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開始前の計画打ち合わせ

今回から長編を予定しております。

 週末を乗り越えていよいよ夏休みも後半戦に突入した頃、真面目は今食事処「曙」のカウンターに座って、大将と女将さんを前に、真剣な表情を出していた。


「よし。 いよいよ明日から向こうで用意してくれたテナントでの販売になる。 決まった時こそ色々と不安になっていたが、お前さんのおかげで手が回りそうになった。 すまねぇな。 俺達の為に動いてくれてよ。」

「大丈夫ですよ。 何て言うか、僕も困っていたので。」

「? なんであたし達じゃなくて自分が困るんだい?」


 自己満足で今回の手伝いをするのは分かるが、真面目が困っている理由が分からなかった。 そもそも自分達の手伝いなのだから、困ることでも無いだろうと思っていた。


「いやぁ、今年の夏はちょっと出費が多くなってしまって・・・いや、分かっていたんですよ。 友人も増えたことでお金が足りなくなるかもなって。 想像以上だったって事です。」


 たははと困ったように笑う真面目。 もちろん未来の事など分かりはしない訳なのだが、真面目も流石にまずいと思ったほどには、自分の使える資金が無くなっていたのだ。


「つっても俺達の店だって、今回が初めてだし、次があるかも分からないしで、お前さんや後ろの子達に金を渡せれるか分からないんだぜ? お前さんはそれでいいのかも知れねぇけどよぉ・・・」

「私達も気にしてない。 これもいい社会勉強。」


 大将の疑問にそう答えたのは岬。 今回真面目が呼んだメンバーの1人である。 他の一緒にテーブル席に座っているメンバーも首を縦に振って頷いていた。


「みんなごめんね? 夏休みはまだあるとはいえ、こんなことに巻き込んじゃって。」

「君が謝ることじゃないさ。 ボクはちょっと暇をもて余してたから、君の誘いに乗ったんだ。」

「ぼくも同じ。 それに一ノ瀬君から貰ったお試しの化粧品のお礼もしたかったから、ここで力にさせてよ。」

「私達も、出来ることは、出来るだけ、やれるように、しますから、よろしく、お願い、致します。」


 真面目の謝罪に刃真里、下、和奏の3人はそれぞれ感想を告げる。


 今回呼ばれたこのメンバーなのには、他の人が予定がつかなかったことも要因ではあるものの、それ以上に真面目が考えていることがあった。


 料理を食べて貰うには見た目のインパクトも必要である。 しかし昔ながらの大将と女将さんではその圧倒的さは弱い。 ならばと真面目を含めた若く、しかも人受けしそうな人選にしたのだ。


 とはいえ完全にそうとも言えない人選もあるわけだが、別に真面目はそこまで深刻に落ち込んだりはしていない。


「まずは配置についてですが、いろんな料理をする上で大将さん1人では絶対に回りません。 なので南須原さんにはそんな大将のサポートをお願いしたいかな。 南須原さんは接客じゃなくて、そっちの方で主に動いてほしい。」

「わ、分かりました。」


「お店が忙しくなったら僕も料理番に入るからさ。 それで次は配膳係と売り子についてなんだけど、それを浅倉さんと日賀君に任せたいかな。 もちろん日賀君は売り子を中心にしてもらいたけど。」

「任せて。 ぼくもお客さんにアピール出来るように頑張るよ。」


「お願いするよ。 それで鎧塚さんは女将さんとお勘定したり、清掃や食器洗いの方に回ってほしいんだ。」

「どうしてボクなんだい?」

「お店の中を常に巡回して、状況を把握して欲しいのと・・・まああとは僕らみたいな世代とその上の人たち世代への受け狙い・・・かな?」

「クスッ 分かったよ。 ボクの役割はそういうことなんだね。」


 かなり早足で説明していったが、みんなが理解してくれたようで真面目もホッとしている。


「あれ? それじゃあ一ノ瀬君はどこに入るの?」


 今の説明の中に真面目がいないことを疑問に思った岬は、真面目にそう問いかける。


「僕はその場に応じた対応をしようかなって思ってるんだ。 調理が足りないなら調理に回るし、掃除が行き届いてなさそうなら掃除もするし。」

「なるほど、一ノ瀬君はリベロみたいな立ち回りになるんだね。」


 真面目の立ち回り方に納得したのは刃真里だった。


「りべろ?」

「オールマイティーの方が分かりやすいかもね。 一ノ瀬君はサポートに徹する形みたいだし。」


 意味をいまいち理解できていなかった和奏に下フォローを入れる。


 一つのテナントに役割を振ってみて自分を入れていなかったことは実は真面目にとって誤算だった。 そんなわけで真面目は正確な役割を持たない立ち回りにすることによってそれを解消した。 もちろん負担は他の人よりも多くはなるものの、費用対効果を考えれば仕方の無いことと真面目は割り切っていた。


「それでここに集まった理由は?」

「立ち回りの説明もそうなんだけど、この店の中にある食材や機材を、テナントを用意してくれた業者さんがトラックで運んでくれるらしいんだ。」

「なるほど。 積み荷の手伝い。」

「力仕事にはなるが、よろしく頼むぜ。 なにせ男子がいっぱいいるんだからな。」

「大将、半分は元々は女の子です。」

「む・・・やっぱりいまいち慣れねぇな・・・」


 大将がそういうのも正直無理はないと真面目達も思っている。 見た目だけでは元の性別は分からないもの。 「見た目で判断してはいけない」を体現しているようなものなのだから。


 そう話し合っていると外でエンジンが止まる音がした。


「あんた、業者さん来てくれたみたいだよ。」

「そうみたいだな。 よっしゃ、それじゃあいっちょ運びますかね!」


 そうして業者の人とも協力のもとテナントで使うものをトラックに積んでいく。 流石にお店の鉄板は持っていけないので、代わりの鉄板は申請して用意されているとの事なので、持っていくのは大量の小麦粉や塩コショウ、そして前日までに仕入れておいた食材になる。


 あとは新しく買った家庭用ソフトクリームマシンや新聞紙や包装紙に包まれた食器などである。 こちらも割れないように丁寧に入れていく。


「それにしても凄い小麦粉の量ですね。 あとは焼きそば用の中華めん。」

「これでも大分減らした方なんだぜ? 買いすぎた自覚はあるがな。」


 色んな物をトラックに積み終えたら真面目達もそのトラックの他に来ていた軽ワゴン車に乗せて貰う。


「そう言えばぼく達って行き来はどうするの?」

「そちらにつきましては、運営である我々が送迎を行う予定でございます。 しかしテナントを借りている店長さんやそのご関係者様には、テナントを管理する役割を担うので、期間中に送迎するのはアルバイトの方のみとなります。」


 それなら問題はないと思った時に、また別の話が出てきた。


「こちらで朝のお迎えも致しますが、こちらに関しては送迎バスになりますので、お時間までに来られないお客様は自力で来て貰うことになりますことをご了承下さい。」


 交通手段があるだけでも真面目達にはありがたかったので、その辺りも帰りに説明されることになるだろう。


 走行している内に、真面目達を乗せた軽ワゴン車がエンジンを止めた。


「あ、着いたのかな?」


 そう思い真面目は窓のカーテンを開けるとそこに広がっていたのは


 一面の青と白に彩られた海であった。

次回「海の家 「曙」」編。


本格的にスタートです

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