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個性の出る武器と技

 クエストが開始されて訪れたのは砂漠のキャンプ地。 ここから支給されているアイテムを持っていきクエストへと励む、というのが下側のプレイヤーは行う。


「最初に出現するのってどこだったっけ?」

「あそこだろ? 砂漠なのに唯一寒い場所。」

「それなら道なりはこっちの方が近いね。」


 だが既に上側の3人は支給品などお構いなしに移動をする。


「流石経験者なだけはあるね。 こう言った支給品はいらないの?」

「いらないって言うよりも、必要最低限は自分の手元に揃えてあるって感じかな。」

「そもそも上側のクエストになると、キャンプ地でのスタートの方が珍しいからな。 支給品は後から配布されるし、ビーステッドが強くなるから、時間が掛かるんだよ。」


 真面目と隆起からそんな受け答えをされた刃真里は、本当に手慣れているんだと感じていた。


「まあ、あるものを持っていかないって言うのも、なんだか変だけどね。」


 一方で何だかんだと支給品を取っていた得流は半分程取ってから真面目達に着いていく。 刃真里もそれに習って残りの半分と弾を持ち込んで追いかけた。


「さーて、見つけたぜ。 下側とはいえお前は油断ならねぇからなぁ。 重たい一撃は入れさせて貰うぜ?」


 そして目の前で対峙しているカバのようなビーステッドに隆起は吠えた。


「サンドヒポポ」ビーハンでは初めてのビーステッドで、3RDの最初を象徴させるかのごとく、その動きはカバの突進力と大きな口のかみつき攻撃、そして口からの砂吐き攻撃をしてくるビーステッドである。


「砂漠に出られる前に削っちゃおう。 ここで体力を落とすだけでも時間はかなり短縮されるから。」

「それならボク達」

「後衛武器の出番だね!」


 そう言って得流が背中に背負っていた円盤を縦向きに投げる。 そして敵に当たる前のタイミングで手元にあるフックのようなものを引き寄せる。 すると円盤の中から針が飛び出して、サンドヒポポのお腹辺りに針が当たっていく。


 一方でボウガンの弾を装填し終えた刃真里も構えて敵の足下めがけて弾を発射していく。 見た目は地味だが同じ部位を狙っているため、そこにダメージが蓄積して、サンドヒポポは一瞬だけよろける。


「その隙は逃さないよ!」


 真面目が怯んだサンドヒポポの足下めがけて自慢の鞭を絡ませる。 これが真面目が得た新しい鞭の使い方。 相手の身体に鞭を絡ませる事で、一時的ではあるが拘束することが出きる。 ただしそれは相手の大きさやダメージ量にも比例する為、この序盤でそこまでの拘束力は期待できない。 なのでサンドヒポポも拘束はされたものの、すぐに振りほどいてしまう。


「まだ一秒が限界か・・・でもその一秒で今はいいんだよね。」


 その一秒があったからこそ繰り出される、溜めに溜め込んでいた、一撃のために真面目達は攻撃を仕掛けて敵の目を逸らしていた。 そしてその一撃はサンドヒポポのお腹辺りに注がれる事になる。


「これで、まずは1回目!」


 そうして隆起の重たい攻撃がヒットした。 サンドヒポポはこれ以上食らわないようにと一度地面に潜る。


「地面に潜ったよ!」

「これは・・・移動だね。 先回りして罠を仕掛けに行こう。」

「あいつってスタントラップって効いたっけ?」


 そんなこと話し合いながら真面目達は少しずつ敵を追い詰めていく。


「そういえばサンドヒポポは捕まえる? それとも討伐にする?」

「捕獲の方が報酬はいい素材が貰えるんだっけ?」

「その分倒さないようにしないといけないのが難点だがな。 だからこそ聞きたいんだよな。 下手すると一撃によっちゃ倒す可能性があるからよ。」

「そう言うことならボクは構わないよ。 無理して捕まえたいとは思わないし、なにより上側に行けばその機会はいくらでもありそうだし。」

「それじゃあ出し惜しみはなしだね。」


 そうして目の前の、瀕死に近いサンドヒポポを前に、4人は立ち向かう。 ビーハンは敵も瀕死に近付くと、生存本能が刺激されて、より狂暴になるのだ。 死を間近にした獣は、起死回生の一手を取ってくるものだと、真面目、隆起、得流は知っていた。


