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誓い

2話投稿してます。


ブクマ、いいね、ありがとうございます\(゜ロ\)(/ロ゜)/

 モンスターを統べ人間の国を侵略する“魔王”を倒すべく、神託によって“勇者”の青年が選ばれた。


 しかし、魔王を倒すには必要な物があった。その世界で伝説とされている“聖剣”だ。

 

 伝説によると聖剣は、異世界から召喚されし“聖女”の聖力で創られるという。


 伝説に倣い、召喚の儀式が執り行われ、二ホンという異世界から若い女が召喚された。

 

 膨大な聖力を所持していた聖女は、王が持つ宝剣に全ての聖力を注ぎこんで聖剣を創り上げ、勇者は聖剣を携えて魔王を倒したのだ。


「まるでお伽話のようですわね。でも、なぜ聖剣はシゲル遺跡にいたのかしら?」


 ジュリエットは聖剣をのぞき込むと、眩しくないように配慮した聖剣が淡い光を出す。


「喚ばれた――と。それ以上は分からないようだ」

「喚ばれた?」


 誰が何のために――疑問は新たな疑問となってジュリエットを唸らせる。


「誰の仕業にしろ世界を越えてこいつは来たんだ。使い時がきたら自ずと分かる」

 

 聖剣を手に出来る者は聖剣に選ばれし者であり、ライは聖剣の次の所有者として選ばれた。


「それで、その使い時ってのは――今だ」


 椅子から立ち上がったライは、テーブルにある聖剣を片手でひょいと取った。


「ライ、何をするの?」

「言ったろ?剣に誓うって。だが、騎士が誓う普通の剣と違ってこの聖剣に誓う。伝説の剣に誓うなんて粋だろ?」

「ふふ、そうですわね。でも、ライは騎士ではなく冒険者ではなくて?」


 テーブルの端に座ったジュリエットは茶化すように話し、目の前の聖剣より視線を下げてライを見つめる。

片膝を着いてひざまずき胸の前に両手で剣を掲げるライの姿は、王都で女性達に騒がれている人気の騎士よりも様になっていた。

 

 ジュリエットが好奇心に溢れる眼差しを密かに向けていると、ふっと視線を上げたライと目が合いドキっとする。


「そこは大丈夫だ。俺はオーレナイの騎士でもある。だから誓いはオーレナイ流でいくぜ。王都の騎士のやたら仰々しいやつとは違うが、まぁそこは我慢してくれよ」 

 

 新情報をさらっと口にしたライにジュリエットは驚いて聞き返そうとするも、誓いの言葉によって遮られてしまった。


「ジュリエット・セレスタイン――汝が救いを求めた時、我ラインハルト・オーレナイが汝を救うと聖剣に誓い約束する」


 ライの言葉に呼応するように、聖剣が輝き出す。


「ラインハルト……オーレナイ」

 

 ジュリエットは、ひとつひとつスペルを確認するようにライの本当の名(フルネーム)を口にする。本来ならば剣に触れ誓いを受け入れなければならないが、ライの正体というさらなる新情報が飛び出して呆けてしまっていた。

 

「やはり、ライは貴族でしたのね。もしかしたらと思う事はありましたわ。でもまさか、あのオーレナイ辺境伯様の弟君だったとは……」


 口は悪く粗野な態度をしていているが、日常的な所作や姿勢は美しく良家または貴族出身なのではと薄々勘付いてはいたが、予想以上の高い身分であった事にジュリエットは驚く。


「気付いてたか。そう、俺の兄上はオーレナイ辺境伯領の当主ギルバート・オーレナイで、俺は三男のラインハルトだ」


 魔族との間で起こった長い戦争は、魔族の国と隣接していた辺境の地オーレナイが最前線の地となっていた。侵略を阻む為の軍事力はいつしか王国随一となり、終戦協定はオーレナイが率先して締結させるという国交力を見せつけた。

