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7.好きになってしまいそうです


 衝撃の登場をした新聖女は、ミレイという名前で歳はレニと同じ18歳。


 専門学校の帰り道に突然大きな光に包まれて、気づくとこの世界にいたらしい。

 突然来てしまったという辺りはやっぱり、私と同じような感じなんだね。



 私の隣の客間を使うことになり、レニと二人して塔内の案内やここでの過ごし方などについて彼女に説明している。



 それから私がいつも使っているベースメイクやお化粧品などを分けてあげた。



 実はここに来たばかりの頃、この世界のメイク用品がどうしても肌に合わずに困っていたのだ。


 そんな日々を過ごしていたある時、ラガの街に建った魔法病院の中で作られる医療用として開発された化粧水がすごく肌に合うことに気づいた。


 そこからは、乳液や口紅、ファンデーションなど、様々なアイテムを作ってもらい今に至る。


 優秀な医師と魔法師さんたちのおかげで、優良コスメが誕生したのだ。


 これはきっと、異世界出身の私たちにしか分からない悩みだろう。




「ありがとうございます……!」


 ミレイは本当に嬉しそうに受け取り、感謝の気持ちを伝えてくれる。

 ここへ来て早数日、彼女も困っていたらしい。


 彼女は、最初の登場の“アレ”を除けば、本当に素直でいい子だった。





 一通りの説明が終わると、ミレイはおずおずとした様子で私たちに訊ねてくる。


「あの……あの方はいつも、どこにいらっしゃるんですか〜?」


 あの方?



 するとミレイは顔をポッと赤らめて言った。

「召喚の時にいらした、漆黒の髪にサファイアブルーの瞳の美しい男性です〜。ナイジェル様とおっしゃるのでしたよねえ」


 その瞬間、レニはその美しい顔をピクッと引き攣らせた。



 あ、ああ、ナジェのことね。

 やっぱり、ただ不安だっただけじゃなく、抱きつくってことは気に入ってたのね……。




 私はとりあえず愛想笑いを作ってみたものの、返答に困った。


 な、なんて言ったらいいのかな。うーん……。



 するとレニがすかさず口を開く。

「あのね、所長はリシャと、とてもふか〜〜い関係にあるの。だからどこにいるのかなんて気にしなくていいのよ、」


 そこで一旦区切り、咳払いをして続ける。


「それから、ナイジェル様じゃなくてウォード所長ね。名前で呼んでいいのは許しを得た親しい人だけだから。分かった?」


 レニはてきぱきとミレイに説明している。


「は〜そうなんですか〜」

 ミレイはぽかんとしながら、レニの話を聞いている。




「そういえば、リシャは最初から所長のこと愛称で呼んでたよね」


「ああ、あれはなんとなくそうなっただけだよ。出会い方が変わってたからかな? 肩書きや立場を意識しなかったというか」


「でも、あの所長が初めて会った時からリシャにはそれを許したんだから、リシャだけはやっぱり特別だったのよね。うんうん」


 レニはやけに特別という単語を強調して言う。


「そうなんですか〜、リシャさんはすごい人なんですねえ」

 ミレイはほんわかと笑っている。




「とっても素敵な方ですよね……」

 ミレイはその可愛い顔を赤く染めながら言う。


「私、あの方のこと好きになってしまいそうです〜」


 ちょ、ちょっと。


「人を好きになるのは自由ですよね……?」


 あどけない顔でにこにこ微笑む彼女に、私はなんとなく言葉を強めることはできない。



「う、まあそれはそうね……」


 確かに、私もかつてナジェに婚約者がいるって聞いても、好きになる気持ちは止められなかったし、好きになるのは自由!なんて言い訳をしていたことを思い出す。


 そんな私がミレイのことを責められるはずもない。



「ということは、あの方が私のことを好きになっても自由ってことです」


 えっ。



「だから私、頑張ります!」

 そう言いながら片手を上げて、ガッツポーズを取っている。



 この子って、かなりの天然なのね……。

 ミレイは決して悪気がない。そう、本当に純真で憎めない子なのだ。



 彼女がなぜ聖女の役割を担ってこの世界にやって来たのか、ということはよく理解できるほど純粋な心を持っている。


 私も、前向きな子はとても好き。



 ミレイは「あの方は今どこにいるのかな〜?」なんて言いながら顔を赤らめている。




 しかし、なんでこうなった……?

 私は完全に彼女のペースに飲まれている。



 レニは呆れたような、やきもきしたような複雑な表情でミレイを眺めて頭を抱えた。


 私もレニと一緒になって頭を抱える。



 隣国の第一王子は謎の求婚をしてくるし、この子はこんなこと言ってるし、なんだかもうめちゃくちゃだ。


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