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長髪をどうするか

 岬との買い物に付き合った翌朝。 真面目はいつも通りに朝を起きて、自分の服の入っている棚から別の寝巻きを取り出して、シャワーを浴びに下に降りる。 そして今着ている自分の寝巻きを洗濯かごに入れて、そのまま浴室へと入る。


 そしてシャワーを浴びながら髪を手櫛で丁寧に解かしていく。


「それにしても・・・」



 自分の髪を解かしながら真面目は思う。 自分の性転換状態から考えても、髪が女子用に伸びるのは仕方の無いことではあったが、まさかここまでロングヘアーになるとは思っても見なかった。


 お陰で今まではシャワーを浴びて髪と身体を適当に洗えば済んでいたものも、髪は勿論、身体の隅から隅まで至極丁寧に洗わなければならず、その度に時間が掛かるのだ。


「女子の身体っていうのも、結局は良し悪しなんだろうかなぁ?」


 髪を解かし終わり、ようやくトリートメントへと手を伸ばす。 そして髪の毛先を良くした後にシャンプーで毛先まで洗う。 ここで思うのが、髪の短い隆起なら普段通りに洗えているのだろうかと思った。


 そして髪についたシャンプーを落として、そして最近母が買ってきた女性用の洗顔フォームを手につけてから優しく顔に塗る。


 泡が顔全体に行き届いたところで1分間上を向いて泡が落ちないようにする。 こうすることで肌に泡が浸透して、汚れが良く取れるのだそう。 母からの入れ知恵ではあるが、肌荒れは女の天敵らしい。


 そして顔の泡を落として、次は身体を洗うことにする。 スポンジにボディーソープ(柑橘の香り付き)をつけて泡立てて、そして自分の下腹部から洗っていく。


 女性の身体をどこから洗えば正しいのかは真面目には分からない。 でも身体を洗うのならばほとんど同じな気もしなくない、というのが真面目の中の感想だった。


 下腹部を洗い、足、お腹、そして胸の間の隙間に手を入れる。 男子の時には無かった感覚が全身に襲ってくる。 そしてそこから脇、腕と通して肩を通して反対側も洗う。 そして胸の部分に差し掛かる。 洗う度にスポンジとは違う柔らかさが真面目の手の中で踊る。


(何度洗ってもこの感覚だけはまだ慣れない・・・気分が昂って、おかしくなりそう・・・)


 男子の時だったら触れることすら困難だったであろう、女子特有の胸の膨らみを、自分の身をもって体感することになるとは、覚悟をしていたが慣れるのにはまだ時間がかかりそうだ。


 そして背中も洗いシャワーで洗い流してから、浴室を出てタオルを使う。 こちらも肌触りの良いタオルへと変わっている。 これも肌を傷付けないための配慮なんだとか。


 そして身体を拭いた後に部屋着に着替える。 今日は出掛ける用事はないためブラは着けないがパンツは穿く。 無いと逆に落ち着かない。


 その後でドライヤーを使って髪を乾かす。 タオルである程度は乾かしたもののやはり水気が完全に飛ぶことは無いので、ドライヤーも欠かせないのだ。


 その後にカチューシャで前髪が落ちないようにする。 これだけでも印象と言うものは変わるらしい。 今まで見えていなかった目の部分がハッキリと見える。 そうした後に脱衣所を出てリビングに入る。


「おはよう。」

「おはよう真面目。」

「もう父さんは出勤した?」

「あの人はいつも速いから。」


 軽く会話を済ませてから朝食を取って、食器を洗ってそのままの流れで真面目は部屋に入る。


 真面目は基本的には家で過ごすことが多い。 元々インドア派なので1日のほとんどを漫画を読んだりゲームをしたりしている。 ただ自分の身体が女子になったこともあってか、このままで良いものなのだろうかと考えたりもしている。


 この身体で外に出れば新たな出会いもあるかもしれない。 だが目的もなく歩いていても見つかるとも思えない。 それに今の身体はまだ10日程しか経っていない。 色々と自分の身体が分からないので、分かってからでも遅くはない・・・と思っている。


