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42.噴水前のベンチで

 あれから数ヶ月が経ち、エメラルド塔の優秀な魔道士たちと、隣国からやってきた魔法師や医師たちとの協力のお陰もあって、あっという間に立派な魔法病院が建ち、医療体制が進み、街も人々もすっかり健やかさを取り戻した。



 ヴェルナー侯爵も約束を守り、必死に尽力してくれたようだ。ティナ様を断罪する声は多かったが、私は命や体を傷つけるような罰に関して決して首を縦に振れなかった。


 ナジェはなかなか納得してくれなかったけれど、なんとか説得して処罰ではなく、謹慎という形の期間を設けた修道院での奉仕ということで話はまとまった。


それ以外にも、今後一切、王宮とエメラルド塔への出入りを禁じられ、私への接触も固く禁じられた。それはエメラルド塔の魔法によって管理されることになったのでひと安心だ。




 何よりも私が嬉しかったのは、ラガの街が綺麗に整備され、仕事も増え、活気を取り戻せるきっかけを掴んでいたことだった。


 私が早口で捲し立てた福利厚生もきちんと適応されて、それは想像以上に街の人たちへ役に立ったのだという。



 結局、私の案は大成功へと導かれたのだ。

 ラガの街復興を果たし、それは私、聖女の功績となった。


 魔法は使えないけれど、充分国に貢献したという証となり、あれよあれよという間に準備が整い、国王陛下と王太子殿下から褒章を賜った。



 それは王国随一の魔道士と恋に落ちても全く問題にならない位の功績となったのだ。



◇◇◇



 いつの間にか、季節はもう初夏を迎えていた。


 私たちは相変わらず噴水前のベンチに座って、次に作る魔法道具についてワイワイと話している。


「今度は何を作るんだ」

「あのね、自分の周囲を涼しくする魔法道具を作りたいの」


 ハンディファン(冷房モード付き)の魔法道具を作るのだ。


「ふむ、それはまた変わった道具だな」

「だって馬車の中、暑いんだもん」



 いつものようにナジェに魔法陣を書いてもらうため、私は予め書いておいた設計図を見せながら説明を始めた。


 あまりに夢中で話していたものだから、近くに寄り過ぎていたことに気づかない。



 自分の無防備さに気づいたときはもう既にナジェは私の肩を引き寄せ、その手で私の手から設計図をスッと取り、私を両手で囲い抱きしめるような形でその紙を眺めていた。



 すぐ横を向けば彼の美しい顔を間近で見ることになり、急に体に緊張が走る。


 うっ、近すぎる。恋人同士みたい……。いや、そうなんだけど。


 恥ずかしくてパッと横に引こうとしたけれど、ナジェはそれを許してくれなかった。



 彼はクスッと笑って、私の頰に優しく手を添える。熱を帯びたサファイアブルーの瞳がそっと近づいて、私はゆっくり目を閉じた。そして、優しく甘い、幸せな口づけを交わす。



 溢れ出す幸福感の心地よさに包まれながら、私の顔は太陽よりも熱く、赤く染まっていく。



 今日も暑くなりそうだ。


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