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案の定過ぎて

 日曜日の朝。 真面目は今身体を起こしたくても起こすことの出来ない状態にあった。


 身体全身を襲うほどに痺れており、少し動かすだけでも痛みを伴ってくる。


「うぐぅ・・・分かってはいたけど、やっぱり全身に来るものなんだなぁ・・・」


 真面目はこの症状を自覚していた。 昨日あれだけ必死になって身体を動かしたのだ。 思い当たる節もそれしかないと。


 そう、真面目は今、全身に筋肉痛を伴っている。 手足腕はもちろんのこと、腹筋や肩周りふくらはぎ辺りまでもが同じ痺れを訴えている。 動く度に痺れが痛みに変わるのだ。


「・・・今日が日曜日で良かった・・・いや、もしかして岬はこの事も計算して・・・?」


 そんなに計算高い女子ならばもっと計画的に動いているかと、痛みに耐えようとしている脳から外す。


「よっと。 まずはリビングに降りないと・・・ いてててててて。」


 身体を動かそうとするだけでも痛みが伴う。 とても動くことができるような状態ではないのだが、流石に家族に顔を会わせないままに部屋にいるのは気が引けたので、筋肉痛と戦いながらも真面目はなんとかして1階に降りる。

 リビングの扉を開けると、両親が既にテーブルに座っていた。 今日は珍しく2人とも休みの日なのだそうだ。


「おはよう真面目。 いつもより遅かったじゃない・・・なにしてるの? あんた。」

「あー、うん。 動きたくても動けないって言えば、分かってもらえる?」

「なるほど。 反動は思いの外大きかったみたいだね真面目。」


 進の言葉に壱与も言っている意味が分かったようで、合掌をしていた。 息子を助ける気はないらしい。 自業自得とでもあるため助ける理由もないと言えば無いのだが。


「今日は何処にも出掛けないんでしょ? ならゆっくりすればいいじゃない。 明日になれば治ってるわよ。」

「筋肉痛ってそんなに早く消えるものだったっけ?」

「人や場所によりけりかもね。 真面目の場合だと、普段から運動をしてるわけではないから、時間がかかるんじゃないかな?」

「明日の登校に支障がなければそれでいいんだけどさぁ。」


 真面目も自分のことでありつつも、悲観的には見ていない。 だがあまり喜んでいられないのも事実。 真面目は席について身体を少しでも楽にするための体勢を取っていた。


「筋肉痛ってツラいわよねぇ。 ちゃんと身体を鍛えておけば良かったって思っちゃうもの。」

「あれ? そもそも母さんってなにかスポーツとかやってたの?」

「やってないわ。 小さい頃に見たパティシエの仕事に感動を覚えてからそれ一筋だったからね。 運動はこれでもからっきしよ。 まあパティシエってそれでも体力は使うから、ある程度はいい運動にはなるけどね。」

「父さんは?」

「僕もインドア派だったかな。 とはいえ必要最低限は運動は出来る方さ。」

「つまり僕が運動が出来ないのはある意味では遺伝的ってことになるのね。」


 納得しつつもそれでもどうしようもないと分かった真面目は、朝食を取った後に部屋に戻ろうとした。


「待ちな真面目。」


 そこで壱与に呼び止められた。


「あんた、そのまま言ったところで階段登りはキツいわよ。」

「うっ・・・確かに降りるだけでも壁に寄り添いながらじゃないと行けなかったし・・・」


 真面目は先程の自分の行動を思い出す。 状態が状態なだけにもう一度階段を利用すると考えると無理をしてでもうえに上がる理由はない。 むしろ上がったら本当に動けなくなるかもしれない。 そうなってしまうと厄介極まりない。


「出掛ける予定が無いならここにいなさい。 部屋にいたって気分は良くならないわよ。」

「それはまあ、確かに?」


 部屋にいても筋肉痛で動けなくなるくらいならば、誰かの目の届く位置にいるのは何かあった時に助けを呼ぶにはちょうどいいのかもしれないと、真面目は部屋に行く足を止めた。


