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ひょんな事から手伝いを

 試験期間も終わり、学校自体が夏休みに向けてのムード全開の州点高校。 夏休みはどう過ごすか、行く場所までのルート選び、夏休みの課題をいかに終わらせるかなどの話題があちらこちらで行われている。


「ちょっと静かな場所を探すだけでも一苦労になっちゃったね。」

「夏休みの話を右も左も話してる。 流石に聞き飽きた。」


 お昼時になり真面目と岬は避難所を見つけるかのごとく、屋上に入るためのドア付近でお昼を過ごすことにしていた。 屋上へと向かう生徒がいないということもあり、かなり静かである。


「今回のテストの方はどう?」

「まあまあって感じ。 可もなく不可もなしってね。」

「お互い赤点は回避できるからね。 後はどこまてま伸ばせられるかが勝負。」

「なにかあるの?」

「今年の夏の軍資金についてお母さんたちと約束をしてる。 成績がいいとその分多く貰える。 分かりやすいでしょ?」


 よくあるお小遣いの増加によるものだろう。 それで頑張れるなら親としても本望なのかもしれないが


「そもそも浅倉さん成績悪くないよね?」

「そこは家庭内事情ということで。」


 それで済ませていいのかと考えたが、家庭の事が分かるわけでもないのでそのままお昼を過ごしたのだった。


 その日の夕方。 真面目の両親が家に帰るのが夜になり、一緒に夕飯を食べられそうにないと連絡があったため、家で作り置きをするのではなく、適当に外食にしようと思った。


「軍資金かぁ・・・」


 真面目は昼間に岬が言っていたことを思い出していた。 今まで気にはしていなかったが、真面目も今日という日まで物は欲しいと言ったことはあっても、お金そのものを貰った覚えはあまり無い。 どうせ消えるのが分かっているなら、貯めるよりも使う方が良いと考えているからだ。


「その辺りも考えながら夕飯の事を考えなきゃ。 最近身体が重たく感じてきたからなぁ。」


 そう言いつつも試験期間中に時期は過ぎ去っているため、あの時ほどはダルくは感じないのだが、それでも身体的に疲労感が溜まってきているようにも感じていた。 色々と動いた弊害なのだろうかと、言い訳染みた考えを振り払い、真面目はどうしようかと考えていた。


 あの時のほとぼりがまだ冷めていない可能性があるので商店街は1人では歩けない。 とはいえこのままコンビニなどで買ってから帰るのはどうだろうと思う。


 そんな真面目の目に止まったのは1つの定食屋。 そこまで遅い時間では無いものの、お客は非常にまばらであった。 どうしようかと思った真面目であったが、流石に空腹には勝てないので、そのまま入ることにしたのだった。


「いらっしゃいませ。 お一人様でしたら、カウンター席にお座り下さい。」


 中に入れば居酒屋ではないかと思うくらいの狭さや雰囲気ではあったものの、真面目の中ではこういった所の方が落ち着ける気がした。


「お客さん、学生さん? 危ないよ? 女の子がこんなお店に入ってきたら。」


 お水を差し出してくれたのはエプロン姿の若そうな女性。 その後ろで鉄板料理に勤しんでいるのが、この店の大将だろう。 夫婦二人羽織でやっているのだろう。


「見た目は女子に見えますけど、中身は男ですよ。」

「あらやだ。 そうだったわね。 やぁねぇ。 いつの時代も見た目に騙されちゃうわ。」

「それが案外普通の反応だと思うんですけどね。 一番安いのはなんですか?」

「学生さんが気を遣う必要はないよ。 でもそれなら焼きそばでも提供しようかね。 あなた! 学生さんに焼きそばお願いします!」

「あいよ! 今豚の塩ダレ焼きやってっから、それが終わってからな!」


 大将の明るい声が真面目に聞こえてくる。


「この匂い塩ダレだったんだ。」


 入ってきた瞬間に鼻腔をくすぐった匂いはその焼ける匂いだったのだと気付かされた真面目は、どんな焼きそばが出てくるか楽しみになってきた。


 そして待つこと10分


「はい学生さん。 焼きそばだよ。」


 そう言って渡されたのはお皿に並々盛られた焼きそばだった。 ソースの絡んだ麺から見えるのは、色とりどりの野菜達である。 そして真面目は焼きそばと共に付いてきた白ご飯に目がいった。


