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意外と重要な役割

LHRを終えて生徒会の仕事も終えた後に、日本舞踏クラブに顔を出してから学校を出た真面目は、その足で家には帰らずに、町の図書館へと歩みを進めていた。

ここに来た理由はもちろん料理を作る為にレシピを参考にするのが目的だからである。 この場所に料理関係の本があることも把握済みなので、下手に料理本を買うよりも楽なのである。

そんなことを思いつつも、真面目も真面目で与えられた役割を果たそうと行動している辺りは、お人好しになっているなと真面目は密かに感じていた。

そして図書館に着いた真面目は、すぐに料理本のところに行くのではなく、その国の文化に触れるために、旅行雑誌のコーナーへと足を運んだ。 簡単に作れるものを想定はしているものの、もしその料理が何らかの儀式的な料理の一端だったりすれば、面倒さが増すからである。 ネビュラと同じ様に日本じゃない国の家族が来るかもしれない。 文化祭とはそういう場所だと考えながら真面目は向こうの地を少しでも知ることから始めようと思ったのだ。

そして帰り際に握らされたメモ用紙を確認した真面目であったが、中身を見て落胆したのだった。

「・・・具体性が欲しいとは言わないけど、もう少しイメージを固めて欲しかった・・・」

真面目の開いたメモ用紙に書かれていたのは、「トマトとチーズの料理」とか、「サーモン」とか、「海外にしかない料理」など、とにかく抽象的だったり、種類が多すぎて困るものばかりだった。 食材のみを書いているのであればまだいいほうなのだが、普段食べない料理や誰でも作れる料理等と書かれている場合は本当に考えてしまう。

「メモをくれた以上は期待にそぐわないようにしたいところだけど・・・いざ作って「イメージと違う」って言われても困るんだよねぇ。」

食材もただと言うわけではない。 本番の前にいくつか試作を作らなければならず、そしてそれをクラスメイトの数名には食べさせなければならないのだ。 人選は真面目が選ばせて貰うものの、材料費も馬鹿にはならない。

「どういった料理から考えてみようかな?」

真面目はまず自分達が出す料理について考えてみる事にした。 ヨーロッパ辺りが一番わかりやすくはあるものの、作るのには時間がかかるし、なにより作るだけでも十分時間がかかるのは、文化祭の場所でそんなことをしている余裕はない。 しかし完全に除外するわけにはいかない。 一同保留にして分かりやすい材料のあるものを主軸に料理を決めていくことにした。

とはいえ在り来たりな材料ではあるので、工夫しなければいけないのは調理法よりも味付けかもしれないと思った真面目は、文化祭で出されるような味付けにしようと濃い味付けが特徴的なアメリカやカナダ方面の国の味付けを見てみることにした。

本場アメリカで食べられているものの有名どころはもちろんハンバーガー。 魚介類も食べられてはいるものの、バターをふんだんに使っていたり、フライによる油の量も日本ではあり得ないほどだったりする。

「文化祭を楽しんで貰う為には、このような濃い味付けでは、その後の屋台などの味が分からなくなってしまうんだろうなぁ。」

真面目も元々そこまで濃い味付けは得意ではないため、出すとしてもせめてハンバーガーセット程度だろうと目星はつけていく。

料理本をパラパラと読んでいく内に真面目は、少し胸焼けをしてきているのを感じて、一旦は本を借りることにして、そのまま家に帰ることにした。 ちなみに帰りが遅くなることは両親に連絡済みだ。

「文化祭だから重たいものは作れないし、時間をかけるものも作れないってなると・・・意外と作るものは絞られるかな。」

帰りながら真面目はどんな料理を提供するか考えていた。 お客の傾向等も計算に入れながら料理を思い浮かべていく。

「ただいま。」

そして料理をある程度決めてみたところで家に着いたので、一度思考を家に戻す。

「お帰り真面目。 珍しいわね。 あんたが遅れて帰ってくるなんて。」

「図書館に行って料理の本を選んできたからね。 文化祭で異国風料理を出す喫茶店をやるからね。 僕達のクラス。」

「へぇ。 これまた面白いことをするわね。 にしても喫茶店とは懐かしい事をするわね。」

「やっぱり時代的にはあったんだ?」

「あったあった。 性転換が常識になる前はね、普通に出されるのもあれば、女装、男装して模擬店をしたこともあったわよ。」

「え。 そんな時代があったんだ。」

真面目の知らない時代の事を話されつつも、今となってしまえば驚きはあまりなかったりする。 時代の流れとは末恐ろしいものである。

「それでどうして真面目が料理を考えることに?」

「曰く僕以外に料理にたいして疎いらしいから、とりあえず僕が料理を選定して、みんなが作れるような料理で提供するんだってさ。」

「ほう、では料理指導をする、という形になるのかな真面目は。」

「どうなんだろ? ・・・いや、多分僕が教えることになるかも・・・料理できる人があんまりいないって考えると。」

「ちゃんと料理を教える人がいるって大事なことよ? 味付けもだけど、基礎的な部分が出来てなかったら大怪我に繋がるからね。 配膳も大事だけど、その前の料理でも頑張らないと。」

壱与が首をかしげる真面目にそう言ってやる。 そこで真面目はふとあることが頭に浮かんできた。 今までの自分ではあり得ないと言わんばかりの気持ちで。

「僕ってこんなに、誰かに教える立場になりやすいってことなのかな?」

「どこまでの事を言っているのかは父さんには分からないが、まとめてくれる人というのはチームにおいては必ずいなければ成立しない。 そしてそのリーダーもしっかりとした人物でなければ務まらない。 真面目はそういう人物だと言うことがみんなから認められたと言うことだろう。」

「こう言ったらあれかも知れないけど、進さんも私も人を見る立場にあるかるね。 あんたにも同じ血が流れてるってことよ。 あんまり良い言い方じゃないけどね。」

進と壱与の言い方に完全な悪ではないのだと感じていた。 適材適所、という言い方としては正しいのかもしれないと、真面目も納得はしていた。

「ねぇ父さん、かあさんも、休みの日とかは文化祭で出す料理の試作をしてくれない? 1人じゃ味のまとめや見た目の見せ方とか分からないから。」

「それくらいならお安いご用さ。」

「なんだったら明日の夜からやりなさいよ。 あんたの方が家に帰ってくるのは早いんだから。」

そう言われたので、両親からの許可を得て、明日から試作に入ろうと思った真面目は、自分の責任の大きさも痛感するのだった。

「まずはやれるだけやってみてもいいかな。」

布団にはいり、その一言で1日を締め括ったまじめであった。

今年の投稿はこちらで最後になります。


朝の投稿でないことをお許しくださいと同時に、今後の投稿については、「出来たら朝に投稿する」、というスタイルで行こうかと考えています。


理由としてはダブルワークによる弊害だと思ってください。

それでは良いお年を。 年が明けてから読みに来た人は明けましておめでとうございました。

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