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夏の狩猟開始

 夏休みが始まって初めての週末を真面目はちょっとした休息日、もといその日だけは1日ビーハンをやることを決めていた。


 確かに課題をやることも大事ではあるが、元々は休みを堪能するものなので、まずは真面目なりの夏休みのひとつ、「ビーハンをとことんやり尽くす」事をしようと考えていたのだ。


 朝御飯を食べ終えた真面目は部屋に戻りすぐさまゲームを起動させる。 今の真面目のビーハンのクエストランクは「5」最大値は「9」なので丁度真ん中あたりにいる。 とはいえクエスト自体の難易度は上がっており、採取クエストですら一筋縄ではいかないのだ。


「1人で攻略するのは難しいけれど、なんとか解放は出来たし、1週間前よりはやりやすいはずなんだよね。 まあ先週はまだ村クエストやってたけど。」


 1日やると言ったものの、それでも定期的にはビーハンを遊んでいるため、料理クエストは全部終らせたし、農場の方もグレードアップはしてある。 高みを目指す上では必要な事ではあるものの、時間に手間を取られて出遅れている事は意外と否めない。 誰かと競いあっているつもりもないが。


「武器の種類をもう少し増やさないとなぁ。 そろそろ露骨な弱点を持ってくるビーステッドもいなくなってくるはずだし。」


 現在真面目の武器や防具は相応のランクに合わせて威力、防御力共に今の最大値になってはいるものの、ビーステッドによってはそれが無意味と化す可能性も否定できない。 それが「ビーステッドハンティング」なのだから。


「どうしようかなぁ。 ランクは上げたいけど、もう少し強化のために動く事になるかもだし、でも次の素材は今のクエストじゃ採れないし・・・」


 珍しく悩んでいると、真面目のスマホに通知が入る。


「ん? 誰からだろ? ・・・あ、ふーん。 ・・・丁度良いかもしれない。 そろそろ頃合いかもだったし。」


 真面目は送信相手に返信を送り、さらに別の場所にも所にも返信した後に、真面目は着替えて出かける準備をする。 そして最低限の持ち物と携帯、更にゲーム機を持って、本日も炎天下になる中を出るのだった。


 そして目的地に到着した真面目は先にとある人物達を待つために立っていた。 上からは太陽が、下からはアスファルトで跳ね返ってくる熱が真面目の身体に直撃する。 肌を直接見せていなくても、これだけ日差しが強ければ焼けてしまうだろう。 そんなことを考えながら待っていると


「おーい真面目! 待たせたか?」


 先にやってきたのは隆起。 元々はビーハンを2人で協力プレイするために買っていたので、隆起が来るのはある意味では必然的である。


「ほんのちょっぴりね。」

「なら問題ねぇな。 他はまだ来てないみたいだし。」

「そうだね。 そんなに早い訳じゃないと思うんだけどなぁ。」

「今は夏休み中だぜ? ゆっくりしたいんだよ。 今までの分までな。」

「まだ1学期が終わったばかりなんだけど?」


 そんな話を隆起としていると


「良かった。 場所はここであってるみたいだね。」


 現れたのはつば付き帽子を被った刃真里の姿があった。 帽子には「MARY」と書かれていた。


「誰だ?」

「僕のクラスメイトの鎧塚さん。 今回の相談者だよ。」

「うぇ!? じゃあビーハンやろうって言ったのって・・・」

「あぁ、まだ説明はしてなかったんだ。 初めまして、ボクは鎧塚 刃真里。 ビーハンでは「ロマリー」ってPNでやってるんだ。」

「お、おう。 木山 隆起だ。 PNは「ダンソウ」で通してる。」

「よろしく。 これで全員かい?」

「いや、あと一人呼んでるんだ。」


 そう言って待つこと2分。


「お待たせ~! ちょっと準備がかかっちゃった。」

「君が最後の人かい?」


 最後の一人である得流が来た瞬間に刃真里は詰め寄る。


「なに!? なに!? 誰!?」

「うわぁお。 完全に女子を掴むようなやり方してやがる。 ああなったらおしまいだな。」

「鎧塚さんは女子だよ?」

「元だろ? あんなに近寄られた状態なら同じだっての。」


 そう言うものかなと感じつつも真面目達は得流と刃真里をとりあえず引き離して目的の漫画喫茶の中に入る。


 前よりも人が増えたためまた一回り大きな部屋を使うことになった。


「このままいくとパーティースペースにまで持ち越されそうだな。」

「漫画喫茶なのにそこまでするかな?」

「まあまあいいじゃん。 とにかく始めよ? 刃真里の為にもさ。」


 あの攻撃を食らったのにも関わらず得流は普通だった。


「やっぱ女には通用しないとか?」

「それは・・・どうだろう?」


 その辺りは今の真面目達にも分からない感情である。 とはいえ変に意識して貰うのも困り者なので、ある意味では好都合とも言えるだろう。


 ローカルなだけにオンラインよりも早く集まることが出来た。 そして代わり映えしたみんなの装備を見て、それぞれ思うところがあるようだった。


「隆起君、完全にガチガチの装備にしたんだ。」


 斧を持った顔が牛の隆起こと「ダンソウ」頭も兜を被っているものの、特徴的な角のせいでまるわかりである。 そして重装備になっているため、防御は高いが、変わりに俊敏性は失われている。 それだけパワータイプに仕上げたのだろう。


「これからは重戦車のダンソウと呼んでくれ。」

「自分から突っ込みにいくの?」

「やってることがミノタウロスそのものだね。」

「そう言う「L」だって、その後ろの盾みたいなのはなんだよ。」


「L」へと視点を向けられて、その説明をしようとする。


「これ? 私の新たな武器だよ?」

「そんな盾で攻撃するのか?」

「隆起君違うよ。 これは「円盤」だよ。 かなり大きいね。」

「一ノ瀬正解。 これをね、敵の前に投げた上でそこから派生攻撃をするんだよ。」

「なかなか癖のありそうな武器だね。 ボクはこのボウガンがしっくり来て良かった。」


 ロマリーが背負っているのはガチガチのボウガンだった。


「その分防御力を減らしてるみたいだからな。 攻撃を受けても自己責任な。 全体回復用のアイテムもまだ完全に揃えられてないんだよ。」

「大変だよねあれ集めるの。 まあ今回行くクエストはまだ優しい方だけどね。 とりあえずロマリーが受注してきてよ。 僕達が行ってもフラグは立たないから。」

「分かった。 ちょっと待ってて。」


 そうしてロマリーを集会所の下側の受付に行った。


「つーかセノーもとんでもないもの持ってないか? それが武器の「鞭」なんだろうな。」


 真面目の操るキャラであるセノーの服装や武器を見てそんな感想を述べる。 色々と遠回りにはなったものの、作れたことには今の真面目は誇りに思っていた。


「威力はないけど範囲攻撃が出来たり相手を拘束できたりするからさ。 今のこれは重宝するんだ。 まあもっと強いのを作れるようになったらそっちにするけどね。」

「愛着は捨てないものだぜ? まあこのメンバーでなら勝てるだろ。」

「お待たせ。 掲示板に貼っておいたから何時でも行けるよ。」

「よし。 とっとと終らせるか。」


 そうして真面目達の夏休み初めての協力狩猟が始まるのだった。

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