過小評価
「・・・というわけで、今日は試食会も含めた料理をレクチャーする期間を生徒会に申請したら、調理実習室を貸してくれました。 今日も含めて文化祭まで何日間は申請して貸してくれることになったので、予備も作れる位にはなりますよう指導していきます。」
調理実習室で真面目が教卓の位置に立っていて、前には数名のクラスメイトが座っていた。
「本当に済まない一ノ瀬。 お前以外に教えられる人がいないから、負担はかなり大きくなるだろうが・・・」
「まあ、僕以外がまともに出来ないと言われると、ちょっと手放しには出来ないかなって思っただけで。 でも材料費は最悪請求するからね委員長?」
「ああ。 成功させるためにも、数日はよろしく頼む。」
そう言われたので、真面目もこれ以上言うつもりは無くなった。
「それじゃ、まずはメニューについて説明していくよ。」
そう言って真面目は黒板に文化祭の喫茶店で提供するメニューを書いていく。 正式に喫茶店を催し物もとして出せるようになった真面目のクラス。 そこで料理を作る組とウェイター。 そしてお店のメイキングとメンバーを決めてから、こうして個別で作業を行うことになったのだを
真面目が黒板に書いたメニューは「フリッタータ」、「フィッシュ&チップス」、「ピロシキ」、「串焼き」、「ガレット」である。
「煮込み料理を抜いたうえで、庶民的な料理というものならという考えでこの料理を提供することにしました。 飲み物は「ラッシー」にしようと考えています。」
「はいはいはーい。 なんでその料理なんですか?」
「作りやすいということもあるけれど、大量に作り置き出来ることも考慮しての料理選択だからかな。 ちなみにキッシュじゃなくてフリッタータなのは少ない材料で作れるからっていう理由からだよ。」
「その袋の中身がそうってことでいいのか?」
「そんなところ。 串焼きはインドネシアのサテという地域の味付けにしたから、それがみんなの舌に合えば、これで行こうと思う。 駄目ならシュラスコにすればいいから。 あ、それと人数が分からなかったから食べれても一口二口程度にしてよ?」
そう言いながら真面目は黒板に書いたメニューの試作を出した。 出された料理を見て「おお」と驚嘆の声があげられ、一口サイズに切り分けられた料理をクラスメイトは口にした。
「わっ! 美味しい!」
「もうこれだけでもいい気がする。」
「串焼きも初めての味だけど、めちゃくちゃ旨いな!」
クラスメイトのみんなは真面目が持ってきた料理に舌鼓を打っていたのだが真面目自身は口にあったことにホッとしていた。
「味は覚えることはないから、まずは作り方を教えるよ。 と言ってもそこまで難しいことはあんまりないけれどね。」
そう言いながら真面目は袋の中からジャガイモを取り出して包丁で切っていく。 細くするためにジャガイモを薄く切った後に数枚重ねて、更に細かく切っていく。
「僕はこれで出来るけど、包丁が無理だったらスライサーがあるからそれを使ってここまで細くしてね。」
説明をしながら真面目はボールを用意して細切りにしたジャガイモを入れて、塩コショウを軽く振ってから手でよく混ぜていく。
「ここは今はそのままでやってるけど、使い捨て手袋を使うから衛生面は安心させられると思うよ。」
そしてよく混ぜたら水を切って、火のかかっていないフライパンに油を引いて、水気を切ったジャガイモを敷き詰めていく。
「そんなに水を切って大丈夫なのか?」
「むしろ水が残ってると焼いた時にカリカリにならないから限界まで絞って。」
そうしてヘラを使って丸を生成していく。 そして真面目はフライパンが覆い被さるくらいのお皿を用意した後に、ガレットの上に被せる。
「え? もう完成?」
「いや、ひっくり返すためにお皿は使うだけ。 お好み焼きみたいにはひっくり返せないから、こうしてお皿でひっくり返すほうがいいんだよ・・・ ねっと。」
真面目がフライパンを持ち上げてひっくり返すと再び驚嘆の声が上がり、もう片面もそのままの様子で焼いていく。
両面焼けたのを確認したところでお皿に盛り付けて完成である。
「と、いった具合なんだけどどうかな?」
「確かにこれなら料理の出来には関係無い。 作り置きだけでも十分に作れるかもしれない。」
「それはよかった。 ほとんど同じ要領でフリッタータも出来るし、串焼きも先に味付けしたものに漬けておけば焼くだけで味の再現は出来るから、そこまで苦労しないと思うよ。」
真面目がそうアドバイスをした上で、他のみんなもやってみるだけやってみようの精神でガレットを作っていくのだった。
「それにしてもよくここまで考えてくれたよな。 週末だけでクラスメイトの料理の腕も見てくれているってことだしな。」
「そうかな? でも作りやすいものを出そうっていうのは週末に答えが出てて、作り置き出来れば楽かなって思ったりしただけだよ?」
真面目がそんな風に言うと、委員長である女子は腕組みをして考えるポーズを取った。
「どうかした? なにか分からないことでもあった?」
「いや、委員長が自分で本当にいいものかと思ってさ。」
「そこは揺るがないで欲しいんだけど。」
真面目が委員長と話している内にガレットが次々に作られていく。 完全におやつ生成の場になっていた。
「おーい、あんまりジャガイモを使いすぎるなよ。 当日に使う分がなくなるだろ。」
「あぁ、そこは大丈夫。 むしろある程度使って貰わないとジャガイモに毒の芽が出ちゃうから。 ガレットだけでも作れるようになれば作り置きは作りやすいでしょ?」
「そこまで考えてたのか?」
「本当はフィッシュ&チップスのチップスの方を作るために買ってきたものだし、練習してくれるなら問題はないかな。 無駄にするよりはましだし。」
真面目の答えに不思議に思っている委員長。 なぜこの人物はここまで謙遜をするのだろうかと。
「まあ次はもうちょっと難しい料理でもやってみようかって思ってるんだよね。 フリッタータやピロシキは見ている限りはすぐには出来なさそうだし。」
そうこうしているうちに真面目は次の事を考えていたので、尚更であったりする。
「一ノ瀬。 次は生徒会長候補になるんじゃないか?」
真面目には聞こえない位に委員長は声を出すのだった。




