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2.隣国の王子


 迎えに来てくれた王宮の人に案内されて謁見の間に到着した。


 前回来た時はティナ様に襲われた直後だったから冷静に周囲を見回す余裕なんてなかったけど、改めて見てみるとすごく豪華な部屋だったんだなあ。


 国王陛下と王太子殿下のお二人とは、こんな風にお話しする機会なんてあの時以来だ。


 こんな急に呼び出されるとは、一体何があったというのだろう。

 なんだか猛烈に緊張感が押し寄せてくる。


 ナジェが一緒で良かった。




 扉を開けて部屋に入ると、なぜか私以上に緊張した様子の国王陛下と王太子殿下が、いつもと変わらない上品な笑顔を浮かべていた。


 私たちが二人の前で挨拶をすると、陛下と殿下は何かを言いにくそうにもじもじしている。




 ナジェもなぜ呼ばれたのか分からない様子で二人を見ていた。

 私たちの頭の中は『?』で一杯だ。


 うーん、気になるから早く聞きたいけれど、立場的にこちらから質問を投げかけるわけにはいかないし。


 不思議な空気が辺りを漂う。






 そんな静寂を破ったのは国王陛下だった。


「実は、隣国から客人を招くことになったのだ」


「はい」

 ナジェは落ち着いた様子で応える。



「表向きは定期的に行われている公式訪問の一環なのだが、」


 陛下はそこまで言ってから、咳払いをして気を取り直したように続ける。


「パドラス国の第一王子である、アーサー・パドラスから聖女に挨拶をしたいという申し出があった」




 ああ、聖女様に会いに来られるのね。



 …………?


 あ、あれ?それって私のこと?!

 今となっては一応、対外的にはれっきとした聖女という扱いだものね。




 さらに王太子殿下が続ける。

「ラガの街復興に関する噂は想定以上に周囲の国へ影響があったようでな、ぜひその話を本人から聞きたいという申し出だったのだが、」


 そこまで言って少し間を置いた殿下は、いまいち歯切れが悪い。


 私とナジェが訝しげな顔をすると、殿下は意を決したように顔を上げて言った。

「それが、噂によるとその第一王子のアーサー殿下が聖女を妃候補として迎えたいと考えていると……」



 …………!!



 ナジェの顔つきが変わる。

「それは一体……」


 

 殿下は珍しく慌てた様子でナジェを宥めた。

「いや、ただの噂だ!」


「しかし、お二人の耳に入るということは信憑性のある話なのでは?」

 ナジェは少し不機嫌な様子を露わにする。



「あ、ああ。慎重に対応していきたいと思っている。だから落ち着いてくれナイジェル」


 焦って宥めるような態度の殿下と不機嫌な様子のナジェとのやりとりに、二人の関係性を感じ、状況も忘れて思わず笑ってしまいそうになった。

 二人は子供の頃から絆が深いとレニが言っていたのを思い出す。


 ナジェにとって殿下は腹を割って話せる数少ないお相手なのよね。そう思うとなんだか微笑ましささえ感じる。




 ……いや、笑ってる場合じゃないや。


 お妃候補ってどういうこと……?!


 それって本当に噂なの?

 もしもそれが事実だったらどうしよう。


 なんだか話が大きすぎてついていけない。



 ナジェが国王陛下に向き直り、口を開こうとすると陛下はそれを制した。


「もちろん二人のことはよく分かっている。我々も全力で応援している」


 陛下は威厳を増した様子で、私たちをじっと見つめて言う。

「決して悪いようにはしないので少しだけ我慢してくれるか」


 陛下にまでそう言われてしまうと、さすがのナジェも何も言えなくなっている。


 そうして、しばらくの間は隣国の公式訪問のため王宮内が慌ただしくなりそうだということ、突然また呼び出しをかけるかもしれないが、それ以外は普段通り過ごしてほしいということが伝えられた。



 国王陛下は最後にさらに念押しした。

「国家間の交流に関わることであるから、慎重に行動したい。君たちは必ず我々が守るから、余計な言動をしないようにだけどうか気をつけてくれ」



 私は陛下の真剣な顔を見つめて深く頷きお辞儀をした。


 どうか、何事もなく公式訪問が終わりますように……!

 そう心の中で祈った。


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