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漫画喫茶に来ました

 真面目が隆起に連れられて来たのは、あるビルの前。 その窓の所に「漫画喫茶」と書かれていた。


「漫画喫茶って・・・こんなところに出来たんだ。」

「正確には前の店が潰れて改装したって感じだけどな。 まあ使い勝手がいいから俺は普通に利用させて貰ってるがな。」


 それなら信頼できるかと真面目は思った。 そもそも普通に運用できている時点で怪しい店ではないだろう。 そもそもがなんの店だったのかの方が気になるが。


 受付は2階らしいので、階段から入っていく。 そして2人で受付まで歩いていく。


「真面目。 まず会員登録して貰うんだ。 そうすればその後からはあれで全部済ませれるからよ。」


 そう言って隆起が指を指したのは精算機で、一度でも利用すればあとは自動でやってくれる優れものらしい。


「いらっしゃいませ。 初めての方ですか?」

「あ、僕が初めてです。」

「畏まりました。 学生証もしくは身分を証明出来る物はお持ちでしょうか?」

「あ、それなら・・・」


 そう言って真面目は学生証を取り出して店員に確認をして貰う。 こうして直接学生証を遣うのは何気に初めてではない。 というのも岬とのファミレスでたまに使っていたからだ。 特に抵抗はない。


「・・・はい。 確認が取れました。 ではこちらにサインを。」


 真面目は渡された紙に自分の名前を書いて店員に返す。 それと同時に店員から会員証を貰う。


「こちらがあれば受付での案内をあちらの機械でご利用になられます。 またお客様は学生となりますので、入会費は無料となっております。 それではどのような部屋をご利用になられますか?」

「それなら個室をお願いします。 2人入れる大きさの部屋で。」

「畏まりました。 ・・・では4階のお部屋になります。 ドリンクバーのは3階になります。 それではごゆっくりおくつろぎ下さいませ。」


 そう案内されて真面目と隆起はエレベーターへと進むのだが、真面目には1つ気になっていることがあった。


「ねぇ、お金って後払い制なの?」

「おう。 時間によって値段が変わるからな。 先にいる時間をこっちで決めて、あとは時間に合わせて清算するんだよ。 だから24時間いても金さえ払えば利用できるって仕組みだ。」


 真面目はこのような施設を利用するのは初めてだった為、どういったシステムなのかが分からなかったのだ。 今後利用する時のために覚えておこうと真面目は思った。


「へぇ、個室なのに結構広いんだね。」

「元々が2人用だからな。 1人で使うならカフェスペースで十分なんだけどな。 どうせ話し声で煩くなるし今回はこれくらいでいいんだよ。」


 個室のなかには座布団が二枚、パソコンモニターが1台の簡素な作りではあったものの、内部はかなり広かった。 溢れないようにするためかドリンクホルダーも付いていた。


「んじゃ、飲み物でも取りに行こうぜ。」

「え? じゃあ僕は待ってるから先に・・・」

「個室だし監視カメラも近いから盗みを働く輩なんかいねぇよ。 心配すんなって。」


 安心だと分かっていても気になってしまうのは、やはり真面目の性分だろう。 とはいえそこまで安全だと言われたのに行かないのも不思議なので、一緒に行くことにした。


 3階に行くとドリンクバーの機械があり、更にその横にはソフトクリームの製造機もあった。


「こういった場所ってソフトクリームも無料なんだよな。」

「じゃあソフトクリームも利用している間はずっと食べられるってこと?」

「便利だろ? カラオケ店よりも全然有用出来るぜ。」

「へぇ・・・所で漫画は何処に?」

「多分5階だろうな。 階層ごとで場所が区切られてるっぽいからよ。」


 その辺りもいつかは使うことになるだろうと思いながら真面目はスポーツドリンクを、隆起はエナジードリンクを入れて個室に戻る。


「で、だ。 ここにお前を連れてきた理由はこういった場所が出来たって言う報告と、募る話をしたいと思ってな。」


 それは真面目も思っていた。 折角会えた同志なので語り合いたいのは互いに同じ想いだったのだろう。 真面目と隆起は向かいあうように座った。


「にしてもお前、随分な物を貰ったみたいだな。」


 隆起の目線の先は完全に胸元に行っていた。 とはいえそれも仕方の無いことだろう。 元男子だった故に、夢が詰まっているのだから、目線で追ってしまうのは性というものだ。 その視線を受けて、真面目は胸を隠すように手で覆った。


