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6.レニとの出会い

 魔力を感じられるようになってからというもの、魔法の勉強にどんどん夢中になっていった。


 この頃ではレッスンを受けるだけじゃ飽き足らず、もっと魔法を学んで研究してみたいという欲求まで出てきてしまっていた。


 このエメラルド塔では、魔道士たちが魔法道具を生み出すために日々研究を重ねているのだ。


 私も何か少しでもいいからお手伝いをしたり、研究に携わってみたい。


 そんな願いをハニカ様に相談してみたら、今日から研究室の見習いをさせてもらえることになった。




 張り切って早起きをして、意気揚々と研究室へ出向く。


 研究室の扉を開けると、一人ひとりに割り当てられている専用のブースがあって、各々がそこで黙々と作業している様子が伺えた。


 その中のひとつのブースにハニカ様がいた。私に気づき手招きをしている。




 近づいてみると、隣には美しいブロンドヘアを一つに束ねた可愛い女の子が立っていた。

 どうやらここはその彼女のブースのようだ。


 「リシャ様、こちらは所員のレニです。分からないことがあればなんでも彼女に相談してください」


 紹介された女性が私へ笑顔を向けてくれる。


「初めまして、レニ・ノイラートと申します。お気軽にレニとお呼びください」


「よろしくお願いします、レニ様。私はリシャ・タカハシと申します。リシャと呼んでください」


 さすがにそろそろ慣れてきたので自らリシャと名乗る。


「それでは、よろしくお願いしますリシャ様」


 レニ様はとびきり上品な笑顔で応えてくれた。


 どきりとするほど可愛い……!



「彼女は王立学園を首席で卒業した凄く優秀な魔道士ですから、きっとお役に立てるかと思います」


 ハニカ様は優しい笑顔で言って、レニ様の隣に用意してくれた私専用のブースへ案内してくれた。


 レニ様と二人して、ブースの使い方やここでの過ごし方、注意事項を一通り説明してくれてからハニカ様は自分の仕事へ戻って行った。


 ここでのあれこれを教えてくれる人が素敵な人たちで良かった。

 レニ様は美しいだけでなく、とても優しそうで安心する。



 ハニカ様には何から何までお世話になりっぱなしだし……。

 この国の人はいい人ばかりだと、心底思う。


 少しでも役に立てるように精一杯頑張ろう!




 あ、でもこの前スミレの花畑で出会ったあの謎の男ナジェはまだよく分からないな。


 魔道士のローブを着ていたけど、あれ以来どこに行っても会わないのよね。

 この研究室にもいないみたいだし……。



 そんなことを一人で考えてキョロキョロしていたら、レニ様がおずおずと話しかけてきた。


「あの……リシャ様はお幾つなのですか?」


 遠慮がちに聞いてくるそのいじらしさがまた可愛い。



 でも……言いたくない、すごく。


 よくある転生とか転移の話だと、こういった異世界から呼び出される聖女って16,7歳の美少女って相場が決まってる。


 だから私は知っている。

 この世界において、アラサーの私は多分もの凄く“大人過ぎる”ということを。


 ハニカ様だって私の5つ下の25歳だと聞いたときびっくりしたのなんのって。

 どうやって育ったらあんなに落ち着いて大人びていられるの……。



 レニ様は王立学園を卒業したばかりだということだから、彼女の年齢はきっと18歳なのだろう。


 この国の貴族たちは15歳から18歳までを王立学園で学んで過ごすのが普通だと聞いた。


 お友達になりたいな、なんて思っていたけどきっと年齢が離れ過ぎていて敬遠されちゃうよね……。



 答えた先のちょっと残念な未来を想像しながらおずおずと答えた。


「えっと……私は30歳です……」

 


「そうなんですか! 年上の友人ができるなんてとっても嬉しい! 私、昔から姉が欲しかったんです」


 ニコニコと頬を赤くしながら一気に捲し立てるレニ様に思わず面食らってしまう。


 でも、少なくとも拒否はされていないようでホッとした。



「あっ、ごめんなさい! 私、すぐに先走って話す癖があって、淑女らしくないと家族にもよく叱られるんです」


 我に返ったように、少し項垂れている。



 か、可愛い……!


「ううん、そんなことない! レニ様にそう言って貰えてとっても嬉しかったです!」


 私がそう言うと、レニ様はパッと顔を輝かせた。


「ありがとうございます! 私は貴族令嬢であるよりも魔道士として活躍していきたいので、淑女らしくある必要なんてないと思ってるんです」


 そう言いながらいたずらっ子のような可愛い笑顔を浮かべる彼女の顔を見ていると、なかなかお転婆な娘だということが見て取れてなんだか可笑しい。




 好きだなあ、この正直さ。


「ふふふ、私は貴族のお嬢様に慣れていないのでレニ様のそのストレートさがありがたいです」


「レニ様だなんて、どうかレニと呼んでください! 敬語もやめましょう!」


「うん、じゃあレニもリシャって呼んでね」


「はい……。リシャ……!」


 私の提案に少し面食らったようだけど、レニはポッと顔を赤くして戸惑いながらも名前を呼んでくれた。



なんだか魔法研究がとっても楽しくなりそう!



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