「真面目。 せっかくだから横になりなさい。」

「うん? それはいいけど・・・」


 進がそう言うので真面目はマットの敷かれている床へと寝転がった


「ああ、うつ伏せで頼む。」


 のだが、進の指示で真面目はうつ伏せになる。


「さてと、始めていこうか。」

「あれ? もしかして父さんマッサージの心得が?」

「あるわけではないけど、固まった身体の筋肉を解す程度は出来るはずだと思ってね。」


 つまり知識としては齧った程度なんだと思いつつも、身体の痛みが和らぐのならばそれでもいいかと、真面目は思っていた。


「実験として使うのはいいけと、逆に身体を壊すようなことをしないでよ?」

「不安なのは分かるが、こっちもそんな風に息子を使ったりはしないよ。」


 そこだけは確実にしておきたかったので、先に注意をしてから真面目は進の行動を待った。


「痛みが走るだろうが我慢するんだぞ。」

「筋肉痛だから何処まで我慢できるか・・・」


 そう続きを言おうとした時に肩の後ろ側から猛烈な痛みが真面目を襲った。


「いたたたたたたた!」

「ふーむ、これは凄いな。 ツボを押している筈なのにとんでもなく真面目がいたがっている。 ツボを押さえたマッサージは出来なさそうだ。」

「・・・だから・・・人を使って・・・実験を・・・しないでって・・・言ったじゃん・・・」


 事前に知らされていたとはいえ真面目は肩から全身にかけて襲ってくる痛みに耐えていた。


「すまなかった。 だが筋肉痛にマッサージをするだけでは意味がないのでな。 筋肉は破壊されてから成長する。 だから一度あえて壊すところから身体を休め、その反動で大きくするのだよ。」

「超回復の理論だね。」


 そんなわけで進は真面目の身体をゆっくりと押し、身体を解していくよだった。


「はぁー お掛けで少し楽になったよ父さん。」

「それなら良かったよ。 完全に治しているわけでは無いから、痛みはまだ残るだろうがね。」

「そうそう。 それにあんたはそんな感じになら無いとまともに休みすらしないからね。」

「母さんはなにもしてなくない?」

「あら、じゃあ今冷やしてるヨーグルトムースいらないのね。」

「喜んで頂かせて貰います。」


 一瞬で心を入れ換えてすぐに感謝を告げる真面目。 現金だと思いつつも、ここで壱与の機嫌を悪くすると今後本当になにもくれなくなるからだ。


「とはいえ動けないのは事実だ。 なにか真面目の部屋から取ってこようか。」

「あー、それならゲーム機取ってきて欲しいな。 ビーハンは出来るし。」

「そうか。 なら取ってこよう。 よっと。 場所は何処にある?」

「机の2段目の棚の中。」


 そう言って進はリビングを出て階段を上がっていく音を聞きながら、真面目は携帯を取り出して、もう一人の筋肉痛持ちであろう人物に連絡を入れる。


『こんにちは。 そっちは身体休められてる?』


 これに関しては今返信されなくても別段悪いことではないので、しばし返事が来るのを待つ。


 そしてビーハンのクエストを数回やったところで返事が返ってきた。 真面目はMINEを見ると、通知報告に出てくる文面が「返信が遅くなり申し訳ありません」と書かれていた。 岬はそこまで丁寧にMINEの文面を作ったとは考えにくいので、全体を表示することにした。


『返信が遅くなり申し訳ありません。 岬様は昨日の筋肉痛が長引いており、手足をまともに動かせない状態にあります。

 故に現在この文面を書いているのはお嬢様ではなく、浅倉家で使いとして雇われております名瀬が記入しております。

 明日の登校までには動ける最低限までは尽力をで取り組んでいこうかと思っている次第でございます。

 長文にはなりましたが これで失礼致します。』


 どうやら岬の方はもっと深刻だったらしい、 丁寧に話してくれたお陰でとりあえずの状況は読めたので、後は何事もなく日曜日をすませて、朝よりは軽く感じるようになった身体で自分の部屋まで戻って、そのまま明日の準備を行った上で眠りにつくのだった。

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