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迷子?の外国人

 はぐれてしまった真面目達は集合をするために広場に向かうことになったのだが、真面目は大通りから進んでいくと、先程の二の舞になりかねないと思いながら、路地裏をぬうように歩いていくことにした。

「あんまり商店街の路地裏とか行ったことないんだよね。 なにがあるのか全然分からないや。」

 大通りを中心に歩いている真面目にとって路地裏など視界の隅にちょっと見るくらいなので、ほとんど見たりはしないので、なにがあるのか全然と言っていい程に知らなかった。


「だからこそわくわくはするんだけど・・・なんかこの格好で来るような場所じゃないことだけは分かるよ・・・」


 今の格好の真面目と路地裏の雰囲気とミスマッチだった。


 商店街の路地裏は居酒屋が多く、浴衣を着て入るような場所ではないのだろう。 大人ならば雰囲気がでるのだろうが、今の真面目にそんなものは微塵もない。


「っとと、雰囲気に飲まれている場合じゃないか。 みんなと合流するために行かないと。」


 足を止めていたのを思い出して、真面目は歩き始める、完全に路地裏のみを進むことは出来ないので、なるべく大通りの端を歩きつつ、路地裏を経由していく。


「こうして路地裏を歩いてみるのも、悪くはないのかも。 お店の中は・・・成人を越えてからかな。」

 見

 た目がいくら大人びていようが、所詮は高校生なので、まだ居酒屋に一人で入ることは出来ない。 そもそも身分証を求められた時点でアウトである。 未成年のお酒やたばこはどの時代でも厳しいものだ。


「あとはあの路地裏を越えれば例の広場だ。 みんな先に着いてるかな?」


 終わりが見えてきて少しだけ安心できるようになった真面目。 大通りの端を歩いて、人混みを避けるために最後の路地裏に入った時に真面目は、目の前の光景に目を疑った。


 そこにはなにかを探すように辺りを見渡している少女。 髪は長く金髪でその瞳は青く、格好も真面目が人の事を言えない程不釣り合いなドレスのような格好をしており、ここが日本だと言うことを忘れるくらいに、その少女の存在感は圧倒的だった。


 そんな光景を目の当たりにした真面目だったが、困っている様子だったのを思い出して、声をかけようかと思ったが、明らかに外人だと分かる見た目から声をかけるのを少し躊躇った。


 躊躇ったが、このまま放っておくのも悪いと考えて、真面目はまずは声をかけることをした。


「エ、エクスキューズミー? アーユーヘルピング?」

 真

 面目は我ながら訳の分からない英語を話したなと思いつつ、自分の英語力の低さを嘆いた。 相手も困ってしまうのは分かっているはずなのに、繋ぎにも英語で話しているのだから仕方ない。


 その少女も最初こそ首をかしげていたものの、聞かれているのは自分だと分かったようで、その少女も声を発する。


「スミマセン。 ワタシ、ニホンゴ、スコシダケ、ワカリマス。 ムリヲショウチシテ、タスケテイタダケ、マスカ?」


 かなり片言ではあったものの、会話が成立するようで助かったと感じた真面目は、向こうに分かりやすく、簡潔に日本語を紡ぐことにした。


「周り、見ていた。 あなた、困っていた。 だから声をかけた。 なにかを探してる?」


 そう聞くと、少女は「そうだ」と言わんばかりに手を合わせた。 その姿はまるで人形かのように思えた。


「ワタシ、コノショーテンガイノドコカニアルラシイ「アルモノ」をサガシテル。 デモダレカニキコウトシテモ、ワタシノコトヲミテクレナイ。 ダカラヒトリデサガスコトニシタケレド、チズガワカラナクテコマッテタ。」


 お祭り騒ぎだからか、それとも典型的な外国人の子だからか、見向きをされなかったらしい。 言いたいことは分かるのだが、目の前で困っている少女に救いの手を差し伸べないとは、日本人として少しだけ悲しくなってきた。 そんな個人的な感想は置いておいて、真面目は質問をする。


「なにを探しているの? 僕でも探せるもの?」

「temple」

「テンプラ?」


 少女のあまりにも滑らかな発音に、真面目はそう聞き間違えたが、訳の分からないボケなど微塵もないことは分かっている。 ではなにを言いたかったのか。 あえて英語で言ったこと、しかも単語のみで言ったことに真面目は自分の知識を掻き立てる。


「テンプラ・・・テンプル・・・ええっと・・・寺院・・・神社かお寺? 地図を見せて貰える?」


 そう告げて真面目は商店街の地図を見せて貰う。 そしてその場所を指差す。


「あなたが行きたい場所はここ。 今いる場所はここ。 人混みはあるけど、まっすぐに行ける。 これで・・・」


 説明を最後までする前に、真面目はその少女に地図ごと手を掴まれる。


「スゴイ! コレガホンモノノ「ヤマトナデシコ」トイウモノナノデスネ! カンゲキシマシタ!」

「いや・・・別に大和撫子では・・・」

「デモ、キモノヲキテイマスシ、カレンデカシコイト、ワタシハゾンジテイマスガ?」

「この浴衣はお祭りだから。 あとこれだけはハッキリ言っておきたいし、今後日本を訪れるなら注意した方がいい。」


 そう言った後に真面目は一呼吸置いてからこう言った。


「僕は高校生だ。 その意味は・・・分かっているよね?」


 その宣言にポカンとしていた少女だったが、言葉の意味を理解して、驚いたようにこう言った。


「oh! ボーイダッタノデスネ!」

「分かって貰えてなにより。」

「デモワタシノシッテイルガールヨリモフーボーガアッテ、ワタシハスキデスヨ。」

「褒め言葉で受け止めておくよ。 さ、神社に行こう。 あんまり遅くなると本当に通れなくなっちゃうから。」


 そうして2人は路地裏から大通りの広場の端を横切った後に、更に進んだ先の神社に着いた。 あまり大きい神社ではないものの、お参りなどをするには十分だろう。


「ここが神社だよ。 これでOK?」

「ハイ。 アリガトウゴザイマシタ。」

「それじゃあ僕は戻るから、お祭り楽しんで。」


 そうして真面目が去ろうとした時に


「マッテクダサイ!」


 少女に真面目は止められた。


「まだなにか?」

「ナマエ! ジコショウカイ!」

「自己紹介って・・・僕達は今日会ったばかりだし、次があるとは限らないんじゃない?」

「ソレデモスルノガレイギッテ、ニホンノマンガデヨンダヨ。」


 それがなんのマンガなのか興味をそそられた真面目だったが、目の前で目をキラキラさせている少女の期待を裏切れないと、心の奥底で感じ取った真面目は、潔く聞いてあげることにした。


「分かった。 それなら言い出しっぺの法則でそちらからだよ。」

「ヤッタ! ワタシハノーエンビユーラ・アトラス。 ボコクハオランダ。」

「オランダ人なんだ。 僕は一ノ瀬 真面目。 不思議な名前だと思うけど、悪く思わないでよ?」

「ナマエヲキニスルナンテ、ソレモニホンジンラシイカンガエネ。」

「それはどうも、それじゃあ今度こそさよならだよ またどこかで会えるといいね、ノーエンビー・・・」

「ナガイカラミンナカラハ「ネビュラ」ッテヨバレテルワ。 ワタシ、マタアナタニハアエルキガスルノ。 アエルナラウンメイダトオモワナイ? マジメ。」

「本当に会えるならね。 それじゃ。」


 そうしてネビュラという少女と分かれた後に、広場へと向かい、既に集まっていたみんなと合流を果たす真面目であったのだった。

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