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気の迷い?

 平日の学業を終えて週末。 真面目は先日泣き崩れるようにお願いをしてきた隆起と共に、遊びながら運動できる施設に行くための最寄り駅に集まっていた。


「・・・それで呼び掛けで集まったのが、この2人だけだったってわけ?」


 そこにいたのは真面目と隆起の他にもう2人の見慣れた男子。 隆起が真面目と2人だけでもと思い、友人に声をかけた結果である。

「今日はよろしくね。」

「よろしく。」


 片やこれこら運動する気満々の格好をしている得流と、全身黒のジャージで防寒対策がバッチリな感じを出している岬の姿があった。


「いや、他のやつにも声をかけたんだけどな? あれやこれやとやんわりと誘いを躱されてさぁ。」

「今の君が何を言っても言い訳にしか聞こえないよ隆起君。 人望がないとは言わないけど、もうちょっと連れてきても大丈夫だったんじゃない?」

「いやぁ、押せ押せだと後が怖くてさ。」

「言葉に反して行動が消極的ってなにそのギャップ。」


 隆起の男の姿を知っている真面目には、目の前でか弱い女子をしている隆起の姿に、なんとも言えない表情になる。


「おーい。 行かないの?」

「早く行こう。」


 既に歩き始めていた女子(男子)2人が動かない真面目と隆起を催促する。 2人も置いてかれまいと追いかけるのだった。


「へぇ、結構大きな施設なんだね。」


 最寄り駅に到着して少し歩いたところにその施設があった。 ビルの高さとしては5階建て相当だが、なんと言っても敷地面積が広かった。


「これぐらい無いと色々と詰め込めないんだろうよ。 俺達の目的の場所は2階からだぜ。」

「から?」

「その上がレジャー施設なんだよ。 ま、とりあえず入ろうや。」


 そうして施設の中に入ると、隆起の言っている意味がすぐに理解できた。 その施設の1階層目はレジャーではなくジムになっているのだ。 まだ早い時間帯だから利用者は少ないものの、ルームランナーやダンベル、ペンチプレスなんてのもあり、そこそこ本格的なのが伺える。


