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夏休みはまだ始まらず

 期末試験の結果が貼られて、自分がどこにいるのかとぞろぞろと確認しに行く生徒が多く見えた。


「どの辺りにいると思う?」

「前回は41位で教科も難易度も上がってるから、点数の合計点的に見積もって・・・ 50位圏内ならいい方かな。」

「随分と弱気だね?」

「あんまり争いは好きじゃないっていうか、中間試験は腕試しみたいなものだっただろうから、本番はここからかなって。」


 登校してすぐの岬と真面目は、人だかりを見てなんとなく察していた。 とはいえそんな簡単に人が掃けるわけでも無いので、確認は順番待ちなのだ。


「あ、おはよう、ございます。 一ノ瀬さん、浅倉さん。」


 朝の挨拶をされた方を振り向くと、そこには和奏が後ろに立っていた。


「おはよう南須原さん。 今来たところ?」

「はい。 それにしても、前回もそうでしたが、皆さん、気になって、いたのでしょうか?」

「これは誰でも気になること。 仕方がない。」


 そうして順調に人が掃けはじめて、ようやく真面目達も自分達の順位を確認できるまでになった。


「ええっと、今回は科目も増えてるからその分の加点も踏まえた合計点・・・100位で634点・・・平均は1科目70点が理想。」


 自分の点数と擦り合わせて自分の名前を探す。 そしてようやく見つける。 真面目は漢字での名前的に考えれば6文字なので見つけやすいといえば見つけやすいのだ。


「・・・49位。 合計点数703・・・ 苦手科目がまだ足を引っ張っちゃってるなぁ。」


 平均的に見れば高い方ではあるものの、真面目の成績は波が激しい。 典型的に得手不得手が分かりやすのが一ノ瀬 真面目の成績の基準である。 理数系は得意でも文法、特に英語の方は苦手なのだ。


 一方で隣にいる岬と和奏はそれぞれが上の方を見ている。 恐らくは上位陣に組み込んでいるのだろう。


「2人ともどうだった?」

「前よりは落ちたけど、そこまで対した事はない。」

「私も、です。 問題になるほどでは、ありません。」


 真面目はそもそもここにいる時点で赤点はまず無いのだから、狙うのならば更なる上位だろうが、多分この二人にも、そして真面目にもそこまでの闘争本能はありはしないだろう。 因みに順位と点数としては岬が前回と同じ38位で722点、和奏は更に上の29位で733点だった。 上位陣は熾烈な1点争いを繰り広げているようだ。


「一位の人も、ほとんど手が届く、所の、点数、らしいですよ?」

「うちの学校って成績に大きく左右されないタイプの学校だったはずだから、本当に誰かが天地をひっくり返すかもねぇ。」


 そう言いながら3人は下位が貼られてある所を見る。 その中には見知った顔もチラチラ見えており、その中でも一際大きく喜んでいる人物がいた。


「随分とご機嫌だね。 隆起君。」

「んお? おー! 真面目じゃないか! 浅倉と南須原も!」

「そんなに喜んでどうしたの?」

「これだよこれ!」


 そう言って隆起が指差した先にあった「木山 隆起」の名前の左隣に、その順位と合計点数が書かれていた。


「・・・へぇ。 3桁抜けられたんだ。」

「おうよ! 俺の歴史史上最高順位なんだぜ!」


 隆起の順位は98位だが、本人にとって喜ばしいことには間違いないらしい。


「でもなんでそこまで上がったの? 前の時は赤点ギリギリとか言ってなかった?」

「フッフッフッ。 聞いて驚くな? 俺は音楽のテストで100点を取り、尚且つその上で加点もくれた、数少ない生徒なんだってよ! 今まで運動をすることしか取り柄がないと思っていた俺だが、こんなところで実力が出てきたみたいだぜ!」

「なるほど、木山の得意分野は副教科だったと。」


 今回のテストで主科目の5教科に加えて、家庭科、保健体育、美術、音楽の4つの副教科が入った。 副教科に関して言えば直接的な成績干渉は少ないものの、生活する上では必要だということになっているので、取り入れられている。 特に保健体育今の世の中には必須科目なため、教える分難しさも上がっていたりする。


「これで夏休みは堂々と出来るぜ!」

「楽しむのはいいけど、課題はやろうね? 絶対隆起君は抱え込むタイプだろうから。」

「親友からの絶対的信頼ありがとうよ。 そいじゃ、また昼な。」


 そう言って隆起は離れていったのだった。


「この様子なら多分得流も大丈夫かな。」

「なんで分かるの?」

「一緒に勉強した仲だから。」


 その説明に真面目は「確かに」と納得をするのだった。


 州点高校は期末試験が終われば授業は極端に遅くなる。 例えば現国なら同じ内容の繰り返し。 数学ならプリントの問題を解いた後に自習などだ。 2学期の授業をやることはほとんど無い。 それでも副教科だけは例外的にやることはあるものの、それでも許容範囲内に納められている。


「はぁー。」

「どうしたのさ一ノ瀬君。 なんだかだらけて見えるけど。」


 真面目の席の隣にいる刃真里がそんな自堕落気味の真面目に質問した。 お昼を過ぎた辺りなので多少は疲れも出てくるが、真面目の場合はそうではないようだった。


「んー、ほら、授業の方にちょっと歯応えが無くなってきたっていうか、不完全燃焼気味というか・・・」

「ボクが思っていた感想とは違ったよ。」


 何を求めていたのかは分からなかったけど、ちゃんと答えた真面目は、また突っ伏する。


「一ノ瀬君は意外と動いていないと死んでしまうタイプなんだね。」

「人をマグロか何かみたいに言わないでよ。 それにこの憂鬱も後数日だし。」

「何かあるの?」

「フッフッフッ。 一度でも遊んだことのある人なら誰しもが待望していたであろう、とあるゲームの最新作が出るからね。 その時期が待ち遠しいんだよ。 僕も同じプレイヤーもね。」

「協力プレイかぁ。 同じことが出来る人がいるっていいよね。」

「鎧塚さんはそう言ったゲームとかはやらない感じ?」

「そうだね。 ゲームとかはしないかな。 でもやってみるのも面白そうだね。」

「そもそもハードを買わないと行けない気がするのは気のせいかな?」


 そうしてそんな学校の授業を数日待ち、その日の放課後に生徒会の部活も終えた後に真面目と隆起、そして得流はとあるゲーム販売店に来ていた。


「遂にきたな・・・」

「そうだね。 あたい達はこの日のために頑張ったんだよね。」

「2人ともそんなに大変だったの?」

「当たり前だろ!? テストの点数で半分の順位取らないと買わせて貰えないとか言われたんだぜ!? 俺!」

「あ、ある意味瀬戸際だったんだ・・・」


 そんな事を考えながら真面目達は店内に入る。 そしてそこにはデカデカと目的のポスターがあり、そこにこれでもかと言うくらいに並んでいた。 3人はそれぞれ一つずつ手に取ってレジへと行き、購入手続きと購入初回特典を手に入れてお店を出た。


「いやぁ、まだあって良かったな。 店によっちゃ在庫切れの状態とかもあるってSNSであがってたからよ。」

「そのお店の見込みが甘かったのか、それともそれほどまでに辺境の地だったか。」

「そんなことより早速帰ってやろうよ!」

「それもそうだな。 よし、それじゃあ夏休みの初日までにはある程度は終わらせとけよ?」

「はいはい。 僕は部活も生徒会もあるから2人よりは進みが遅くなるかもだけど許してよね。」


 そうして3人は手元に持ったゲーム、「ビーステットハンティング3RD」と共に家に帰るのだった。

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