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文化祭当日 始まり

真面目は目が覚める。 いつも通りの朝なのには変わり無い。 いつも通りシャワーを浴びて、いつも通り制服に着替える。 まだ季節の変わり目ではあるものの残暑は厳しいため、薄めのシャツで問題はない。 そしてリビングに入って挨拶を交わす。


「おはよう母さん。」

「おはよう真面目。 文化祭って今日と明日だったかしら?」

「うん。 でも今日は僕達みたいな学生のみだけどね。」


そう言いながらテーブルの上にあるパンを持って噛る真面目。 そう、今日は文化祭の前夜祭のようなもので、最初は学生のみで楽しんで、次の日が土曜日になるためその日に来賓を募るのが州点高校の文化祭である。


「それでオープニングセレモニーでやるんでしょ? 日本舞踏を。」

「僕は琴の方をやるんだけどね。」

そんな会話をしながら朝を過ごす。

「私も進さんも明日は休みだから、あんたの学校の文化祭に参加できるわ。」

「え? 文化祭に来れるの?」

「何年振りかしらねぇ。 あんたが中学生の時は行けなかったもんねぇ。」

「そりゃあ仕事だったもんだもの。 来れなかったのは仕方ないでしょ。」


その事について真面目は特に寂しいと思ったことはない。 他のクラスメイトの親御さんが来ようとも真面目には関係の無いことでもあったわけで。


「それじゃあ私先に出るから、いつも通り施錠お願いね。」

「うん。 行ってらっしゃい。」


そうして真面目は朝食を食べながら壱与よ見送り、自分も食べ終えた食器を片付けて家を出る。


「文化祭日和、かな。 今日も明日も。」


残暑の残る日差しを浴びながら真面目はそんな感想を述べる。 今日が文化祭であること以外ではなにも変わらない通学路。 自分自身も浮かれすぎは良くないと抑制している真面目ではあるものの、高校生になって初の文化祭、しかもクラスメイトみんなで作り上げたのだから、なおのこと浮かれやすくなっているのも分かる。


「まあ、あえて不満を挙げるのだったら、肉体が本来の自分の身体じゃないことかな。」


そう言って自分の胸元に手を当てる真面目。 自分の身体のようで全くの別物の身体を触ってみる。 このような世界線になったのも自分が産まれる前まで誰も想像出来ただろうか? そんなことを想像するのはこの世の全てがどうでも良くなった人間だけなのかもしれない。