「真面目。 置いていくぞ。」


 ジムの方をじっと見ていた真面目に隆起が声をかける。 そそくさとエスカレーターへと駆け寄って2階に上がると、既に何組かが並んでいるのが見えた。


「そういえばこの上には何があるの?」

「色々とあるぜ? バッティングはもちろんフットサルやバスケット場、テニスやバトミントン用のコートもあるし、ローラーリンクもあるんだってよ。」

「随分と至れり尽くせり。 回りきれるか心配。」

「そこでお得になってくるのが、このプランって訳よ。」


 そう言って隆起は料金の書かれている看板の1ヶ所を指差した。


「「1日フリーパス」?」

「そうそう。 これにすればジム以外のゲームは退場するまでは全部遊べるって訳よ。 値段と相対的に見ても特じゃないか?」


 そう値段を見てみて、色々と考えてみるに、それはそうだろうという結論に至ったようで、みんなで列に並んでいくのだった。


「いらっしゃいませ。 プランはどのように致しますか?」

「1日フリーパス4人分で。」

「かしこまりました。 ・・・つかぬことをお聞き致しますが、4人様はそれぞれカップルでございますか?」

「え?」

「そう。 今日はダブルデート。」

「そうそう。 って言っても俺達付き合って間もないけどな。 な、得流。」

「そ、そうね。 あ、学生証見せますね。」

「はい、ありがとうございます。 それではフリーパスの学生値段に更に1人100円引きをさせていただきます。」


 そうして全員その値段を払ってフリーパスの腕章を貰う。


「では皆さん、楽しんできてくださいね。」


 そう店員のお姉さんに暖かい目で見送られながらエレベーターに乗っていき、すぐ上の階層に降りる。


 その階層はリンクや網で囲まれたステージでテニスのストラックアウト等が展開されていた。


「いやぁどれから行こうかな。」

「ちょっと待って」


 とりあえず色々と見ようとしている友人達に一言言わなければ気分が微妙に優れないので、真面目は足を止めさせる。


「どうした、真面目。」

「どうしたって・・・うーん、何て言ったらいいのかなぁ・・・」


 真面目も真面目でどう言えばいいのだろうかと考えつつも、言葉を選んで発することにした。


「あの店員さんに対する解答なんだけどさ。 僕達が付き合ってるって嘘をついたよね?」

「安くなるならそれでいいと思うんだけど。」

「それでいいのかなぁ・・・?」

「何て言うか・・・軽くない? 扱いが。」

「扱い?」


 真面目の言い分にみんなが首をかしげる様子を見て、真面目は目頭を押さえた。


「ほらその、付き合うとかって、もっと相手の事をよく知ってからとかさ。 何て言うか・・・とにかく周りから見た状況と現実は違うわけで・・・」


 真面目は煮え切らないでいた。 いつもならすんなりと出てくるであろう言葉も、何故か喉元のところで突っかかってしまっているように、声が出てこない。


「思い出したらまた教えてよ。 それよりもあれやってみたい!」


 痺れを切らした得流が先に走っていく。 場所はローラーリンクだった。


「こういうのコマーシャルで見た時から一度はやってみたかったんだよねぇ。 ほら、今だとこういうのだってやれる場所少ないし。」

「昔は流行ってたんだけどな。 でも結構バランス取るの難しいらしいぜ?」

「あ、コツが乗ってる。 靴を履いたらまずはしっかりと踏み締めるように歩くんだって。」


 既にローラーを履き始めていた岬は、座りながら携帯でローラースケートのやり方を見ていた。


「踏み締めるように・・・おお! 本当だ! バランス悪くならない!」


 実践をした得流がそう言っているので、真面目と隆起も同じように立ってみる。


「なんか凄く不思議な感じ。 足下にはタイヤが付いてるのに。」


 真面目はすんなりと出来たようで、手すりを離して立っていた。


「そ、そうか・・・? 俺はそこまでちゃんと立てないんだが・・・?」


 一方の隆起は手すりから離れることが出来ず、体をプルプルと震わせていた。


「・・・ええ?」

「お前・・・本当に色んな事に順応するよな・・・ここから行こうとすると体が震えるんだけど・・・」

「重心が真下に向いてないからじゃないかな? そんなにバランスの悪い立ち方してたら、それは倒れそうになるよ。」


 真面目の声が聞こえているのかいないのか。 隆起は必死になってリンクに立とうとしている様子を見送りながら、真面目はリンクを滑り始める。


「おぉ・・・ 足は常に動かさないといけないからちょっと疲れるのは確かってことか。」


 何だかんだで一周をしてきた真面目はまだリンクに立つことが出来ないでいる隆起と、まだ着けた後に立ってすらいない岬が見えた。


「浅倉さんは滑らないの?」

「靴が上手く履けないだけ。 ・・・よし、ようやく履けた。 私のサイズがなかなか無かったから。」

「滑れそう?」

「コツは見た。 多分大丈夫。」


 そう言って立った岬だったが、手すりの無いところからいきなり立ってしまったので、ローラーの回転力を甘く見ていた。


「ガッ」と言う音と共に岬の体が前のめりになる。 そしてそのまま地面に顔面衝突・・・するかと思われたが、その前に真面目が岬の前に立って支えていた。


「何となくそんな気はした。 ほら、手すりがあるから、そこからしっかりと立って。」

「うん。 ありがとう。」


 ちょっと危なかったので岬は少ししおらしくなる。 その行為と表情を見て真面目は微笑ましさを覚えたようで、はにかむように笑っていた。


「どうしたの? 笑ってるけど?」


 その行為が無意識だったようで、真面目はすぐに口元を抑えて、再度リンクを走っていった。


「・・・本当にどうしたんだろ。」


 真面目も先程の行為に違和感があったことを覚えて、しばらくローラーリンクを回っているのだった。

ちなみに結局岬と隆起はほとんど滑ることが出来ませんでした。

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