「あれ? 頼んだのって焼きそばだけでしたよね?」

「サービスさ。 学生さんなんだからいっぱい食べないと。 いらっしゃいませ!」


 女将さんの好意ということで、真面目は折角ならばと手を合わせていただきますと1つ声をかけてから、焼きそばに箸を伸ばして口へと運ぶ。


 口に広がるソースの味に絡むように使われている中太麺と皿に盛り付ける直前くらいで入れたのか、野菜は食感が残っている。 それでもソースが絡んでこれもまた美味しさを増させてくれる。 そこに間髪入れずに白いご飯をかきこんで、淡白な味わいを中に入れる。 これだけでも十分立派な夕飯である。


「それだけ食べてくれるなら作ってくれた甲斐があったってものだよね。」

「なんだかすみません。 サービスまでしてもらって。」

「まあ学生さんが来ることが珍しかったりするからね。 うちも大衆食堂じゃないからさ。 お客として来てくれる方が今はありがたいのさ。」

「じゃあこの時間帯でまばらなのも・・・」

「まだ私達の店がそれなりに有名じゃないから、かねぇ。」

「そうなんですか。 美味しいのに。」


 飲食業は地道な努力とお客といかに寄り添えるかがカギになる。 そう考えれば今はまばらでも、という考えにはなるだろう。


「それに夏は何日かはここを空けるから、その間は不便をかけるかもねぇ。」

「夏になにかあるんですか?」

「ちょっとした海の家のイベントでさ。 3年前から応募してて、今回ようやく出店出来るようになったのはいいんだけど、海の家なんて大層な場所だと、店を維持するだけでも大変かもって思ってさ。」


 確かに今の現状、2人だけで海の家を回すのは無理難題だろう。 それにイベントというのならば、他の店も同じ様にするのは目に見えている。 負け戦とまではいかなくても、厳しい現実には変わらない。


「あの人は料理の方が上手いし、堅いっていうから、お客に怖い印象を持たれるかもしれないだろ? 海の家でそれはちょっとねぇ。」

「でも、参加はされるんですよね?」

「夏休みの最後の方に少しね。 それまでには何とかしないといけないんだけどねぇ。 色々と試行錯誤が必要になってくるって考えたら、キリがないかも知れないんだよねぇ。 って、こんなことを学生さんに話しても意味ないか。」


 女将さんは笑って誤魔化していた。 しかし真面目はふと考えた。 考えた上でこんな提案をした。


「あの、もし良ければなんですが、その海の家について、僕も手伝ってもいいですか?」

「え?」

「話を聞いていたら、なんていうか、勿体ないって気がして。 あぁ、勿論無理なら無理でもいいですから。」

「そんなこと無いよ。 手伝ってくれるなら、こっちも冥利に尽きるよ。 ねぇ?」

「そうだな。 若い子がいりゃ、少しは目を引いてくれるかもな。」


 大将は新たな注文のために料理しているので、聞いているのかいないのかといった具合ではあるが、話は出来たようだ。


「ごちそうさまでした。 夏休みに入ればここにも来やすくなるので、またこちらから来させて貰います。 あ、これお代です。」

「ああ、確認するよ。 うん、ぴったりワンコインだ。 また来た時に相談させて貰うよ。」


 そう言われながら真面目は店を出て、ふと店の名前が気になったので振り替えると、大きくは書かれていないものの、そこにはしっかりとした字で「曙」と書かれていた。


「名ばかりにしないように、俺も色々と思案してみるのもありかねぇ。」


 自分の軍資金のためと考えた提案だったが、どうやら少々本気になりそうだと真面目は帰りながら思ったのだった。

女将さんのキャラがブレブレな感じですが、後々修正していくので、今回は我慢してください。


キャラを増やしすぎるとこういうことって起きませんか?

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