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0、プロローグ



「リシャはなんて美しいんだ」


 ナジェはベッドから起き上がり、ベッドサイドに座っていた私に近づき顔を寄せて囁いた。


 彼の美しいその顔は熱っぽく、潤んだ瞳が色香を増していて、思わず私の胸の鼓動は早くなる。



 さらには、先ほど苦しそうなシャツのボタンを外したものだから、彼の逞しい胸元があらわになっていて、私は目のやり場に困ってしまう。


 いつもは首まであるきっちりとした魔導士のローブを着ているからわからなかったけど、こうして見るとまるで騎士のように鍛えられた逞しくて美しい身体。


 ど、どうしよう……!

 ドキドキが止まらない。



 落ち着け、私。


 さっきの言葉は、ナジェの本心なんかじゃないんだから。



 ただ、今だけ。

 魔法にかかってしまっているだけなのよ!


 っていうか、惚れ薬ってこんなに効いちゃうものなのね……。



 そう自分に言い聞かせていると、ナジェはさらに体を寄せて私の背に片手を回しそっと距離を縮めた。


 逞しいその胸の中に引き寄せた私の顔をじっと見つめながら囁く。


「俺の傍にいてくれ」


 もう片方の手を私の頰に優しく添えて、近距離で囁く熱っぽい彼の瞳に吸い込まれそうになる。


 な!なんという状況なの!

 まるで熱烈に愛し合う恋人同士みたいじゃない!


 そこまで考えて、私はふと現実に引き戻される。


 ……あ、そっか。

 ドキドキする必要なんてないんだった。


 これも全部、時間が来たら消えてしまう魔法なんだから……!

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