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7.魔法研究が楽しすぎる


 最近はここでの生活にもすっかり慣れてきた。


 何よりも魔法を使えることが楽しすぎて、研究熱がさらに高まっている。


 こんな組み合わせを試したら面白いんじゃないかとか、こんな道具を作ったら便利になるかも!

 と、試行錯誤していくことで可能性がどんどん広がっていくワクワク感が堪らない。



 魔法道具を作るときにはまず、魔法石を植物のエキスに浸しながら、作りたい内容に対応した属性の魔法をかけることでそれを記憶させることができる。


 そうして作った魔法石に起動用の魔法石を繋げて完成だ。



 魔法石は、副所長であるハニカ様に設計図や詳細の説明を書いた企画書のようなものを提出して、許可が降りたら貰える仕組みになっている。


 魔法を記憶させるためのエキスの材料となるハーブやお花が必要なときは庭園にある花壇から各個人で調達するのだ。



 所員は新しい魔法道具を生み出す他にも、王宮から要請された道具を作る作業もしなければならない。


 私も例外ではなく、要請道具を作りつつ研究を続けている。



 研究費……つまりお給料をしっかり頂いているから、その分頑張らないと!


 さて、今日の分の要請道具を作るためのハーブを取ってこようかな。

 




 庭園に着くと、ハーブ花壇のそばにある噴水前のベンチに腰掛けて本を読んでいるナジェが居た。


 私に気づいて顔を上げる。


「今度は何を作るんだ?」



 ナジェとはここに材料を取りに来るとよく会うようになった。

 私がもうすっかり研究にハマっていることを知って、会う度にこう聞いてくる。



 私はいつものようにナジェの隣に腰掛けて、次に作りたいと思っている道具について話し始めた。


「あのね、ベッドを暖める道具を作りたくて」


「ベッドを暖める?」


「うん、空間全体を暖めるんじゃなくて一部分だけ暖められる道具を作りたいの」


 暖房のように空間全体を暖めるほどの魔法道具を作るとしたら、かなり大きなサイズの魔法石と強い魔力が必要になる。


 それだけの物を作るには、私の魔力ではさすがに足りない。



 でも、火と風の魔法を使ってミニストーブや電気毛布、電気カーペットのような特定の小さな範囲を暖める魔法道具なら自分にも作れるんじゃないかと思ってトライしようとしているのだ。



 その内容をナジェに説明した。


「なるほど。面白いことを考えるな」


「あ、うん。暖炉の前から離れると寒くて」


 この国はどうやら北寄りの土地らしくて、冬が近づきつつある今は特に寒いのだ。


 きっと私のように、日本からの転移者だったらすぐに思いつくことなんだけどね。

 寒がりの私は冬になるとストーブやら電気毛布やらこたつやら、暖房器具を大活用していたから。


 聖女になれるような人だったらもっと凄いものを思いついて作れちゃうんだろうけど……。



 褒められたことに若干の罪悪感を持ちつつナジェの言葉に耳を傾ける。



「それだけ小さな範囲を指定するとなると、魔法陣が必要かもな」


「魔法陣?」

 

「ああ、魔法石に属性魔法を記憶させる前に、植物エキスの中に動作指定を書き込んだ魔法陣を浸すとそれも一緒に記憶できるんだ」


「そうなんだ! 面白いね!」


「複雑な動作を必要とする道具は魔法陣を使うことがほとんどだ」



 じゃあ、例えばカーペットを作りたかったら、床を暖める動作を魔法陣に書き込めばいいということね!



 ……どうやって書くんだろう。レニとハニカ様に聞けば分かるかな。



黙って思案していたら、ナジェがぼそっと呟いた。


「書いてやろうか?」


「えっ! いいの?!」


「一つ貸しだな」


 そう言って笑ったナジェはハッとするほど美しくて、私は不覚にもドキッとしてしまった。



「あ……じゃあ、カーペットと電気毛布とミニストーブを作りたいからその魔法陣3つお願い」


 なんだか恥ずかしくて、思わずときめいてしまったことを隠すように早口で捲し立てた。


「3つって、お前……」


 何かを言いたげな様子のナジェに気づかない振りをして私は腕を捲った。


「よーし、解決したから私は安心して要請道具が作れるわ! さーて、ハーブ回収しなくちゃ!」


 明るく言い放つ私を呆れたように見て、ナジェは少し笑った。




 そんなこんなで、文句を言いながらも手伝ってくれるナジェとはその後も頻繁に庭園で会ってアドバイスをもらったり、魔法道具の研究について意見を交換したりした。


 ここでしか見かけないから素性については相変わらずよく分からなかったけど、口が悪い割に実は優しいことや、私より5歳年下であること、魔法の研究に熱心であることがよく分かり、魔法道具を作ることですっかり距離が縮まった気がした。

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