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クラスメイトと一緒に

 次の日になり結局なににしようか最後まで決まらなかった真面目は、登校中でもひっきりなしになっていた。


「催し物と言われても、微妙にしっくりは来ないんだよねぇ。 どれもこれも。」


 真面目の中で絞り込めたのは喫茶店か劇だった。


 喫茶店ならば厨房と配膳で分けられるし、ローテーションも回しやすい。 手作りにするかは決まってからでも構わないのだが、おそらく競争率は高い。 必ず一クラスは案として出してくる筈だ。


 もうひとつの劇ならば素人なりに練習を重ねれば、見映えが良くなくても達成感は存在する。 もちろん学生が行う劇なので楽しんで貰えるかは定かではないが。


 そこまで決めてどちらにしようかとずっと悩んだ結果がこの登校時間な訳だ。


「どちらになったとしても本格的なものは出来ないだろうし、学生ならではって考えれば、それはそれでありだし。 出し物としての費用とかも考えたりすると・・・」

「またぶつぶつ言ってる。 周りが見えてない。」


 独り言を呟いている真面目に、岬がポツリと声を出す。 今回は真面目もちゃんと聞こえていたので、岬の方に目を向ける。


「あ、おはよう岬。」

「何事もなかったかのように取り繕う辺りも変わってない。 だけどそろそろ気がついて欲しい所。」

「なんの話?」

「鈍感力も凄い。 性転換前からこんな感じだったのかな。」

「???」


 これは本当に分かってないなと諦めた岬は、真面目を通り越して学校へ向かって歩くのだった。


「それで決まらずに登校してきてしまった、と。 そんなに悩むとは余程のことだと言えるね。」


 学校について真面目達は自分達の席について、遅れてやってきた刃真里に悩んでいる姿を見られて、原因を打ち明かしたらそう笑われてしまったのだった。


「笑い事じゃないって。 提出期限が迫ってると思うと余計に焦るんだよ。」

「それはボクだって同じだよ。 ボクに至っては全然思い浮かばなかったんだから。」

「それでもちゃんと出してたじゃないか。 なにを出したのさ?」

「流石に人には教えないよ。 自分のアイデアを取られるわけにもいかないからね。」


 刃真里がそう口元に人差し指を指すと、真面目は口を尖らせた。 人の意見を聞きたくはなかったが、ここまで来るとなにかを聞かないと分からなくなってくることもある。


「・・・うーん。 やっぱりこっちの方がいいかな。」


 そうして真面目が決めたのは喫茶店だった。 細かなところは決まってからにしようと考えて、大まかな所を出していった。


「お、出してきたみたいだね。 なにを書いてきたのかな?」

「そっちが教えなかったから、こっちも教えないよ。」


 真面目も同じ様に刃真里に返しをした。 その様子に刃真里は肩を竦めるしかなかったのだった。


「全員書き終えたかな? 確認をしていくぞ。」


 放課後のHRとなり、集めていた箱の中身を出して、委員長と協力をしながら1枚ずつ確認をしていく。 そして出てきた内容を黒板に書き写していく。


「・・・内容はともかくとして、類似しているものを一度書いているだけだから、決めてから細かい内容は話し合いをして貰うからな。」


 何となくだが内容に違和感のあったものがあるのではないかと真面目は思ったのだった。


 そして結果が決まった。 その内容は「喫茶店・カフェ」だった。


「出し物についてはまた木曜日のLHRで決めて貰えばいい。 本日はここで終えてもいいし、出し物をある程度決めても構わない。 今日のHRは終わりにするから、他はみんなで決めてくれ。」


 そうして終わったHRで担任は教室を出ていく。 残されたクラス全員はどうするかと言えば、教壇に立っていた委員長(女子)が話を始める。


「・・・文化祭の出し物については喫茶店などに決定はしたものの、先輩方の話を聞く限りでは内容が違っていても同じコンセプトの出し物は出せないとのことだ。」


 その委員長の言葉に周囲はざわつき始める。 折角決めた企画がなくなる可能性があると言われれば、それは確かに困惑もし始めるだろう。


「しかし我がクラスの出し物が「見ていて楽しい」と思えるようになれば、話は良き方向に行くと思う。 先生は同じものをひとまとめにしていたけれど、アイデアはまだここにある。 そこから選抜して、より喫茶店を出来るようにしていこうと思う。 みんな時間があれば残って欲しい。」


 そう言って教室を出ていく人もちらほらはいたものの、それでも大半は残っていた。 出ていったクラスメイトは部活の都合だろう。 残ったメンバーの中に真面目と岬、刃真里もいた。


「ありがとう。 一応確認した中でも多かったのはメイドや執事などの、着替えを変更した内容だったけれど・・・ここに関しては少し在り来たりな気がする。」

「えー? やっぱり文化祭の花形だから? それとも性転換する前の時代からあるから?」

「前の時代と言っても性転換が始まってから15年は経っているから、やっていたと言われたところで時の流れによっては懐かしいと感じるのは我々の保護者世代だろう。 ただこの案1つだけでは少々物足りなさを感じると思うんだ。」

「物足りなさ?」

「それこそ昔のようなおもてなしのやり方では、それだけで終わってしまう。 なにかもっと別の観点を・・・」


 話はクラスの中でどんどん膨らんでいく。 服装とか出すメニューだとか、どこに誰を配置するだとか。

 出し物1つでここまて話し合いが出来ることも、それだけ本気だと言う意気込みがあると言うことの現れだろう。


「君は話し合いに参加しないのかい?」


 そんな様子を見ていた刃真里が、真面目にそう質問を投げてきた。


「なんでそんなことを聞くのさ?」

「だって君も喫茶店にしたんじゃないのかい?」

「憶測で話すのは止めて欲しいんだけど?」

「じゃあ違うのかい?」

「・・・劇よりはましかと思ってさ。」


 誘導尋問のような流れで言われてしまった真面目は、自分は意見を言う立場にはならないようにしていた。 流れに任せるスタンスなのには真面目なりの理由があった。


 ここ最近自分のアイデアが通りやすく感じているので、ここでなにかを言ってしまうと、もしかしたら普通に採用されてしまうことを恐れたのだ。

 そんなことまで気にする必要は無い筈なのだが、やはり意識をしてしまうと、抵抗が生まれてしまうものだと真面目は思った。


「あ、ネビュラがなにか意見を出してるみたいだよ。」


 留学生である彼女は、片言ながらも必死にみんなに意見を出していた。 それをみんなも聞いており、ある意味で交流の場になっていたりもしていた。


「・・・よし、意見もある程度集まったから、続きは木曜日にしよう。」


 そう委員長の区切りで教室から次々にクラスメイトが去っていく。 そんななかでネビュラが真面目に声をかける。


「マジメハコンカイノブンカサイ、ドウナルトオモイマスカ?」


 まるでおもちゃを買ってもらって、これから遊ぶんだと言わんばかりに目をキラキラしていた。 なにかを期待するかのように待っている。


「初めての事だからね。 僕もどうなるのかは分からないよ。 でも楽しみではあるよ。」

「ダヨネ! イマカラガタノシミ!」


 ネビュラが本当に楽しそうにしておるのを真面目は見ているだけだったが、それでも喜んでくれているのはいいことだろうなと真面目は、これだけ喜んだことはあったかなと何だかんだで自分の事と重ねていたのだった。

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