 まず真面目が手に取ったのはバトル漫画。 男女が戦いで自分の事を証明する世界で、主人公を含めた一族はその世界で唯一己の肉体のみで戦う「武闘派」の家系。 常に戦いは武器の扱いだとされていた世界で、主人公はどう勝ち進んでいくのかというあらすじの漫画だ。


 しかし真面目が読んでいるこの漫画は世間的にはあまり知られていない。 というのも今の世の中でそもそもこういった漫画は、一定層にしか刺さらないというのが現実的らしい。


 真面目自身もこの漫画を読んでいるのは、面白さやハラハラさからではなく、いかに自分の持ち味を活かすかという点で、教訓のような読み方をしている。


 そして1巻分を読み終えて、次はラブコメに手を伸ばす。 こちらはどこにでもあるような作品で、主人公とヒロインの周りがワイワイやっているという作品である。

 因みにこの漫画の中に出てくる女性キャラクターで一番人気なのはツンデレヒロインなのだが、真面目は一緒に付いてくるだけのような文学少女の方が好みだったりする。 それを言ってもいまいち理解はされないが。


 その漫画を見て真面目はふと思った。 同じ髪の長い女子はいろんな髪型をしている。


 ポニーテールから始まり、ツインテール、三つ編みだったり、ピンで止めたりリボンで止めたりと様々なアレンジが施されている。


「ふーむ・・・」


 今は女子であり、尚且つ髪も長い。 男子の時では無し得れない「ヘアーアレンジ」というものに挑戦できるきっかけがある。 とはいえヘアゴムやヘアピン何てものはここにはない。 母から借りれば出来るだろうが、最初はなるべく自分の手でやってみたい。


 そう思い当たり時間を確認すれば9時を回ろうとしている。 場所によっては9時に開店をする100円均一の店もあるだろう。


 そうと決まればと早速着替えて(流石にブラもする)、外に出る。 そして100円ショップへと向かい、複数個入ってるヘアゴムやヘアピンを購入して家に帰る。 流石にまだ柄付きなのは無理そうだったので無地のヘアピンを買って、まずは左右に前髪を分けてからヘアピンで止める。


「まあこれはいいか。 とりあえず簡単なところから・・・」


 そう言って調べたのはポニーテールからだった。 髪を上げてからまとめてヘアゴムで止めると書いてあるので比較的簡単だと思い、やり方を見ながら実践してみる。


 頭の高い位置でやったのでうなじも見える。 首を振っても長い時よりも動かないので案外楽にはなっている。


「一応写真は撮っておこうっと。」


 そうしてスマホのカメラで撮影する。 ヘアゴムを取り外して、次は「くるりんぱスタイル」というものをやってみようと思った。 理由はやり方が簡単だと書いてあったからだ。


 そして真面目は指示通りに手を動かしているものの、自分の髪が手に絡まったりと苦戦を強いられた。 結果としては出来たものの、少々不格好なものとなってしまった。


「まあこれも出来た記念のひとつ、ということで。」


 これから回数を重ねてやっていこうと思い、最初の一歩として記録したのだった。


 最後に三つ編みにも挑戦してみたものの、最初の時点でこんがらがり、髪を痛めそうだったので断念した。 なにかそれっぽいもので代用してからの方がいいだろうと、リベンジにかけるのだった。


 とりあえずはポニーテールで母からの感想を聞いておこうと思い、ポニーテールを作ってからリビングに降りた。 丁度なにかを仕込んでいる母の様子があった。


「母さんなにしてるの?」

「干し葡萄をラム酒に浸けてるのよ。」

「ラムレーズンにするの?」

「そんなところよ。 ・・・あら?」


 後ろを向いていた壱与が真面目の方を見ると、そこには髪を結んでいる真面目の姿があった。


「あー、どうかな? 似合ってる?」

「いいじゃないの。 小顔にも見えるわよ。」

「そ、そうかな? まあ、折角髪が長いからって思ってさ。」

「なによ、そう言うことならヘアゴム位貸したのに。」

「まあ、ある程度は自分でやりたかったからさ。 ちょっとね。」


 そうして真面目はその日を漫画を読んだりゲームをしたりするのに加えて、自分の髪型を変えるのに使ったのだった。

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