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炎天下

 真面目は珍しく寝苦しさで目を覚ましたが、あまりにも暑すぎて、何度も寝ては起きてを繰り返してしまった。


 来ている服は半袖半ズボンなのにも関わらず汗のせいで肌に引っ付いてしまっている。 あまりいい気分にはなれなかった。


 今日から7月にはいるわけだが、梅雨明けになってから取り戻すかのように太陽が照りつけてくる日もあった。 そんなわけで真面目は汗で濡れてしまった服を身に纏いながら自室から階段を下りて脱衣所までやってきてから服を脱ぐ。


 家には家族しかいないとはいえ、流石に肌をさらす程羞恥心がないわけでもない。 真面目は夜にかいた汗を流すように、お湯を頭から被るのだった。

 そして制服に着替えてからリビングに入ると、朝御飯を用意していた壱与と目が合う。


「おはよう真面目。 その様子だと寝付けなかったでしょ?」

「何度か目が覚めてさ。 お陰でまだ眠たい。」

「そういう日もあるわよ。 今日はトーストにしたから、冷めきらないうちに食べな。」


 そう言われて真面目はトーストに手を伸ばして噛り、別のお皿に乗ったサラダをフォークを使って食べる。 メインがスクランブルエッグな為かお腹を通りやすい。


 そして朝御飯を食べ終えて牛乳を飲み干すとそのままの流れで玄関に向かい、家を出る。 外はカンカンと照りつける太陽がそこにはあり、真面目は思わず手で目を覆った。


「暑い・・・暑いけどこれ以上脱ぐのは憚れる・・・ 流石に透けるのだけは避けないと。」


 汗や雨によって透けブラが発生するのは致し方無いことなのだろうが、まさか自分がそんなことを考える立場になるとは思っても見なかった。 学生なのに日傘もどうかと思いつつ登校を始める。


 少し人だかりが多くなってきた場所ではあちらこちらで半袖が目に見えている。 サラリーマンや真面目と同じ学生などはクールビズように半袖シャツなのだが、それでもシャツに染み込んだ汗までは拭えない。


 一方で小学校などの子供達はこの炎天下で半袖どころか、一部の男の子はタンクトップを着ていたりもしている。 元気なのはいいことだと真面目は見ていた。


「そのうちあの子達も、僕らみたいに性別が逆転して、大変な目に合うんだろうね。 その頃には僕達ももう大人だけど。」

「独り言を喋ってどうしたの?」


 子供の事を嘲笑しているところに岬がやってくる。 余計なところを見せたかなと思いながら真面目は岬を見ると、流石に暑さには負けるのか、半袖シャツになっていた。


「おはよう浅倉さん。 今日も暑くなるみたいだよ。」

「うん。 ここに来るだけでも大変だった。 暑すぎて動きたくなかったもん。」

「流石に登校するのは諦めようよ・・・」


 真面目と岬は会話を交わした後に、すぐに登校を再開する。


「もう色んな人が半袖だ。 この暑さだと日焼けも凄いことになりそうだね。」

「確かにね。 褐色肌にするにはもってこいかもね。」

「なりたいの?」

「まさか。」


 そんな涼しさの欠片もない話をしながらようやく学校に着く2人。 教室に入っても、最初こそほとんどいなかったが、クラスメイトが増えるにつれて教室自体の温度も高まり、半分蒸し風呂状態になっていたのだった。


「あー、それ分かるぜ。 なにもしてないのに汗をかくから嫌になっちまうよな。」


 午前の暑さを乗りきってお昼に到達した時には既に最高気温になっており、どこもかしこも暑い状態になっている。 今いる場所も日陰と言うだけで、暑さが和らいでいるようなことは微塵もない。


 そして真面目の言い分に賛同したのは隆起で、スカートなのもお構い無しに大股を開いて座っていた。


「隆起君、流石に目のやり場に困っちゃうよ。」

「ん? おう。 いやー悪い悪い。 つっても俺はお淑やかにはなれんってやつだよ。 俺も元々は男だからよ。」


 笑っている隆起であったがそんなことはここのメンバーにはお構い無しらしい。


「それにしても暑いよね。 食欲落ちちゃうよ。」

「そうだよねぇ。 あたいもおんなじだよ。」


 叶と得流はそれぞれ暑さの感想がのべられる。 男子なので女子よりは楽な感じではあるが、それでもかっちりとした服装なため暑さは凄まじい。


「窓際のやつは風があるからいいなぁって思ってたけどよ。 よくよく考えりゃ熱風だったわって思ったな。」

「一ノ瀬君、大丈夫? そっちは窓際だけど。」

「西日はかなり来るかな。 今の時期は本当に暑くてさ。」


 聞いていたみんなも納得をしていた。 どこにいても暑さには耐えられなさそうだ。


「でも後数週間もすれば夏休みだし、この制服ともしばらくはお別れだし。」


 いよいよ迫り始める夏休み。 想いは人それぞれで連なっていく。 勿論その中には真面目も入っている。


「夏休みと言えば真面目は水泳部に入ってたよな? 大会とかには出る予定なのか?」


 話題を振られたので真面目は答えることにした。


「ううん。 僕は地域の水泳大会に出て終わり。 というか二学期に入ったら退部する予定だよ。」

「生徒会の、仕事も、ありますから、厳しいのは、仕方無いですよ。」

「そういうこと。 まさかここまで重なるとは夢にも思わなくてさ。 だから専念するために水泳部は辞めることにしたんだ。」

「もう1つの日本舞踏クラブは?」

「あっちは継続予定だけど、行く頻度は少なくなるかも。 流石に出し物が迫ってる時は行くけどね。」

「それらしい活動は聞いてないぞ?」

「ひっそりとしているし、なにより舞踏自体が秋からが本番だからね。 今は練習の真っ只中だよ。」


 そうしているうちに昼休みが終わり、それぞれの教室へと戻っていく。 やはり部屋の温度は高く、戻ってきてすぐに嫌な暑さが身体にへばり付いてきた。


「二学期で席替えがあったら、今度は内側に行きたいかも。」


 そんな下らないことを考えつつも真面目は授業に取り組んだ。


 そして午後の授業はと言えば、真面目をはじめとした窓際の生徒にとっての暑さと眩しさの相乗効果のある西日が直接当たる時間になり、苦痛の時間がやってくる。 それでも授業を耐えた真面目は、HRが始まる前にカーテンを閉めて、西日が当たらないようにした。


「これで少しは楽になるけど・・・流石に暑さには耐えられない。」


 腕捲りをした真面目は、突っ伏してしまう。 眩しさのせいで黒板がほとんど見えずに、危うくノートを取り逃すところだったのだ。


「その後の生徒会も大変かもなぁ。 丁度西日が真後ろに来るんだもの。」


 銘生徒会長の後ろは窓になっており、西日が重なるとなおも神々しさを放つのが、生徒会室の不思議である。 暑さは起因しているかは定かではないが。


「これも夏に近付いた証拠なんだろうなぁ。」

「一ノ瀬君。 時間は大丈夫なの?」


 いつの間にか近付いてきていた岬に声をかけられて、真面目は席を立つ。 HRは既に終わっているので、ここにいるのはごく数名の生徒だけだった。


「そうだよね。 暑いからってだらけたらいけないよね。 ありがとう浅倉さん。 生徒会に行ってくるよ。」

「バテないようにね。」


 そうして真面目は生徒会室へと足を運ぶのだった。

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