「どうする? 相手はAIとはいえ、同じ攻撃を食らうわけもないだろ?」

「そうだね。 今度は起点を変えてみようか。」

「起点って?」

「出だしはいつも近野さん、「L」の攻撃からだったでしょ? だからここは別の人が最初を勤めるって事だよ。」

「そう言うこと。 んじゃ今回は俺が行くかな。 斧にはこういう使い方もあるって事を、教えてやるぜ。」


 重装備ゆえに動きは遅いが、サンドヒポポの攻撃を受けても簡単には仰け反らず、むしろ食い止めた上で、大きく開けたサンドヒポポの口をまるで格子を填めるがごとく斧を差し込んだ。


「これでお前はしばらくはブレスも出来ないぜ。 あんまり長くやってると武器をぶっ壊されるから、長くは出来ないけどな。」


 その間に得流の円盤が口の中へと入っていき、その中で針を飛ばしている。 やっていることだけ考えればかなり残酷だがこれはゲームであって、敵はビーステッド。 情けが無いわけではないが、そこは割りきらなければならないのだ。


「おっと、そろそろ潰されるな。 外させて貰うぜ。」


 痛みを感じていたサンドヒポポは唐突に斧が抜かれたことによって、口の上下が一気に閉じられて、そこでもダメージを受ける。 そしてそんな口元へと真面目の鞭が縛り付ける。


「サンドヒポポは口を開けるのは早いからねぇ。 これで止めを指しちゃってよ、鎧塚さん!」


 そう言われて装填を終えた刃真里が固定砲台のようにボウガンを固定して、そのまま同じ部位に弾を何度も打ち込んでいく。 そうしてようやく討伐完了のファンファーレが聞こえてきた。 これにてクエスト完了だ。


「ふぃー、討伐完了だな。」

「そうだね。 でもこれで鎧塚さんも上側に入れたね。」

「ありがとう。 みんなのお陰だよ。」

「同じビーハン仲間なんだもん、これくらいは出来るよ。」


 そして報酬として様々な素材を手に入れて、集会所に戻ってくると、刃真里は上側へと行く権利を貰えたのだった。


「ちょっと休憩しようぜ。 飲み物取ってくるぜ。」

「あたいも行くよ。」

「僕は待ってようかな。 鎧塚さんは?」

「ボクも2人が戻ってきてからにしようかな。」

「そうか、そんならちょっと待ってな。」

「ソフトクリームでも食べよっかなぁ~。」


 そうして部屋を出ていった隆起達を見送って、次なるクエストを真面目は模索していた。


「次はどうしようかなあ。 上側になったからまた料理クエストも新しくなってるし。」

「え? 料理クエストってあれで終わりじゃなかったの?」

「なに言ってるのさ。 ビーハンは上側についてからが本番なんだよ。 それにあの料理はまだまだ進化するからね。 今のランクだと最高まで行くのは難しいけど、それでも強化はしておかないと。」

「奥が深いんだね、ビーハンって・・・」


 今までやってこなかっただけに色々と初体験になっている刃真里を尻目に戻ってきた2人を入れ替りで真面目と刃真里も飲み物を取ってきて、4人は許す限りでビーハンをとことん楽しんだのだった。


 そしてビーハンを終えて帰宅中の真面目はふとあることを思い出した。


「いよいよ火曜日だなぁ。」


 そう、次の火曜日に真面目達を含めた6人は旅行へと進んでいく。 今までに経験のしたことの無い思い出を、真面目はワクワクしながら、家へと歩みを進めるのだった。

次回からはプール編をお送りします。


少し長めに書いていく予定ではありますので、どうぞお楽しみに

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