 さらに魔道具に関しては、長い戦争の歴史に付随し研究を重ね発展させてきた経緯から、オーレナイ製の魔道具は、王国だけでなく大陸中で使用されている。


 今やオーレナイ領は、独立した一国といっても過言ではないほど栄華を誇っているのだ。


「隠しているわけではなかったんだが、ジュリエットの状況が複雑だったし落ち着くまでは余計な事を考えないようにして欲しかったんだ」

 

 ジュリエットの反応を見て少し罪悪感を感じたライが眉を下げる。


「ライの配慮は分かりますし、それに、貴方が何者であってもわたくしには関係ありませんわ」

「関係ない……」

 

 ライの表情がズーンと暗くなる。


「あっ!ちがっ、違いますわ!!」

 

 しょんぼりとうなだれるライに、ジュリエットは両手を振って否定した。


「その……ライが貴族であっても冒険者であっても平民でも魔族でも、わたくしにはライの身分とか肩書きなんて関係ないという、そういう意味の“関係ない”ですのよ」

 

 予想していなかったジュリエットの言葉に反応してライは顔を上げる。


「はじめてライに出会った時から……今こうしてわたくしの目に写っているこの瞬間も、こんな小っぽけなわたくしを貴方は何度も救ってくれているわ。それが、わたくしが知るライという人ですの」


 ジュリエットの翡翠の瞳が、真っすぐライへと向けられる。


「それは……俺が貴族だと知っても、ジュリエットは只の1人の人間として俺を見てくれてるっていう事か?」


 ライの身分が知れ渡れば、貴族令嬢が大挙として押し寄せてくるであろう。令嬢ばかりでなく貴族の多くはオーレナイとの縁欲しさに釣られてくる。


「えぇ勿論」

 

 ジュリエットにとっては一緒に過ごしてきた時間で見知ったライが全てで、ライと共にいた想い出が心を埋め尽くしている。ライへの思いを巡らせながら、無意識にライの瞳をじっと見つめた。


 淑女ルールによって普段見つめられる事のないジュリエットの瞳に見つめられ、ライは頬をみるみると紅潮させていく。

さらに想いのこもったジュリエットの言葉に胸をくすぐられ、恥ずかしさから視線を隠すように思わず顔を背けた。

 

 普段翻弄されているジュリエットにとっては形勢逆転であるが、その状況に気付いていないジュリエットが先ほどから気になっていた事を口にした。


「あのライ、ひとついいかしら?」

「なんだ」


 顔を背けたままライが返事をする。


「先ほどライは()()って言っていたけれど、貴族も冒険者も……どちらの立場であっても貴方は只者ではないですわよ」

「は?」


 拍子抜けするようなジュリエットの話に、思わずライが顔をあげる。するとそこには、いたって真面目な顔つきのジュリエットの姿があった。


「ふ、ははっ、何を言い出すのかと思ったら……俺をバケモノかなんかだと思ってんのか?」


 大真面目な顔をして指摘するジュリエットに、ライは吹き出しながら皮肉めいた言葉を口にする。


「バケモノだなんて――!そんな事思っておりませんわ!ただ、常人と比べてライは規格外過ぎという意味で褒めてましてよ」

「それ褒めてねぇから」


 くくっと笑いながら突っ込むライを横目に、ジュリエットもクスクスと笑い声をもらす。


 やがて、窓越しに差し込んできた朝日が2人を包み込み、外からは鳥たちのさえずりが聞こえてきた。


「ジュリエット――俺の誓いを受け入れてくれるか?」


 再び改まったライが穏やかな声でジュリエットに語りかける。

朝日を受けたライのシルバーブロンドの髪はキラキラと光り、ひざまずく姿勢と柔和に笑む表情は正に〝銀の王子様〟と呼ぶに相応しい。


「ラインハルト・オーレナイ様」

 

 ドクンドクンとうるさいくらいに波打つ心臓に、落ち着けと念じながらジュリエットはライの名を丁寧に口にする。


「汝の聖剣への誓い――我ジュリエット・セレスタインが受け入れます」

 

