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桃源生徒会長の謝罪

 週末に入り、真面目は家にいても、個人的に悪影響を及ぼすと感じたので、休みを貰っている壱与に出掛けるむねを伝えた後に、真面目は外に出ることにした。


「さてと、今日も暑いから水分は多めにとっても問題ないよね。」


 空にいる太陽を見ながら真面目はそんな風に思っていた。 猛暑日が続くと言われているので、水分補給は大事である。


「ええっと、後行ったことがないのは・・・学校よりも向こう側かな? んー、でもそんなに遠くに行ってもなぁ・・・ ・・・ちょっとだけ商店街の方に行ってみようかな。」


 紫藤の事を考えると行きにくい商店街ではあるものの、やはりそこは行かなければいけない理由も無くはない。 とりあえずすれ違わない事を願いながら商店街へと足を運ぶことにした。


「週末だから流石に混んでいるのは分かるんだよねぇ。」


 商店街の混み具合にうんうんと頷く真面目。 だからこそすれ違いが起きた時、もしくは紫藤を発見した時は素早く逃げれるようにしておく必要があるのだ。 無駄なトラブルはこれ以上持ち込みたくない。


「今日はどこを回っていこうかな? 浅倉さんとお店に行ったのはあっち側で、ハンバーガー屋はあっちだったから・・・次はこっちかな。」


 記憶を頼りに行った場所などを把握する真面目。 商店街はまっすぐな一本道ではあるものの、脇道に逸れたりすれば別の場所にも繋がるため、前とは違う道を歩いてみることにした。


「あの先って何があるのかまだ見てないんだよね。 商店街は基本的には抜けるだけの事が多いし。」


 それだけでも何があるか分からない好奇心は生まれてくる。 最初に目に飛び込んできたのは一時期話題になり、今でもそれなりに人気を持っている「タピオカ入りドリンク」のお店だ。 休日だからか人は並んでいるが、全盛期ほどでは無かった。


「あれをテレビで見た時はそんなことあるの? って思ってたなぁ。」


 そう言いながら真面目はふとある言葉が出てきたものの、すぐに振り払うように頭から無くした。


「出来る出来ないの問題じゃないから。」


 今ならではの可能性があっただけに、余計にそう考えてしまった真面目は、再び歩みを進める。 そして更に数分歩けばそこには小さめであるが鳥居とお地蔵の建てられたものがあった。


