表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
178/230

文化祭当日 終わりのキャンプファイア

 文化祭中の真面目はとにかく忙しかった。


 料理自体は尽きることは無かったものの、どこで情報が漏れたのか、列がほとんど途切れることは無かったので、看板役のメンバーすらも教室で一緒に配膳をするくらいだった。


『本日は皆さん、州点高校文化祭にご参加を頂き、ありがとうございました。 これを持ちまして文化祭は終了致します。 お忘れものをございむせんようご注意頂き、正門または裏門からのご帰宅をお願いいたします。 また来年もご来場お待ちしております。 なおこの後に開催されます廃材を利用したキャンプファイアのご参加ご希望の方は、学校教員から許可書をお受け取り下さい。』


 放送部からの全体放送がかかり、真面目達のいる教室のお客さんも、終わりがけということでそこそこ疎らになっており、クラスメイトも終わりが見えてきたということで安堵の表情を見せていた。


「ふー。 ようやく終わりだよ・・・昨日よりも忙しかったなぁ・・・」

「ちょっと、まだ終わってないんだから、最後までシャキッとして。」


 ちらほらと緊張感が抜けたかのようなクラスメイトに活を入れている様子を見て、真面目はまだ余裕だった。 というよりもこの程度でくたびれるような精神ではないことは真面目がよく知っていた。


「一ノ瀬君。 休まなくて大丈夫かい?」


 そんな多忙を繰り広げているのを間近で見ていた刃真里はそんな真面目に声をかける。


「心配ありがとう鎧塚さん。 でもこの後もキャンプファイアの見回りがあるし、ここで休憩してても同じかなって。」

「同じじゃない。 少しは身体を休める。 一ノ瀬君はそれだけの仕事をしてる。 もう少し自分の身体を養うべき。」


 そう言って片付けから戻ってきた岬に真面目は強く注意される。 もちろん完全に休んでないわけではないにしろ、仕事量に見合った休息を取っていないのは事実だった。


「もうそこまでお客さんもいないし、廃材なんかはこっちで処理するから、一ノ瀬君は休んでてよ。 お客さんのご指名を受けた時にまたお仕事頑張って貰うし。」


 岬の言葉に畳み掛けるように刃真里からも言われたとなれば、真面目も言うことを聞かざるを得ない。 とりあえずは近くにあった椅子に腰かけることにした。


「ふぅ・・・うーん・・・」


 真面目は腰かけたのにも関わらず首を捻る。 真面目は疲れているわけではないのだが、こうして休んでいて良いのだろうかという、焦燥感が少しあった。 だが自分の頑張りを見てくれている人がいるのに、その好意を無下には出来ないという板挟みにあっていたが、そんな時間はすぐに終わりを迎える。


「おーい、最後のお客さん出し終えたから、使わなくなった廃材とかかき集めて。 一ノ瀬も手伝って。」

「分かった。 料理の方はどう?」

「概ね完売かな。 あと数個くらいは冷蔵庫に残ってるだろうけど。」

「残りも出しちゃおうよ。 キャンプファイアの場でなら誰かしら食べてくれると思うし。」

「そうだね。 捨てるのは勿体無いし、食べて貰えるならそれでもいいかな。」


 終わりだと知った真面目は近くにあった紙皿やら割りばしを回収して、近くの人に渡した後に真面目は教室を出る。


 一足先に校庭に向かうと既にキャンプファイア用に作られた大きな木で作られた台が設置されており、学年関係無しにその中に色々な廃材を入れていた。


「それにしても、なんだか目まぐるしい1日だった気がする・・・」


 自分でも分かってはいるものの、やはり色々と動きすぎた自覚のある真面目。 今日が週末で週の頭が休みになっているとはいえ、簡単には疲れは取れないだろうなと感じていた。


