オンライン集会場
連休最終日の朝。 真面目は目を覚ます。 流石に昨日外で歩き回ったせいか、身体の疲れが完全に取りきれていない。 真面目にしては珍しく身体をベッドに身を任せていた。
そして20分ほどした後にリビングに降りる。 両親は既に出勤していて殺風景な部屋になっている。
「まあ全員が早いのはいつもの事だけど。」
時刻を見れば午前7時30分。 出勤時間であることは変わり無い。 真面目が起きてこなかったからか、それとも急いでいたからか机の上にはサンドイッチが置かれていた。
「あ、置き手紙。 ええっと「今日は早めに出勤するから、そのサンドイッチは適当に食べて。 今日は早く帰れるかもしれないから、洗濯物もやっちゃって。」か。 洗濯物の事だけ伝えれば良いのに。」
変なところで律儀な母に笑いながらも、テレビを付けてからソファ側にサンドイッチを持っていき、そのまま手を付ける。 これを基本的にしないのは一ノ瀬一家は食事に集中したいのと、床が汚れやすくなるためだ。 しかしテレビを見ながらとなればこの方法が近くなっていいのだ。 食卓から見るテレビは首を捻らないといけないので大変見づらいのだ。
「こうやって普通のニュース番組見てると全然休日って感じがしないな。」
ニュースでは「海の日特別編 夏に向けて楽しむ方法」何て言うものをコーナーとして放送しているが、真面目にとっては興味の無い話でもあったりする。
溶けたチーズにベーコンを挟んだサンドイッチトーストを食感と共に楽しみ、自家製のアプリコットジャムがふんだんに塗られたサンドイッチをそれぞれ食べる。 チラリと冷蔵庫の上を見れば昨日買ってきた食パンの袋があることから、残っていた方の食パンで作ったのが伺える。 余計に買ったりはしないのだ。
「ごちそうさまでした。 今日はどうしようかな。」
真面目は朝食を食べ終えた後で考える。 土曜日は雨で家にいた。 日曜日はこれからのお出掛けに向けて準備をした。 ならば三連休の最終日は果たしてなにをやるか。
食器を適当に洗ってから冷蔵庫の中身や納屋を見る。 昨日買ってきたとは言え夕飯以外で食材を使う気にはなれない。 惣菜パンで済ますのが一番だろうと考えた真面目は納屋と冷蔵庫を閉めて再びテレビを見てから、部屋に戻って、ゲームを起動させる。
「とにかく今日でストーリークエストを終わらせて、集会場のクエストに行かないとなぁ。」
ビーステットハンティングは村長からのお願いとしてクエストを受ける「ストーリークエスト」があるのだが、クリア前提なら全部をクリアしなくても、一部のクエストのクリアで済むので先に進めてしまう人も多かったりする。 真面目は装備を整えてから行くタイプなのでそうとは限らない訳だが、ペースを乱されている訳ではない。
そんなこんなでクエストを達成してエンディング、と言うよりもスタッフロールを終わらせた真面目は、今の装備や資金を確認したところで、今一度集会場に入る。
集会場では村とは違い、受付嬢がいたり、食事の出来る場所が用意されていたりと、なにかと設備が整っている。 そして今真面目が入ったのはオンライン集会場。 様々なプレイヤーが入り浸っているが、どこかのパーティーに入らずに、ソロモードでも十分に遊べる。 そもそも最初から見知らぬ人とやらなくてもこのゲームは楽しめるので、無茶な難易度に挑まなければ問題はないのだ。
「さてと、まずは下側のクエストからやり始めないとね。」
この集会場にはランクと言うものが存在して、ただクエストをこなせば上がるものではなく、ある程度自分達の実力に見合ったクエストを用意されるのがビーハンの通例で、最初は村と同じクエストを繰り返すことになる。
だが下側のクエストをこなせば上側のクエストに行けるようになり、敵も強くなる変わりに素材も良くなる。 今後の攻略のためには上げておきたい所である。
「とりあえずは普通のクエストに行かないとなぁ。 最初は採取クエストだから同じだろうけど。」
そう言いながらもしっかりとクエストはやっていこうと考える真面目。 もちろん下側の人達もちらほらいるわけだが、真面目が遅れたわけではないので、問題はない。
「早速グキャースカには挑まないでおいて、特殊ななにかがあるはずだし。 あ、あの料理の所はやっておいてもいいかも。」
台所のような場所からなにか特別なクエストがあると感じたが、今は自分のランクを上げることを優先しようと思い、クエストへと赴いた。
それから大体1時間程。 まずは資金集めに成功した真面目は装備を少し見に行くことにした。
「素材自体はあったけど、村のクエストだと報酬金は多くないからね。 それにアイテムの話となるとなおのこと大変だ。 その為に農場もやってるけど、装備品だけは高いからねぇ。」
色々と武器を確認しながら染々とハンティングのツラさを噛み締める。 真面目が今持っている鞭は固さとしなやかさを兼ね備えた武器で、村のクエストの高難易度にあたる依頼のビーステットを倒した時の素材の武器だ。 生半可な戦いでは入手は難しかっただろう。
その分防具が若干貧弱になってしまっているので、今あるものだけでまずは取り繕うことにしていたのだが、お金と素材があるので、ある程度は一式を揃えられるようになった。
身体が鳥人なだけに防具にも特徴がある。 真面目の鳥人は普段は腕に羽を折り畳んでいるタイプの鳥で、飛ぶと言うよりは滑空の方が近い鳥をモチーフにしている。 本当に飛べるわけではないのだが。
それも踏まえてか、防具の腕の下側と両脇部分からあばら骨辺りまでは隙間が出来ていたりする。
下半身は流石に完全な鳥ではない。 せいぜい尾びれがある程度だ。 その部分に穴を開けてしまえば邪魔にはならない。
そうして選んだ一式装備でふたたびオンライン集会場へと行くと、少し見ない間に人は増えていた。 丁度お昼時なので集まってきたのだろう。
「やっぱり上側に行く人も多いんだろうなぁ。」
真面目は感心している。 とはいえそんなことよりも自分の状況を進めなければと思った矢先にわ誰かからかチャットが届く。 チャットシステムがあるので、ソロで潜っている人でも誰かしらに声をかけられるのだ。 具体的に言えば即席パーティーで難敵を倒しに行くなどが望ましい使い方だ。
そんな中で呼ばれた真面目はその送り主の方を見ると、狼人のスキンのようで、耳はピンと立っており灰色の配色で、口元も普通の人ではなく狼よりになっている。 人と狼を足して2で割ったような出で立ちだ。
【こんにちは、ええっと、クエストの同伴の依頼ですか?】
真面目はまだ集会場のクエストは始めたばかり。 声をかけられる可能性があるとするならば真面目と同じ、もしくは村のクエストを進めないでこちらを優先しに来た人くらいだろう。 そんな風に思いながらその人物の元に寄り添う。
【もし人違いならそれでいいんですけど、聞いてもよろしいかな?】
スキンが男性と言うこともあってかかなり紳士的な喋り方だ。 いや、ゲームに合わせるために、チャットの言葉を選んでいる可能性もある。 どっちみち相手が分からない以上は話し方にも気を付けなければと思っていた真面目だったが、相手は衝撃的な言葉をチャットに流してきた。
【もしかして、一ノ瀬 真面目君、じゃないかな?】
今回出している【】←この吹き出しはチャット文として分けて使用しています。
直接喋る機能は付けておりません