 ジュリエットは前に差し出された聖剣に手を触れる。すると、聖剣は白銀に輝き始め、光は蔓のように伸びていき、ジュリエットとライの手を包み込む。


「何が起きているの……?」

 

 ジュリエットが恐る恐る片手を上げて見ると、光の蔓が手に集まっていき小指にくるくると巻き付いていくのが見えた。痛みなどはないが指先がじんわり温かい。

目の前にいるライの方を見ると、ジュリエットと同様に片手の小指に光が集まっている。


「これで俺達と聖剣との聖約が成立した」


 安堵からホッと一息ついたジュリエットの前に影が差し掛かる。立ち上がったライがジュリエットの座るテーブルに両手をついたからだ。


「ライ?」


 ジュリエットはライを見上げる。すると、すっと耳元にライが顔を寄せてきた。


「なぁジュリエット、ラインハルトってもっかい呼んでくれないか」


 すぐそばに感じる体温と甘えるような声にジュリエットの体は一気に熱くなり、頭の中は何故とかどうしてとか当惑の言葉がぐるぐると回っていた。

ジュリエットが困惑してる間もライは熱っぽい眼差しをジュリエットに向けている。


「ラ……ラインハルト」


 戸惑いながらもジュリエットはライの名を口にする。その瞬間、ライの眼差しは蕩けるような甘いものへと変化する。


「ジュリエット」


 ライの吐息と共にジュリエットの髪に温かなものが当たり、ちゅっと音を立てて離れていく。


「ラインハルト……」


 愛おしそうに見つめるライと目と目が合うと、思わずジュリエットの口からライの名がすべり出る。


 ジュリエットは手を伸ばしてライの唇に手を当てると、ライはスッと瞼を閉じた。

形の良い目に沿ったまつ毛が光に浴びて輝くのを間近で眺め、驚くほど柔らかいライの唇を触りながら、ジュリエットは身に疼くライへの恋しさにゆっくりと顔を近付けていく。


(早く元の大きさに戻りたい。そうしたら貴方と――)


【超ムカつくんだけどぉ】

「ひゃいっ」


 突然響いた聞き覚えの無い声にジュリエットは驚いて悲鳴を上げた。


「えっ!?今、声がしたけど……ってきゃ!」


 ライと数センチの距離にいたジュリエットは驚いて飛び退くと、尻餅をついてそのまま座り込んだ。

このままジュリエットが止まらなければ、ライに口づけする寸前であった。


「ちっ、邪魔すんじゃねぇよ」


 ライは床に置いたままの聖剣に向かって悪態をつく。


(わ、わわ、わわわわわたくし一体何を――!!!!????)


 茹でたタコのように真っ赤になったジュリエットが両手で顔を覆う。


【そこの子さぁ~声聞こえてるっしょ~?あーしわぁ、カリブルヌス。ガチの聖剣でぇーすww】


床に置かれたままの聖剣がジュリエットに語り掛けるも、それどころではないジュリエットに聖剣の声は届いていない。


 ライは聖剣を拾い上げると、テーブルの上で座り込むジュリエットを眺めた。淑女ルールを呪文のようにぶつぶつと呟いているジュリエットをライは目を細めて見守る。


【えーこの子何してんの~?ウケんだけどwww】


 聖剣を肩に担いでいるライはもう片方の手を腰に当てて首をかしげた。


「精神統一中?」

【やっばwマジで!?ww】


 ライは聖剣の言葉にフッと笑う。


「かわいいだろ」


(早く元の大きさに戻したい。その時にはジュリエットを――)


 ひっそりと波打っていたジュリエットへの想いは、大波が押し寄せて身の内に満ちてくるようであった。

二ホンから来た聖女がギャルだったので、聖剣の言葉遣いも聖女と同じになってしまいました。


ここまでお読み下さりありがとうございます。

時間が出来た時にもそもそ書いているので、おっっっそい更新で本当にすみません(/ω\)

またお待たせしてしまいますが、最後までお付き合い下さるとめちゃくちゃ嬉しいです。


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