「あ、そろそろ始まりそうだ。 外からのお客さんも残ってるし。」

「廃材を使ってキャンプファイアとは、なかなか綺麗なものだね。」

「使ってるものが分からなければ綺麗なものよ。 特にこういった炎が燃え上がる姿は特にね。」

「でも廃材の中には有毒になり得るものもあるから、一応注意喚起は」


 そう言った辺りで自分が誰かと会話していることに気が付いた真面目は、後ろを振り返ると、そこには自分の両親である壱与と進が立っていた。


「やあ真面目。 君の催し物にも行ったのだけれど、丁度放送に出ていたようだったから見ることが出来なかったけど、こうしてちゃんと見れて少し安心したよ。」

「それはどうも。 僕も2人の姿を見なかったからどうしたのかなって思ってたよ。 何時からいたの?」

「私達もさっき来たばかりよ。 今日は和服のままなのね。」

「いちいち着替えるのが面倒だったからさ。」


 そんな会話をしているうちにもキャンプファイアの準備はどんどん出来上がっていく。


「真面目は行かないのかい?」

「これでも生徒会だからね。 見回りがあるんだよ。」

「忙しいわねぇ。 それじゃ、私達はキャンプファイア楽しんでいこうかしらね。 進さん。」

「真面目も時間が空いたらキャンプファイアに参加するといいだろうね。」


 そうして壱与と進がキャンプファイアの方に向かっていったのを確認した後に、真面目は改めて校庭を見渡すのだった。


「さてさて、校則に背いている人はいないかなっと。」


 こんな時にそんな事をする生徒はいないだろうと分かってはいても、見回りの都合上仕方ないと頭で理解し、そして銘会長を見つけて報告をした後はキャンプファイアを楽しんでいいと言われた為、真面目も近からず遠からずのところでキャンプファイアを見ていた。


「そう言えば中学生の時の野外合宿の時ってキャンプファイアやれなかったんだっけ。 でもあの時は運悪く雨降ったもんなぁ。 そう考えればキャンプファイアは初めてかも?」


 そんな自分の思いを考えつつしばらく見ていたら不意に視界が遮られた。


「誰だか分かるかな?」


 後ろからの声に真面目は色々と思うところはあったものの、とりあえず答えることにした。


「今では歌い手配信者として有名人になってる人がこんなところでこんなことをしてていいんですかね?」

「意外と意地悪なのね。」


 真面目の視界が戻り後ろを振り返ると、変装したままのセルナがいた。


「本当にこんなところで油売ってていいの? 日本に来たってことは打ち合わせとかがあるんじゃないの?」

「いいのよ。 私はそもそも舞台で歌うだけだから、セッティングとかにはほとんど関与しないの。 それにお忍びって言ったけど、戻った後で許可は貰ってきたのよね。 セルナのモチベーションが上がるならって。」

「君のところのマネージャーも随分と甘やかしているみたいだね。 いや、この場合はメンタルケアとしては正解かも?」

「ねぇ! それよりもキャンプファイアと言えばフォークダンスをするって聞いたことがあるわ! 一緒に躍りに行きましょ?」


 そう言ったセルナは真面目の意見を聞かずに手を取ってキャンプファイアの前までやってくる。


「ちょっとちょっと。 僕は踊るって言ってないよ?」

「あら、ダンスは苦手とか言っちゃう口?」

「・・・君本当に楽しんでるよね。 大丈夫? 一般人にこれだけ間近にしちゃって。」

「大丈夫よ。 私、元々はここまで有名人になるなんて思ってもみなかったし、日本の友達とは遊びたいじゃない。」


 真面目としては有名人と友達になっているつもりはないと感じてはいるものの、セルナがそれでいいと言うのなら、真面目はなにも言うことはなかった。


「そう言えばここに来るまでにこんな話を聞いたんだけれど。」

「こんな話?」


 フォークダンスをしながらも真面目はセルナの話を聞いていく事にする。


「このキャンプファイアでフォークダンスをした2人は、決して離れることは無いんだって話。」

「・・・それってさ。 異性だけじゃなくて同性同士でも成立するよね? 離れることはないって、別に友情関係だって同じでしょ?」

「ロマンがないよね。 君。」

「リアリストだと言って。」

「ねぇ。 明日は予定はあるかしら?」

「無かったらどうだって言うのさ?」

「折角だから付き合ってもらえない? ライブは夕方からだから、それまで暇だし。」

「本当に君歌い手配信者?」


 ジト目でセルナを見る真面目だったが、どう聞いても結果は覆りそうに無いので、これは聞くしかないなと真面目は諦めたのだった。


「せめて時間と集合場所だけは今教えて。 連絡は取れないんだから。」

「わかったわ。 それなら9時に駅前で会いましょ。」


 そんなわけで真面目は急遽デートが決まった事に少し疲労感が増えたなと思いながら、文化祭の終わりを迎えるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