「こう言うのって何て言うんだっけな? 分からないや。」


 そう言いつつも真面目は小銭を取り出して、小さなお賽銭箱に投入して、二回拍手をした後に手を合わせたまま一礼をした。


 その先になにもないことを確認して元の商店街へと戻ろうと振り返り歩いていると


「おや? そこにいるのは州点高校生徒会庶務の一ノ瀬君じゃあないか。」


 名前を呼ばれた真面目は声のする方を向く。 独特な喋り方でそこにいたのは


「ええっと、桃源高校生徒会長の中崎さん・・・でしたよね?」

「いかにも! 我が桃源高校生徒会長の中崎 東吾である! 覚えてくれて嬉しいぞ。」

「・・・まあインパクトがありましたから。」


 そう返事をする真面目。 今でも商店街に入っていない筈なのに、圧倒的な存在感を放っているのだから、威厳で見れば銘生徒会長にも負けないだろう。


「お久しぶりで御座います真面目様。」

「山吹さんもいらっしゃったのですね。」

「名字よりも名前の方が短いので、歴と及び下さい。」

「むむ。 そう言うことなら我も東吾で構わんぞ! なに、生徒会としての仲だ。 これぐらい緩い方が話しやすいだろう。」

「・・・むしろ緊張を上げてませんか?」


 他校のお偉いさんを名前呼びなど、銘生徒会長や海星生徒会長ならともかく、庶務の自分には到底出来るものではない。


「まあ冗談はさておいて。」

「絶対冗談しゃないですよね?」

「分かってるじゃないか。 せっかくここで会えたところ申し訳ないが、場所を移動しようか。 君には話したいこともあったしな。」


 テンションの落差に驚きつつも話があると言うのなら、それを無下にするのは良くないと感じ、東吾と歴の後真面目は追いかけた。


 そうして着いたのは商店街から少し離れた場所にあるレストラン。 まだ昼には少し早いが、それでも料理を複数も頼めば丁度いい位になっていた。


「さ、遠慮せずに食べたまえよ。」

「それにしても凄い量を頼みましたね。 結構食べる方なのですか。」

「これでも胃袋は丈夫な方さ。」

「食べきれなくても問題はありませんから。 お気にならさずに。」


 テーブルに乗せられた様々な料理を目の前にして真面目は目移りはするものの、すぐには手を付けることはなかった。


「おや、食べないのですか?」

「むしろなんで手を付けると思ったのですか?」

「安心しなよ。 毒は入ってないからさ。」

「いや、そう言う心配をしているのではなく。」


 面倒を言われる前に早く本題に入ろうかと思った。


「話したいことってなんですか? なかなか会う機会のない中でそんなことを言うってことはよほどの事なんですよね?」

「その話も踏まえて食事をしようじゃないか。 あまり待つと料理が美味しくなくなるからな。」


 真面目はこれだけのもてなしの意図はいまいち分からないにしても、目の前の料理を食べないわけにもいかないので、近くにあったチキンステーキを自分の前に置いて、ナイフとフォークを手にとって一口大に切ったらそのまま口に運ぶ


「君を殴ったと言われてる彼について少し話がしたいと思ってるのだが、食べながらで構わないから聞いてくれるか?」


 前に東吾の話が耳に聞こえてきたのでその手を止める。


「彼って・・・紫藤の事ですか?」

「名前まで分かっているのなら話がしやすいな。 そもそもの話彼は学校で問題児、とまではいかなくてもあまり評判は良くないのは確かだ。 だからあのような行為に入ったのにも仕方のないことと言えば君が許しはしないだろう。 だから彼の変わりに我が謝罪をしよう。 この件に関しては済まなかった。」


 真面目は少しばかり複雑な気持ちになっている。 本人が謝ってくれる方が良かったのだが本人は絶対に謝らないであろう事は分かっている。 学校の代表だからと謝ってくれた東吾には、申し訳ないことをしていると感じる。 そしてそのまま止まっていた物を口にした。 冷めて始めてはいるものの、味は落ちてはいなかった。


「これは僕への謝罪を込めてですか?」

「いや。 単純に我が腹が減っただけだ。」

「・・・本当に分かりにくい人ですね。」

「そう言う方なのですよ。 このお方は。」

「ところで前々から聞きたかったのですが。」


 そう言って真面目は歴の方を見ると、ピザを食べながらこう質問した。


「貴方は東吾さんとはどういう・・・と言うよりも、なんだか主従関係に見えるのですが、どうなのですか?」

「近からず遠からず、と言ったところですかね。」


 やはり見立てとしては間違っていなかったと真面目は思った。 だがこれだけ奢れるほどの財力があることだけは理解できたので、そのままお昼を過ごすことにしたのだった。


「流石にあの量は食べ過ぎな気がするのですか・・・」

「それでも君も勢い良く食べていたじゃないか。」


 残すよりは全然いいと思った真面目は、3人で机に並べられた料理を食べているので、1人当たりの量はそれなりになることだろう。


「これから君は予定があるかい?」


 その割にけろっとしている東吾を見て、胃袋で初めて敗北を味わった。


「まぁ、予定は考えてないですが・・・」

「ならば付いてくるといい。 面白い物を見せて上げよう。」

「面白いもの?」


 それがなんなのか、東吾はどこに連れていこうとしているのか。 謎は残るままに真面目は行くしかなかった。

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