 何度も繰り返しになるが、見た目が女子でも中身は男子の心。 同性だと分かっていても恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。


「まさか自分にこんなにも胸が膨張するなんて思ってもみなかったんだよね。」

「基準がいまいち解明されてないもんな。 親の遺伝もあれば、全く関係無い肉体になったりするって話だもんな。」


 隆起の言うように、年齢と共に性別的肉体構造が逆転するのは分かっていても、見た目に関しては定まっている基準がないのだ。 性格や嗜好が変わらないのは当然でも肉体的な理由に関しては原因は分かっていないのだ。


 反映されるのも「ある程度」の範囲なので、筋肉質な男子の肉体ならばそれが女子の身体になっても少し反映されるし、肌ケアがしっかりした女子の身体ならば、それが男子の時でもハリが出る。


 だが決定的な肉体変化の方は不明のままだ。 理由も分かっていない。


「なぁ、やっぱり重いのか? 触ってみた感じはどうなんだ?」

「いつかは絶対誰かに言われると思ったんだよね、その質問・・・」


 溜め息はつきつつも、初めて質問されたのが隆起で良かったとも感じていた。 知らない生徒だったら抵抗はあったが、まだ理解の出来る人物ならば話をしてもいいと思っていた。


「まあ重たいよ。 いきなり胸に硬式バレーボールを入れた気分だよ。 しかも急にだったから余計に重たく感じたよ。」

「今はどうなんだ?」

「下着で上げてるからそんなに苦じゃないよ。 でもやっぱり肩に来るね。」

「アニメとかだと平然としてるのにな。」


 そう言われるとアニメの胸が大きいキャラはどうやって暮らしているんだろうと考える。


「というかお前としては気分は複雑なんじゃね? 胸が大きいキャラはあんまり興味無いもんな。」

「・・・その言い方は語弊があるから止めて。」


 そんな言葉に真面目は「ムッ」と顔を怒らせる。


「まあそう怒るなって。 俺だってもっとそれらしい身体が来るかと思ってただけに、残念だと思ってるんだから。」


 隆起の場合は背は高めになったが、それ以外が育たなかった事にちょっと残念がっていた。 自分の望む身体にならなかったのは今後を生きていく上でのモチベーションにも繋がると隆起は言っていた。


「これからお互いに大変そうだね。」

「そうだな。 おっと、なんか漫画でも持ってくるか?」

「このパソコンは何が使えるの?」

「何でも使えるぜ? 調べたり動画見たり、もう少しお金を掛ければゲームだったりアダルトだったりも出来るぜ。」

「そこまではしなくてもいいかな。 漫画の方は・・・また別の機会にするよ。 今は隆起君と話をしたいしね。」

「お? なんだ? 密室で気分でも高揚したか?」

「それは冗談で言ってるよね? だよね?」


 隆起は「キヒヒ」といった具合に笑っていた。 流石にその辺りは線引きをしなければ元に戻れないような気もしていた。


 そして友達として話を出来る部分をとことん話したり、動画を2人で干渉したりしている内に、時間はあっという間に過ぎていった。


「おっと、そろそろ出るか。」

「うん? もうそんな時間?」

「こういうのは自分達で管理するんだよ。 後10分くらいで料金が変わるから出る準備して出るぜ。」


 そう言って2人は個室を出て、料金を払ってから漫画喫茶を出ることにした。


「いやぁ、久々に話し合ったなぁ。」

「まだまだ語り足りない部分もあったりしたけどね。」

「それはまた次の機会にでもしねぇか? そっちはこれから飯の準備するんだろ?」


 隆起は中学時代に真面目の家を何度か訪れたことがあるので、真面目の家庭事情はなんとなく知っていた。


「準備って言ったって僕が直接やる訳じゃないんだけどね。」

「でも少しでもやっておくのは偉いと思うぜ? ・・・にしてもなんか本当に違和感があるな。 分かっていても声とかがなんかなぁ。」

「それは言わない約束でしょ。 でも明日からはちゃんと話せそうだね。 それだけでも少し安心だよ。」

「だな。 それじゃあな。」

「うん。 あ、そうだ。 連絡先交換しておかないと。」

「っとと。 そうだな。」


 そうして交換をした後に改めて分かれて、それぞれの帰路に帰るのだった。

密室で女子二人


なにも起きませんでしたw

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