つそれを言ってくるということは予定はないけどあるように見せかけていることを自分から言っているようなもの。 Q.E.D(証明終了)。』

「なかなか鋭いところを突いてくるなぁ・・・確かに予定はないけど・・・」


 隠すつもりは無かったのだが、少しだけ出たプライドがそんな言葉を出してしまったことを反省し、真面目は改めて文章を送り返す。


『そっちだってわざわざ「念のため」なんて聞くからじゃない? 予定はないけどさ。』


 売り言葉に買い言葉のようなやり取りではあるが、岬にはこれくらいで丁度良いと真面目も思っているらしい。 そして返信が来るまで再び情報を確認していた。


「周回性は少し低いかな? 僕としては武器の派生系が気になる感じだし、隆起君もそこまでイベントクエストには行かなそう。 のんびりやるのが丁度良いかな。」


 そうして岬から返信が来たので確認する。


『それならその日は空けておいてね。 絶対だよ?』


 珍しく強く念を押されるので少し聞いてみることにした。


『それは構わないけど、クリスマスイブの予定なら今予定を入れる必要無いんじゃない?』


 そう返信して少しした時に岬から返信が戻ってくる。


『それは何て言うか・・・予定入れておかないと埋められそうだし。』

「埋められそうって・・・」


 頭に浮かんできただけでもセルナとネビュラとの予定が組まれていることを考えれば、割りと冗談では無いのかもしれないと思った。


『分かった。 とにかくクリスマスイブの時は空けておくよ。 僕はもう寝るからね。 それじゃおやすみ。』


 そう文面を返して布団に潜り横になる。 そして岬からの「おやすみ」という返信を確認してから、真面目は眠りに付いたのだった。

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