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いくつかの注意喚起

「んんっ、んんー! はぁ。 身体が鈍りそうだよ。」


 三連休も開けて、後数日程になる学校への登校。 流石に抜けきらなかったのか、身体を伸ばしても身体は硬いままだ。


 薄手になったことで胸を張る形ではあるので、視線は少し集まるものの人が少ない今では気にならない。


「おはよう、一ノ瀬君。」


 そして岬といつもの場所で合流する。 伸ばしていた身体を元に戻しながら、岬に声をかける。


「おはよう浅倉さん。 三連休はどうだった?」

「いつも通りの休日だった。 珍しくお父さんもお母さんもいたから一緒に出掛けた。 そっちは?」

「僕は夏休みに向けての準備をしてたかな。 準備って言っても服とかをね、買いに行ったんだ。」

「服?」

「まあ水着って言った方が早いかな。 ほら、近野さんの旅行に向けてさ。 女性用の水着なんて学校用以外持ってないし。」

「なるほど。 それは楽しみ。」

「別に浅倉さんだけに見せるために選んだ訳じゃないからね?」

「それでも考えて選んだんでしょ?」


 そんな言い方をされて、少しだけ気恥ずかしくなる真面目。 どうも心を玩ばれている気がして仕方がない。 とはいえ少しでも夏休みを楽しむためにはそう言ったところもしっかりと考えておきたかったのだ。


「そういう浅倉さんの方は夏休みに向けてなにか買ったの?」

「水着に関しては買った方が良いのかなって思ってる。 お父さんの水着でも借りようかな?」

「それ浅倉さんとしてはどうなの?」


 衛生面をあれこれ言うつもりはないものの、父のお下がりをそのような形で受け継ぐべきなのだろうか。 自分が男だった頃でも、流石にそれはしなかった。


「プールの日までにはなんとかする。 気にしないで。」

「いや、気にはしないけれど・・・」


 そんな他愛ない会話を続ける真面目と岬。 学校に着くまでのこの時間も夏休みに入れば一時的には出来なくなる。 何気ない日常から変わっていくのだろうと思いながら学校に着いた。 教室について自分達の席に着くと、少しの時間で人が集まってくる。そんな中で真面目はある人物を待っている。 そしてその人物が入ってくると同時に声をかける。


「おはよう鎧塚さん。 今大丈夫?」

「おはよう一ノ瀬君。 どうかした?」

「昨日ビーハンに入ってきたよね? その事で話がしたくってさ。」

「あぁ、昨日の事。 なにか悪いことでも?」

「なんで悪いこと前提なの? 違うって。 フレンド登録まではしたけど、こっちだと連絡取りにくいなって思って。」

「連絡先が欲しいってこと?」

「もしくはMILEの登録が欲しいかな。」


 そう言いながら真面目はスマホを取り出す。 真面目にとって連絡手段もとい通話手段が欲しかったのだ。 ゲームをしながらのチャット通話はかなり面倒になるし、なにより近しいならば通話もしやすいだろうと考えたのだ。


「なるほどね。 それなら交換しようか。 あ、でもボクと君たちじゃ入る時間が異なるかも。」

「そういう時にこそ連絡できるようにしておきたいんだ。 ・・・はい。 これで僕達はビーハン仲間だね。」

「初心者だから足手まといになるかもしれないけど、これからよろしくね。」

「最初なんてみんな足手まといからやるものだよ。 特に今回みたいにオンラインはね。」


 ビーハンにとっては初めての試みではあるものの、そこはやはり他ゲームとの差別化も計られるだろう。 そして身内ならば身内なりのやり方も必要である。


 そんなことをしていると、HR開始前のチャイムが鳴り、席に皆が座る。 そして担任からの連絡事項としてある紙が配られた。


「これから夏休みに入る訳だけど、昨今問題になった記事をこの紙に載せてあります。 良く確認して夏休み明けに全員揃っていることを職員一同願っております。」


 配られた紙に書かれていたのはこのような記事だった。


『新たな犠牲者? 高校生による不純異性交流による性行為により、妊娠状態に。 中絶を拒む声も。』


 載っているのは真面目達がまだ小学生の頃に出されていた記事で、まだ性転換が認知されずに、政府が対策を講じていない時に起きた事件である。


 今では性転換時期による不純異性交流による性行為は犯罪級の重罪になる。 それだけ身体に負担がかかるし、なにより時期が悪くなれば、男の身体から子供が産まれるという、この世の理を無視するかのような状態だって起きることを危惧していたにも関わらず起きてしまった実際の事件である。


 今となってはそれがどれだけ恐ろしいことか分かるようになっただけに、そう言った事件が著しく減少はしたものの、一定数はいるままであることには変わらず、完全に無くなることは無いが、より重罪に近しい行為を行うようにもなっている状態になりかけていることにも事実である。


 もちろんそんなことの当事者になってはいけないし、間接的にも関わってしまわないように取り締まっているのもこの時代に生きる若者達は知っている。


「こんなことが未だに起きるなんてねぇ・・・」


 真面目は1時限目の授業が終わった辺りで先ほどの記事を見返していた。 こういった事件は今でこそ少なくはなっているらしいのだが、それでもごく稀にニュースの特番なんかで出されたりはしている。 だがそれが今の若者に何の窮屈があるのか真面目にはよく分からなかった。


「さっきの新聞?」


 読み返している真面目に岬が近付く。 大した用事は特に無いのだが、席が離れているため声をかけるにはどちらかが近付く必要があるのだ。


「僕達には関係無いことの筈なのに、何でか他人事じゃない気がしてさ。 尊厳の話を考えたら、やっぱり今の肉体でやりたいだなんて思わないんだけど。」

「でも休みの間は学生は大人の目の届かないところまで行く。 今の法律も、私達みたいな若者に向けて改正されていることの方が多い。」

「公民の授業で言ってたね。 時代背景を知らなければ絶対に起こり得ない事象って事だよね。 これって。」

「逆に日本だからこの程度で済んでる可能性も高い。 海外の方が無法地帯って聞くし。」


 不純異性交流はまだ未成年である真面目達にとっても良くないことだ。 それでも何のためにやるのかまでは理解しきれないし、法で縛られているなら、なおのこと手を染めてはいけないと、今の時代の人達は分かっている。 先人からの教えは乞うものではない。 学ぶものだ。


「夏休みでの注意喚起って、これだけで済むと思う?」

「生活リズムの話はされるだろうし、学生としての自覚の話も出てくると思う。 一概には言えない。」


 そのくらいは出るだろうなぁと思いつつ、真面目と岬は改めて席に着き、授業を受ける。 真面目達の言うように、終業式前に生活面や年齢面、そして友人達とのつきあい方についても、色々と述べられた。


 そして数日後、学生達が待ち望んだ日が遂にやってくる。


『それでは皆さん。 2学期に無事な姿で、私達とお会いいたしましょう。 以上で終業式を終わります。』


 その校長先生の挨拶で学生達は、一時的に学校から解放される瞬間が訪れたのだった。

次回からは夏休み編に入ります


かなり長めに書く予定でありますので、今後ともよろしくお願いいたします

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