女性服の買い物は長く
翌日になり真面目は壱与と共に買い物に出掛ける。 まずやってきたのは前回もお世話になったスーパー。 やはり安さを考えてしまえばここになってしまうのだろう。
「真面目、野菜は形よりも量を選んできて。 キュウリと茄子は必ず欲しいわ。」
「分かった。 後はなにがいる?」
「レタスともやし、あとはそれなりに安そうなら持ってきて。」
壱与が波に埋もれる前に行った言葉であるが、真面目も最低限の物は取れるようにすぐに移動する。 壱与は肉コーナーへ行ったので、真面目は野菜と役割分担をしていた。
「とりあえずは茄子からかな。 前は大きいのを買ったけど、今回は小さくても構わないし。 キュウリは本数が見合っていれば形は関係無いっと。」
品定めもしつつサクサクと一袋分を取っていく真面目。 かごが邪魔にならないように立ち回り、壱与に言われたものと必要なものをそそくさと入れていく。 野菜コーナーを抜けて鮮魚コーナーに入ると、丁度精肉コーナーから出てきた壱与と目があった。
「お疲れ様。 良いの取れた?」
「悪くはないわよ。 鶏肉とか安いの手に入ったし。」
それならいいかと今度は魚のコーナーを見る。 真面目も壱与も、ついでに言えば進も三枚下ろしの技術はないので、既に切り身の状態の物を入れていく。
「後なにがいるんだっけ?」
「牛乳やヨーグルトを買いましょう。 朝用に出すのが今朝無くなったからね。」
「あんな大増量は流石に無いんじゃない?」
「あ、あんた果物買ってないじゃない。 乳製品コーナー行くついでに見に行くわよ。」
そう言われて野菜の入ったかごを引っ張られながら乳製品や果物、そしてお惣菜やパンも買って、ようやくスーパーから出る。
そして一度家に帰ってきて、食材を冷蔵庫に入れる。 そして改めて真面目の買い物をしに行くのだった。
「最初にショッピングセンターと逆方向に行くからおかしいとは思ったけど、食材は新鮮な方がいいもんね。」
「それにあの賑わいでしょ? 休日の夕方なんかに行ってたら欲しいものも手に入らないわよ。 そう言うわけだから、これで心置きなく買い物が出来るわね。 真面目にはどんなのが似合うかしらね?」
「お手柔らかにお願いします。」
その願いが通じるか通じないかは、壱与のみぞ知る話である。
「ここにも水着は売ってるんだね。」
着いたのは最初に服を諸々揃えたお店だ。 今は水着に加えて、秋の先取りセール中らしい。
「そりゃこのご時世だし、元男子が女子の水着を買うのは勇気がいらない?」
それは真面目も考えた。 と言うよりも今回壱与に同伴を促したのも、女性視点が欲しかったからである。 後は普通に買うのに抵抗があったからである。
「さてさて、まずはどんなものを着せてみようかしら? うーん、ワンピースタイプも悪くはないけど、真面目のプロポーションを考えれば少し攻めても良いのよねぇ。 こういった一部分が捻れているやつもポイントは高いし・・・」
何故か本人よりもテンションが上がっている壱与を見て、なんでそれだけ気分が上がるんだろうと真面目の中で思っていた。
そして壱与がある程度見繕ってきた辺りで真面目に渡してくる。
「え? これ全部試着するってこと?」
「そうよ? あんたの好みの事もあるんだから。」
「これは水着じゃなくない?」
「どうせ必要になるでしょ? さ、試着室試着室。」
そう言われながら真面目は試着室へと入る。 そして持ってきた水着の数々をハンガーに掛けて真面目も服を脱ぎ始める。
「・・・母さんどれだけ持ってきたんだろう?」
ハンガーの数が多いせいか着替える機会は多そうだと悟り、自分の下着に手を掛ける・・・つもりだったが、ブラはともかく下まで脱ぐ必要はないと考えた真面目はそのまま着る事にしたのだった。