「そんな人間もいないか。 変なことを考えるようになったものだよね。 僕も。 でもこの身体だからと言って悪いことばかりじゃないし。」

「おはよう真面目君。」


1人で考え事をしていた真面目に声をかけてきたのは同じく登校をしてきた岬だった。 そんな岬を見て、真面目は少しだけ表情が柔らかくなる。


「この身体じゃなかったら、岬に会うことも無かったかもしれないよね。」

「なんの話?」


ポツリと呟いたその言葉に岬が反応したので、真面目は軽く咳払いをしてから、岬に目を向ける。


「いや、高校生になって初めての文化祭だから、楽しみだなって思ってさ。 中学の時はここまでの規模じゃなかったもの。」

「流石に高校生なんだから、もっと使えるものは使った方がいい。」

「なんか、そう言うことを言ってる訳じゃないんだけど感がすごいね。」


そう言いながらも真面目達は通学路を歩いていく。 この辺りもなにも変わってはいない。


「そういえば真面目は文化祭の時はどんな動きをするの?」

「そうだねぇ。 最初は文化祭の開会式の後の出し物の、最初の余興として日本舞踏クラブが躍りをするんだよね。 僕ともう一人の部員での初舞台だよ。」

「そうなんだ。 練習の成果、出せるといいね。」

「そうだね。 ちゃんと演奏できるかな。」

「・・・ん? 真面目が踊るんじゃないの?」

「僕は演奏の方が向いてるってさ。」


そんな会話をしていると、いつの間にか学校に到着していた。 いつもの校門には今まで無かった派手な看板が飾られており、見る人々の目を惹いていた。


「これも作るのすごい大変だっただろうねぇ。」

「これを作った美術部は部活動単体による出し物は行わなくていいって言う特典が付けられているんだって。」

「いや、これだけの事をしてくれたんだから、美術部も休ませてあげないと。」

「それは生徒会の意向?」

「そんなところかな。 働かさせ過ぎは、結局効率を下げるからね。」


様々な箇所が装飾されている校内を歩き、自分達の教室へと入る真面目達。 そこは既にいつもの教室ではなく、あったのはミラーボールのように飾られた地球儀や各国の有名な観光都市、その国を象徴する衣装を来ている男女の写真など、色んな国の事を知って貰いたくて仕方ないと言った具合に、教室に装飾が施されていた。


「アッ! マジメニミサキ。 チョウドヨカッタデス。」


真面目達を見るなりすぐに駆け寄ってきたネビュラからお呼びがかかる。


「どうかした? ネビュラ。」

「オフタリニキテホシイフクガアルノデ、シチャクシテホシイノデス。」

「あれ。 みんなが着る服は既に決まってたんじゃなかったっけ?」

「タシカニソレハソウナノデスガ、コノ「異文化交流喫茶」ニハ、トアルクニノイショウガナカッタノデス。」

「とある衣装?」

「ナニヲカクソウ、「ジャッポーネ」デス!」


ズバリ、といった様子で真面目と岬に指を指すネビュラ。 ジャッポーネ、つまり日本らしさということなのは真面目も岬も理解できた。


「ホカノクニトノブンカコウリュウノバショナノニ、ニホンガナイノガオカシイトオモイマシテ。 ソコデキュウキョジュンビヲシテモラッタノデスガ、サイズヲイウノヲワスレテシマッタノデス。」

「それで僕たちで衣装合わせしようって話になるんだ。」

「ソレニオフタリニモキナレタモノヲエランデオキマシタ。 ブカツドウデツカワレタコトがアルトオモイマスヨ。」

「部活動で?」


そう言ってネビュラが出したのは帯や袴などの衣類だった。


「ジャッポーネトイエバ「ワフク」! コレガナイトセイリツシナイノデハトオモイマシタ!」

「・・・ねぇネビュラ。 一応言っておきたいんだけど、僕はこれは着れないよ?」


そう真面目が答えると、ネビュラは「ガーン」といった表情になった。


「ナ、ナゼデスカ・・・? ワフクハキニイラナカッタデスカ?」

「いや、そうじゃなくて。 僕は料理担当だからそもそも給仕には入らないよ?」

「あぁ。 料理をする人は給仕とは一緒に出来ないんだっけ?」


真面目が答えた理由にたいして、刃真里が補足をした。 というよりもその事についてはネビュラが知らないわけも無い筈だったのだが、何故か忘れていたようだった。


「エエ・・・ソレハザンネンデス・・・ゼッタイニニアウトオモッタノデスガ・・・」

「私は着るよ? 私は給仕側だし。」


ネビュラがガッカリしているのを、岬が一応フォローするが、あまり効果はないようだ。 そんなネビュラを見かねたのか、真面目は深くため息をついた。


「そんなに和服が見たかったら、オープニングセレモニーで琴を弾くから、その時のなら。」


その言葉にネビュラは落ち込んでいたのに、急に目が輝いた。


「ソレハタノシミデス!」


そのネビュラの変わり身の早さに岬は、少し口を尖らせたのだった。


「なんで私が着ることより、真面目が着ることの方が期待が高い?」

「おやおや。」


そんな岬の様子を刃真里は近くで見ていると、教室の扉が開かれる。


「さぁ、開会式が始まるから体育館に移動するんだぞ。」


そうしてゾロゾロと体育館に移動する。 文化祭はここから始まるのだった。

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