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バイトの計画を立てる

 旅行が終わったその次の日。 目を開けて見て時間を見れば、9時を指していた。 珍しく起きる時間が遅かったのと、それだけ旅行で気力を使ったのだと思った。


 この時間帯になると普通の平日なので既に両親は仕事中だ。 特に起こしに来ることは無いので、そのまま寝ていたのだろう。


 お土産は渡したのを覚えているので、とりあえずは最低限のことは出来たことだろう。


 リビングまで降りると珍しくなにも置かれていなかった。 恐らくは朝食を下手に作るよりも真面目のペースに合わせた方が良いと思ったのだろう。 特に作らなかったので、どうしたものかと考える。


「そうだ。 バイトの話をしに行こう。 多分それなりに計画は出来ているかもしれないし。」


 そうと決まれば真面目は着替え直して、暑さの中を食事処「曙」へと走らせるのだった。 自分のお昼も兼ねて。


「いらっしゃいませ。 おや、珍しいね。」

「こんにちは。 例のバイトの事を話しておきたくて。」

「おう、そうだな。 その前になんか食ってけ! 話はその後でもできっからよ。」

「ありがとうございます。 じゃあ今日はスタミナ炒めお願いします。」


 注文を終えた真面目は店内を見渡す。 一応平日なのだが、お客の気配がほとんど見受けられなかった。


「夏休みなんだから、もう少し繁盛してもいいと思うんだけとなぁ。」

「ははは。 まあこんな見た目じゃあ厳しいよ。 あの人も私も、そう言った流行みたいなのにはちんぷんかんぷんなのさ。」


 美味しい料理を提供するだけで十分だと言わんばかりに大将は鉄板で肉と野菜を炒めている。


「それでバイトの事なのですが、どのようなお店を借りるのか決まりましたか?」

「うちはテナント出店になったよ。 初めてって言うこともあるから、大きな店舗は見込めないし、なにより一時的なイベントだから元々ある建物は利用できないしね。」


 そうこう話しているうちにスタミナ炒めがやってくる。 ついでに頼んでもないのにご飯と味噌汁も入れてくれた。 ご厚意に感謝しつつ、真面目は話を切り出す。


「出す料理とかは決めていたり?」

「おうよ! うちは鉄板焼き関係で行こうと思ってな! 焼きそばやお好み焼き、最近はイカ焼きも試行錯誤で完成したところなんだ! ただまぁ、そこだけなんだよなぁ・・・」

「私も色々と考えてみたんだけど、テナントがそこそこ大きいから、人手がもっと必要だと思うし、なによりアルバイトに来てくれるのは嬉しいけど、衣装が無いのよね。」

「衣装が?」

「一応アルバイトの広告も外に貼ってはいるから、うちのオリジナルのシャツは3、4組あるんだが、それじゃあ売り子にしては弱い気がしてな。 でもこれ以上服に予算はかけられないんだ。 新しい機材も今回のために買っちまったし。」


 そう言って下の棚から取り出したのは、まだ未使用の箱に入ったままの家庭用の機材だった。


「それは?」

「ソフトクリームメーカーってやつさ。 暑い時にはアイスだろ? こいつも使って売り上げに貢献出来りゃって思ってな。 アイスの素も買っちまってるし、これ以上の予算は無いって考えたらよ。」

「容器は最悪ギリギリまで買わなければいけるから、とりあえずはお店に出す商品を考えてたわけ。」

「そうなんですね・・・」


 真面目は食事をしながら考えていた。 テナントならばスペースはあるだろうし、それに見合った料理も提供される。費用対効果のことも考えると、と真面目は頭を回していた。


「正直俺は頑固もんだからなぁ。 こうやって料理をするだけでもいいんだけどよ。 そいつやお前さんを動かすには酷ってもんなんだよ。」


 強面感の大将の期待は裏切れないと少しずつ頭を回転させる。 そしてある結論を出した。


「あの、料理は使い捨ての容器にしようとしてますよね?」

「そうね。 その方が持ち帰りもしやすいだろうし。」

「ならまずはそれを止めて、ここで使われている食器で提供しませんか? お持ち帰りが出来るようにするのではなくて、お店で食べてもらうんです。」

「確かにそれなら経費は軽くなるけどよぉ。 みんな海に来て遊びたいんだから、持ち帰りの方が良いんじゃないか?」

「客層を変えるんですよ。 僕達が狙うのは家族連れや休みたい人達に向けて席を多く確保するんです。 それによってゴミも出なくなるでしょ?」

「それは確かにね。」


 いくら海辺が近いからとはいえ、やはりきれいに使ってもらいたいと思うのは性からだろう。


「服の方はそのまま使わせてください。 その方が宣伝にもなりますし。 後人手は僕の方が用意しても大丈夫ですか?」

「それは構わないけどよぉ、タダ働きみたいになるかも知れねぇぜ?」

「そこはまあ、僕がなんとか説得しますよ。 なので服についても大丈夫です。」

「テナントだから机や椅子は貸してくれるみたいだからちょっと多めに借りようか。」


 予定がどんどんと組上がっていく中でも、大将は少し疑問に思うこともある。


「それで配置とかは考えてあるのか? 店の間取りは決まっちまってるが、どうする気だい?」

「何人かは大将のお手伝いをさせます。 混むことも想定はしていますので。 あ、それと小麦粉ってどのくらい用意したんですか?」

「おう! それはたっぷりと頼んだぜ! 全部使えなくてもここで使うだけだしな。」

「この人ったら妙に張り切る癖があるからね。 大は小を兼ね無ければ私も良いんだけどね。」


 いったいどのくらいの量を頼んだのか真面目であったが、気にするところはそこではなく、むしろそれだけあるのならば好都合かも知れないと思った。


「奥さん。 ベーキングパウダーってあったりしますか?」

「ベーキングパウダー? たまに使ったりはするけれど、それがどうかしたの?」

「これを見てもらえますか? パンを作るのにイースト菌じゃなくても代用は出来ます。」

「・・・へぇ。 普通のパンみたいにはいかないけど、確かに作れるんだね。 でもパンなんて作ってどうするんだい?」

「二次戦略みたいなものですよ。 それまでにパンは焼けるようにしてもらえればいいので。」

「お前さん、色々と考えてくれてるんだなぁ。 俺達だけじゃここまでのことはまず思い付かないぞ。」


 言われてみるといち学生である真面目があれやこれやと突っ込みを入れるのは色々とおかしい話ではあるのだが、どうせ1週間もないのなら、そこで縁を深めるのも悪くはないと思った。


「あ、そうだ。 せっかくだからこれを自由研究に使わせてもらおう。 タイトルは「集客競争における商品の消化について」かな。」

「本当に色々と考えるなぁ お前さんは。」


 そう言いながら今回のところは真面目も一度帰ることにした。 また課題に取り組むためである。


「それじゃあ僕はこれで。 これお代です。」

「おう、今日はありがとうな。」

「またお盆に入る前に一度顔を覗かせますね。」

「本当にありがとうね。 また来てな。」


 そう言って真面目は店を後にした。 そしてスマホで今回のアルバイトに相応しそうなメンバーにMILEを送り、コンビニで飲み物を購入した後に家に帰るのだった。

この話をきっかけに色々と考えて行けたらと思っています

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