まず手に取ったのは真面目も昨日見ていたビキニに手を伸ばす。 赤色なので真面目のイメージカラーとは離れるが、見た目だけでいえば悪くはない。
「こんな熱情的な色はどうかなぁ?」
「たまにはそう言ったのも悪くはないでしょ?」
見せた後に次の水着に移る。 次は胸元を覆っただけの水着。 首にかかるヒモなどは無かったが、それでも胸の大きさをカバー出来るほどには丈夫に出来ていた。
「ふーん。 こういうのも悪くないかもね。 こっちの方が落ち着くかも。」
「わりとあんた向きかもね。」
次に着たのは首元で布が交差するタイプの白い水着だ。 下も同じ様なしようになっている。 パレオで下は覆われている。
「清楚系って言うならそう言ったの方が良いでしょ?」
「まあそうだね。」
そして次に着て見せた水着は布面積がまた少なくなった水着だ。 着けてはいるものの、はみ出し加減が尋常ではない。
「とりあえずこれはない。」
「一応着てくれる辺り優しいわねあんた。」
そして最後に藍色の浴衣を着ることになった。 意外とは言わないが、真面目自身が見ても似合っていた。
そして水着とついてで浴衣を購入して、更に服や下着も少しだけ買ってからお店を出るのだった。
「これが普通のお店だともっと高いって考えると、あのお店ってかなりのやり手だよね。」
「使えても5年だからねぇ。 消耗品でも買ってくれるだけマシだと思ったら、ああもなるんじゃない?」
「そう言うものなのかな?」
そう思っていたら真面目の腹の虫が鳴った。 空を見上げると完全に真上に太陽があった。
「うわっ。 どおりで暑いわけだよ。 夏至に入ったんだっけ?」
「私も朝から動き回ったからお腹空いちゃった。 折角だからなにか食べに行きましょうか。 あんたなに食べたい?」
「そうだなぁ。 昨日がスパゲッティだったから、魚の気分かも。」
「どういう理屈よ。 まあ良いわ。 家に帰ってから適当に食べて、夕飯をお寿司にすれば良いのよ。 進さんにも連絡入れて一緒に食べられるようにしないと。」
「お昼に食べるんじゃないんだ。 でも父さんだけ仲間はずれも悪いからいいか。」
そうして真面目達は買い物袋を家まで持っていき、夕方前に移動して、進と合流する。 場所は安いチェーン店の回転寿司だが、一ノ瀬一家にはこれくらいが丁度良いのだ。
「やぁ2人とも。 待たせたかな?」
「まだ席が取れてないから大丈夫だよ父さん。」
「それは良かった。 それにしたも回転寿司とは、また珍しい気がするね。」
「この子がお昼に魚が食べたいって言ったから、折角だしと思ってここにしたのよ。」
「お昼に食べるもんだと思ってたから逆にビックリしたんだけど、それに今朝の時点で魚も買っていたのに。」
「フフッ。 冷蔵庫の中身が楽しみだ。」
「お待たせしました。 24番でお待ちのお客様。」
「あ、僕達の番みたい。」
「それじゃあ中に入りましょうか。」
そうして一ノ瀬一家は回転寿司を堪能しながら今日の事を進に伝えて、満足したのちに家に帰り、その日を終えることにしたのだった。
「今後もこれだけ長い買い物が続くのかな。 女性の買い物と言うのは大変だ。 友達同士なら、尚更なのかな?」
真面目は眠る前に今日の出来事を振り返る。 壱与がいたとは言え、半日は買い物で埋め尽くされた。 そして出費もかさんだ。 肉体的に変化しても、世界が変わるわけではないと思いながら、微睡みに任せた真面目だった。
今回でた水着に関しては、作者の頭の中で「こんな感じだろうか?」と言う具合の書き方しかしていないので、間違っていたり、想像がしにくかったらごめんなさい。
見る機会はあんまり無いものですから。




